9-リアルマネートレード
また地球編で、少しくどくなったかもしれません。
同居って・・・
同居って・・・
現在、俺の横に寝ているのは、同居の話を持ち掛けてきた、俺と同い年、遊星プレイヤーの梶島みゆきだ。突然の話に、俺もビビった。だけど、どうしようか、いやいや、そんなことはただのみゆきの冗談だろう。というか、同居って、俺もみゆきに何するかわからないし、そんなことはだめだ。
ソファの上で考えていたユーヤは、そのまま電気も消さずに眠りに落ちた。
――翌日。天気は快晴。そんな中ユーヤはいつも通り6時に起床し、寝ているみゆきの肩をたたいた。
「おい、起きろ、昨日の話の続きを・・・」
すると、みゆきの瞼がゆっくりと開いた。その中から出てきた潤い溢れる瞳は、ユーヤの目を一直線に凝視していた。
「あ・・・ユーヤ」
みゆきが小声で囁いた。
「みゆき、ごめん。同居の話はナシの方向で。男女二人で同居って、恋人同士とかじゃなきゃやっぱりダメだと思う。お金がかかっても、別々に暮らしたほうがいいよ。」
その直後、みゆきは疑うような顔でこう言う。
「お前、まさか私と同居したら、変なことしそう、だからダメとか、そう思ってるのか?」
みゆきの、全くの大正解な返答にユーヤはびっくりしてしまった。
「ハッ!?な、なんだよ、ま、まぁ、そう・・・だけど」
ユーヤは慌てまくり、顔を赤くした。
「そんなこと、お前がしそうになってきたら私がお前をぶんなぐるから、多分無理だと思うぞ。」
冷静なみゆきの発言に、ユーヤはどうしようかとまた考えさせられる羽目になった。
「とにかく、今私はお金が欲しいんだ。貯めなくちゃならないんだ。」
みゆきはその真剣な眼差しでユーヤを見つめていた。ユーヤが返答する。
「は、はぁ。ちなみに、なんで?とか聞いていいか?」
直後みゆきはゆっくりと頷き、今までと比べてユーヤと同居したら月3千円の儲けになるという話の理由を話した。
「お前、RMTって知ってるか?」
「・・・、RMT?」
ユーヤは首を傾げた。
「やはり、知らないか。<リアルマネートレード>の略称だ。」
「・・・、リアルマネー、なんだって?」
「あぁ、RMT。頻繁にネットワーク世界で使われる用語だ。特にオンラインゲームなどで用いられる。これは、現実の通貨とオンラインゲーム上の通貨を交換する、という意味の用語だ。」
さて、みゆきのこれだけの説明ではユーヤは理解することができなかっただろう。まぁ、なんとなくは理解したが、RMTなんてする意味なども不可解なものが多い。ユーヤはもう少し詳しく説明するようみゆきに催促した。
「つまりだな、たとえば、現実での100円は、とあるオンラインゲーム上では1000000マネーくらいの価値があるんだよ。」
突然、口頭で提示された2つの額。なるほど、そんな感じか。ユーヤはそれ以上の説明は求めなかった。というか、これ以上説明を要求するとみゆきの心中が穏やかではなくなる。めんどくさい男だって思われたくないし・・・、と。ユーヤは思った。よくわからないが、いいや。
「なるほど!つまりそういうことだったのか!」
ユーヤはもっともらしく演技した。
「そうそう。わかってくれた?なら良かった。
えっと、じゃあ具体的に遊星の通貨<T>と日本の通貨<円>の相場を見ていきましょう。」
突然のみゆきの謎の口調にユーヤは、「は?」という顔をした。直後、みゆきは突然背後のあたりから画用紙を取り出し、「じゃーん」と言わんばかりの笑みを浮かべた。その画用紙にはこう書かれていた。
[日本での100円→遊星では約100万T!]
「は!?」
ユーヤは思わず声が漏れてしまった。
「いやいやいや、そんなのいつ用意してたんだよ!?おかしいだろおい!」
ユーヤの突っ込みをみゆきは無視してつづけた。
「つまり、仮にお前と同居すると私には月に3千円の儲けが出るから、3000万Tの額が私に入るってわけ!んでユーヤのも合わせると6000万!すごくない?これ、やっぱり同居したほうがいい!」
ユーヤは丸め込まれてしまった。なるほど。そういうことか、RTMとは。月6千万Tも発生するとは、さすがのユーヤもこれには否定できず、しかたなく、同居してやろう。とみゆきの提案を受理した。
「はい、じゃ、大家さんに言ってくるから。」
みゆきはユーヤにそういって部屋を出ていくと、30分後、ユーヤがいつも通り学校に行く支度をしているときに戻ってきた。
「なんとか口説いてきてやったよ。大家さん、最初はダメだって言ってたけど、50代のおっさんじゃん?私がちょこーっとかわいく振舞ったら、OKだって。」
「なんだよそれ!!」
どんな風にふるまったんだろう、とユーヤは頭の中でいっぱいだった。かわいらしいみゆきか・・・いいなぁ
「何考えてんだか、全く。」
ユーヤの思考はすべてみゆきに見透かされていた。
「な、なんだよ!」
「あー、そうだ。私の部屋、もう誰もいなくなる状態になるから、こっちに道具全部持ってくるの手伝って」
話をそらしたみゆきは、手ぶらで部屋を出ていき、元の自分の部屋に戻っていった。そして色々わけのわからないものや、机やらなにやらを運び込んでくる。それにユーヤも便乗して、運ぶのを手伝ってやった。そして・・・
「あーーー!学校に行く時間過ぎてんじゃねえかああああ」
ユーヤが大慌てで家を飛び出した。
「なんだ?あいつ、カバンももっていかないで・・・」
みゆきがユーヤの学校指定カバンを手に持ちながらつぶやいた―。
キーンコーンカーンコーン。
ユーヤはクラス全員にバカにされた。店長が、
「お前カバンもってこないとかどんだけ頭腐っ天然!」
「うるせぇえぇ!!」
ユーヤはその日は散々な目にあった。見事に飛び出した店長の掛詞「どんだけ頭腐っ天然」が、ユーヤの頭の中に一日中響いていた。その日は、教科書は隣の人に借り、筆記用具は後ろの席のおっさんに借り、ノートは、心の優しい学級副委員長の松恵がルーズリーフを一枚恵んでくれた。でも、カバン丸々忘れただけでもこんなんで済むのか。と、カバンを軽視したユーヤだったが・・・。
「体育着もねえええええええええ」
その日は制服で、体育の、大好きなバスケを見学することになった。やはりカバンは大切だ。絶対に忘れてはならない。ユーヤは明日は必ず、と心に深く誓うのであった。
そして体育終了後、店長がユーヤにやってきて
「おい、ラティナとかなんとかだっけ。大丈夫なのか、お前」
「あー、あー。あったなぁそんなの。大丈夫だよ。てか、どっちが先に100レベル行くか勝負しようぜ」
ユーヤの提案におっさんも店長も乗る気だ。うおっしゃ、と、レベル27の店長と、レベル40のおっさん。おっさんは、スキルがさっそく開拓されたので、狩りが一気に楽になり、グングンとレベルがあがっている。ユーヤはまだレベル9なのだが。
金曜。いつも通り放課後におっさんの家に集まり、解散され、家にはとなりの学校から早々と帰っていたみゆきがテレビを見ていた。この暮らしにも五日もたてば流石になれたか・・・と思いユーヤは夜を待った。と、ユーヤが1部屋しかないせまい家の隅で寝ようとしたとき、みゆきが寄ってきて、
「おい、今日が生活保護支給日だ。てなわけで、6千円、RMTしといたから、これをギルド共通使用可能基金に入れておく。」
と言われたユーヤは、
「は、はぁ。わかった。てか、どうやってRMTとかするんだ?」
「うーん、まず、ネットには、探すといろいろと、遊星専用のRMTサイトみたいなのがあるんだ。私がさっき取引してきたサイトの名前は<仮想金星>っていった。んで、そいつらはRMTだけで飯食ってるやつらだから、信用性はかなりある。んで、そのサイトと交渉が成立したら、そのサイトの運営の講座に6千円を振込む。そして明日、そのプレイヤーのとこにいって6000万をもらいに行くって感じ。」
「ほぅ」
ユーヤは少し納得できた。そして一瞬で深い眠りについた。
目が覚めると、そこはもう遊星だった。
戦闘シーンをもっと入れてほしいという要望もありましたが、それは次回、必ず入れますので。すごく激しい戦いを。待っててください。頑張ります。