転生するみたいですよ
飛行機に皆さんは乗ったことが有るだろうか?
俺はこれが人生で8回目のフライトだ。
国外出張の帰りである。
何度も乗っているけど高度を上げるときに感じる浮遊感には未だに慣れない。
でも気分が上がる事が今回はある。
初めて窓際の席に内心気分が高揚しているのを自覚する。
柄にも無く窓からスマホで写真を撮ってみたりするが翼の真横の席で下の景色が撮りにくいのは残念だった。
機内食のフルーツは何故か苦手だ……サラダもトマトが入っているので残す。
食べないものが多く若干申し訳ない気分になる。
そんな気分も一緒に頼んだ白ワインがそれを忘れさせる……ただ酒は気分がいい。
国外出張が年内最期というのが更に酒を進ませることに一役買っている。
環境が違えばストレスが溜まるのは当然だ。
だから、正月は温泉に行く計画を脳内で立てていく。
気がつけば六杯は頼んだだろうか、普段はこれだけでは酔わないが高度で気圧が下がり酔が回ったのだろう。
トイレに行こうと通路に出たがふらつき――
天地がひっくり返り、暗く沈んでいく意識の中で最期に思った事は―――コップにまだ飲みかけの酒が……。
目が覚めたこのときはまだ酷い酔い方をして迷惑をかけて不味い位の認識でいたがここが機内や空港の病室でないことを悟る。
俺はどうなってしまったんだ?
暗く何もないあやふやな感じ近い感じは水に潜って目を閉じている感じだろう。
ふと告げられれる。
無機質で機械的な声色だ。
「あなたは亡くなったのですよ」
否定したいが何故かそれが正しいのだとすんなり理解した。
家族や会社に迷惑をかけてしまった。
もう死んでしまった俺は関与することが出来ないまー移動は移動で業務じゃないって給料出ない会社だから酒を飲むのも業務時間内じゃないから許して欲しい。
ろくすっぽ家に帰らない親不孝な馬鹿息子でごめんと両親には謝りたい。
これからどうなるんだ?
「あなたには別の世界に転生してもらいます」
返ってくる声色は変わらず無機質で感情がこもらない一方通行だ。
しかし、転生か……小説投稿サイトでよく読んでいたから憧れはあった。
神様にはどうやら俺は会えなかったらしい。
疑問に思った俺は思ったことを問いかけた。
「俺はどんな世界に転生するんでしょうか?あと神様とかいないんですか?」
「あなたの希望に沿った転生先いくつか紹介し転生してもらいます
神様と定義される存在は最近地球の主に日本出身者にクレームを入れられすぎてあなた方の認識でAIのようなものに対応させることが会議で決定しあなた方に会わないことになっております」
「あ、はい」
そうだよな、クレーム対応の類が面倒なのは理解できる。
「それでは希望を聞きたいのですがよろしいでしょうか?」
ファンタジーは嫌いじゃないけど危ない事はしたくない。
死の危険とかにさらされる世界はメンタル的に無理だ。
魔法とか使って見たかったけど現実的に考えれば柔軟に取り込めなさそうなのは若さが足りないのだろうか?
トイレとかお風呂とか電気やネットがない生活は辛い。
海外生活でそれは身にしみている。
男に生まれるとしてイケメンで楽してモテて金銭的な余裕がありそうな世界って結局あべこべ世界だろ。
男ならハーレムとか一回は憧れるよね?
「科学力とかが同等で男女比が女性に偏った世界とかあります?
そこに、男で顔が良くてある程度金銭的な余裕のある家がいいです」
「わかりました」
すんなりいった、気がつけば意識が薄れていく――
来世では親孝行します、今までありがとうございましたお父さんお母さん。
産まれ変わった。
しかし、前世をしっかり思い出したのは鏡を見たときだった。
幼気な姿は二時成長期はまだ先であろう背丈だ。
見事なトウヘッドは長く伸ばされている。
二重のまぶたに黒い瞳は意志が強そうでそれを縁取るまつげは長い。
肌は白いが頬が赤く色づいていてそこが一層魅力を引き立てる。
顔立ちは中世的で全体的に線が細く総じて人形のようである。
綺麗だと素直に思った。
あれ、これ俺か。
ついてるのか心配になったが大丈夫だった。
髪を切った姿を想像すれば間違いなくイケメンだ。
家庭環境を思い出そうとして頭痛がする。
ああそうだったこのままいけば俺は――