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鬼の章

 こうして、イヌ、サル、キジの仲間を加えた桃子は、鬼ヶ島へやってきました。


 鬼ヶ島では、鬼たちが近くの村からぬすんだ宝物やごちそうをならべて、酒盛りの真っ最中です。


 キジの下見で鬼ヶ島のようすを探った桃子達は、サルに内から門を開けさせて鬼の城に入りました。


 ふいうちを受けた鬼達は大あわてです。


 イヌは鬼のおしりにかみつき、サルは鬼のせなかをひっかき、キジは鬼の目をつきました。


 そして桃子も刀で戦います。


 とうとう鬼の親分はこうさんしました。


 鬼ヶ島が見える海辺まで来た桃子達は、鬼達に見つからないように、山の中にキャンプを張った。鬼ヶ島の様子を調べるために少し早めに来たが、できれば八房の能力を最大限に利用できる満月の晩に襲撃したいところなので、少し予定より急がなくてはいけない。3日後が満月だった。


 葵は神社の古文書を持ってきていた。それには鬼が住み着く前の島の地図もあり、それを元に現在の情報を追加していった。れんは桃子と一緒に猿も使って鬼ヶ島の様子を調べ上げた。鬼の本拠は海に囲まれた島の中央にある。砦の周囲は岩壁になっていて、自然の要塞の中に立っている。鬼の砦の出入り口は正門にからめ手、砦の地下が洞窟から海につながっていて、船が幾つかつないである裏口があった。船とは言うものの、手漕ぎのボートのような粗末なものだったが、鬼どもの馬力でぐと結構なものだ。

 

 キャンプでは演習や作戦会議が行われた。鬼達に気付かれてはいけないが、それ以外は比較的自由に過ごしている。作戦会議では、どのように鬼ヶ島を攻めるのかを検討した。


「サルの太郎、次郎、三郎を使って正門を内側から空けさせて、鬼の本陣に火をかけようと思う」


 れんの発言だ。


からめ手を塞いで、鬼の退路になる船もあらかじめ処分しておくのが良さそうですな」


 領主の兵士を率いる男が発言する。


「まって。それは兵法ひょうほうの道理にはかなわないのではないでしょうか。それでは鬼共は死兵となってしまいます。退路はえて残しておくべきかと」


 葵が発言する。


 ここで八房が発言した。


「兵法か・・・火付けも退路を断つ工作も必要ないかもしれない。猿には正門を空けさせるだけでいい」


「どういうことですか」


 葵が聞く。


「もしかすると戦わずして勝つ方法があるかもしれない。それが最善かもな」


 そんな方法があるのだろうか。桃子は八房の策に興味を持った。


「最悪真っ向勝負になってしまうかもしれないが・・・もっとも、どのみち鬼どもに小細工は大して効果がないだろうけどな」


 八房は言う。確かに人間側の人数がもっと多ければ、色々と戦術を練ることもできるかもしれないが、50人足らずの手勢では鬼をすべて仕留めることは難しいだろうし、こちらも結構な被害が出るだろう。人間側はかなり桃子と八房頼みというところがある。


 桃子は戦術等をあまり緻密ちみつに考えるタイプではない。直感を信じて感性で動く。八房の策に賭けてみることにした。桃子が決めれば他の者も皆従う。


 こうして一行は満月の夜中に鬼ヶ島へ侵入した。鬼共は宴会をしていた。突然の桃子たちの乱入に驚いたようだ。特に八房を見てどよめいている。自分達より大きく、口のでかい恐ろしげな化け物が人間に混ざっているからだろう。だが、桃子達は鬼に攻撃する様子は見せない。


「お前達のかしらは誰だ。俺と一騎打ちしろ。俺が勝ったら全員俺の手下になってもらう」


「俺が鬼のかしらだ。もし俺が勝ったらお前ら全部鬼の奴隷にしてやる」


 こうして桃子と鬼の頭の一騎打ちが始まった。鬼の頭は桃子を見て舌なめずりをしている。叩きのめした後、くらうか犯すかするつもりだろう。


 しかしなかなか勝負はつかなかった。鬼の頭はスタミナと力はあるが、金棒を振る攻撃は単調で、ほとんど桃子に見切られている。


 おかしなことに、桃子は見切りとけん制攻撃をするばかりで、隙があっても鬼を切らないようだった。こうして桃子は体力を温存しつつ時間を稼ぎ、戦いを長引かせているように見える。


「らちがあかんな」


「ふむ。お前は傷物にするには惜しい女だ。どうだ。戦い方を変えんか」


 鬼の大将は武力ではなかなか決着がつかないと見て、他の勝負を提案してきた。八房が大きな口でニヤリとわらったのに鬼達は気づいていない。


「では酒の飲み比べで勝負をつけよう。先に意識を失ったほうの負けだ」


「よかろう。でもそれではお前に勝機はないかもしれんぞ」


 鬼は体が大きく、当然酒を飲ませても容量が大きい分有利に思われる。鬼の大将は上機嫌で酒を飲んでいくが、全く倒れる様子はない。だが桃子も異常だった。いくら飲んでも全く酔った様子がない。しかも大量の液体を摂取したのに腹がふくれることもない。桃子の飲んだ酒は一体どこへ消えるのか。それは体表から蒸発して周囲へ拡散されていた。それを嗅いだ鬼や男は戦意や敵意がなくなり、桃子に対しても敵対することがなくなる。というか桃子のファンになり、症状が進めば奴隷のようになる。これが桃子の体質、桃から産まれた者の隠れた能力だ。なんと桃子は尿も便も排泄したことがない。全部消費されてどこかへ消える。


 別に桃太郎は女で武力がなくても鬼を従えられるのだった。大ウワバミと思われた鬼の大将もついには倒れ伏せた。こうして桃子は飲み比べで鬼に勝ち、鬼を従えたことになった。でもそれは建前のようなもので、本当は違う。八房は桃子の体質にいち早く気付いていた。犬だけに。


 桃から生まれた・・・というところから。きっといい匂いがするんじゃないかなあと。それらは男を魅了し、果ては鬼まで・・・という話です。

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