プロローグ
車が止まりメイドに開けてもらい私は車を後にした。
お金が有るところには有るんだななんて自分の事を棚上げする。
前世ではこういったお金持ちって車は物語かニュースでしかお目にかかる事は無かったのだけど……。
「文様やはりお加減が優れませんか?」
「まあ……それは仕方ないさ」
優れない顔色と女性の多い環境に対する心配であろうか?
それが理由であるのは否定しない。
普段なら桜を見れば心和ませることも叶うだろうが心は静まらない。
桜並木を抜け校門をくぐる。
校舎は新しく期待に目を輝かせているのだろう歩みは軽い人間が多い。
それは誰もが同じなのだろうか?
しかし、私の目は正反対である。死んだ魚の目とは言い得て妙だ。
私は男であるが女としてこの学園に入学した。
『なぜ男の俺が』
出そうになるその一言とため息と愚痴を留めた。
姿勢や見られ方なんて前世ではこんなに気を使わなかったことを思い出し憂鬱になる。
靴を上履きに履き替えた。
制服も靴も新品である。
しかしこれも気分を下げる事にしかつながらない。
校舎の中は騒がしかった、どこを見ても女しかいない。
所々使用人であろう主従を見かける。
『バレないだろうか?』『場違いではないだろうか?』
渦巻く不安が止まらないのだ胃が痛い。
調子は良くないそんな私を心配したのか再度お付きのメイド――薬袋蛍が声をかけてくる。
「文様大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、ただその格好がアレじゃない?」
「いえ、……よくお似合いですよ」
彼女の言葉にゲンナリする、バレるよりかはましだけど……。
自分の女言葉と服装に鳥肌がたった。
ひらひらした短い丈のスカートは少し肌寒くこんな格好でよく寒くないなと自身を棚上げしつつ階段を上がる。
どうやらこの世界は前世と違い女だらけなのは一般的な光景らしい。
さっきからすれ違う生徒から視線を感じるのは私に違和感を感じるからだろうか?
下がりっぱなしの気分が更に降下していく。
新たなる学び舎に似つかわしくない雰囲気を漂わせているのを自覚しているが一行に改善しないのは仕方がないだろう。
教室の席が窓際で有った事が有り難い。
晴れやかな天気に対し私の心はどんよりしている。
正反対であるが時間を潰すのには丁度いいだろうと外を眺め過去へ思いを馳せる。
なぜこうなったかではあるが。
結婚相手を探すために入学させられたのだ……。
そして叫びたいどうしてこうなった!!
定期で連載できればいいと思っています。
感想や意見、こうしてほしい等ありましたら参考にさせていただきます。