8-REASON
「Tが・・・ない・・・!?」
ラティナの東部に位置する繁華街「グリフィス」の宿の、狭いといっても過言ではない部屋の中で、茫然と自らのWBの、0Tという表示を見ているタケイと、謎の男によって大ダメージを喰らい横たわっているカイト、そしてタケイに対し応答した、ユーヤ――。
「ど・・どういうことなんですか・・!?」
そういうと、タケイの返事を待たずに、自らのWBを確認した。そこにも、タケイを同じ、0Tの表示があった。
「な、なんだよ、これ・・・!?」
3人の中で、ただ2人、目の前の状況に喪失感を覚えていた。カイトだけは、痛みのせいなのだろうか、自らのWBを確認することも、起き上がることすらもできずにいた。
「大丈夫か、カイト」
タケイがカイトに寄り添った。いったいどうやって、カイトを一瞬にして倒したのだろうか。まぁ、それは相手が相当な瞬殺技の持ち主だったのだろう、と考えれば納得するようなことだったが、一番不可解なことが、どうして金が消えたのか・・・。もしかしたら、あの謎の男が盗んでいったのだろうか。というよりは、もうそうしか考えられない。なぜなら、ユーヤが・・・
「夜の徘徊者には特に気をつけな・・・
金がごっそり持っていかれるぜ」
・・・!
また、"デジャヴ"のようなものが、ユーヤの脳裏を過る。一体どこでこの言葉を聞いたのか、まったく思い出せない。というより、こんな言葉・・・聞いたのだろうか。そもそも他人の金を盗むということはここのシステム上観点から、可能なのだろうか。いや、そんなことはありえない。だとしたら・・
「おーい、どうしたお前ら、そろそろ地球に戻る時間・・」
みゆきがやってきて、ノックもせず部屋のドアを開けた。彼らの状態を見て、何が起こったか理解できずに、言葉も最後まで言えずに黙り込んだ。
「どうした・・んだ?」
「ぉーい!みんな元気ー?」
場の空気を読まず、いやまず読めずに登場した陽気なななみだった。さすがの彼女でも、彼らの状態を見ると口を塞がざるを得なかった。
「みんな、何があった」
みゆきが聞いた、その瞬間だった。時計の針が22:00を指す。現在、遊星にいるプレイヤー全員が、その瞬間に、目の前が七色に変化し、一瞬にして地球へと帰されたのであった。あまりのあっけなさに、ユーヤは思わず
「あっ。」
と、声が漏れた。気が付くと、目の前は自分の部屋の天井だった。
「帰ってきたか・・・。また、明日から学校が始まるんだなぁ」
課題はすべて終えてあるので、とりあえず今日は寝よう。また、今日の夜の出来事はいったいなぜ起きたのか、よく調べなければならない。と、ユーヤは心の中で思った。その時だった。ユーヤのスマホの着信音が鳴る。
「誰だ?こんな時間に」
見ると、「不在着信」だった。は?なんだこれ、と思いながらもなぜか応答してしまった。
「もしもし」
ユーヤの声の直後に、
「あ、ユーヤか」
・・・!
それはみゆきの声だった。なんでだろう、なんでみゆきが俺の携帯番号を・・・って、土曜日に交換したんだった、すっかり忘れてた。
「みゆきか。なんで不在着信にしてんだ」
「うっさい。別にいいだろが。いや、というか、お前、家どこだ、今から行くから」
「はぁ!?何言ってんだ、みゆき」
「うっさい、早く家のありかを言え!」
「なにそれ、面白いギャグだな」
「黙れ!」
もはやコントとしか言いようがない会話である。家のありかを家。
「なんで、わざわざ来る必要があるんだ。」
「お前の家を把握するというのも一つ、もう一つは、着いてから言う。」
するとユーヤはもう言うしかほかに方法がなかった。
「ほ、ほう。え、えっとな、東京都○○町××団地、11番地、505号室」
「505号室か、わかった、近い。今行く。」
「はぁ!?」
ガチャン、という音のあと、ユーヤがスマホの画面を見ると、通話時間1分9秒、料金15円と出ていた。
はや、なんだこれ、と思ったその瞬間――
ピンポーン。
・・・・。
嫌な予感しかしなかった。というのも、少し展開が速すぎないか?いや、着くの早すぎじゃね!?
ユーヤはその場で硬直してしまった。まさか、このアパートのお隣さんが、みゆきだったりしなかったりしてたのかもしれない。もう、意味わからない。としか思えなかった。
「ユーヤ、あけてくれ」
みゆきの声だ。なんなんだ、お前ぇぇ!!
ガチャッ、と勝手に扉が開く音がした。
「あ、あいてた」
勝手に入ってきたみゆき。ユーヤはただじっとそれを見ていた。そしてこう言い放った。
「お、おまえっ!!まさか、ご近所さんだったのかよ!!」
「あぁ、そうだが。」
まさかのまさかのそのまさかだった。
「まぁ、部屋番号がわからなかっただけ。でもお前がここに住んでるということは2年前から知ってる。」
2年前、か。両親が事故って死んだ時かな。ユーヤは思った。その時にアパート中の人達に知れ渡ってしまったのかもしれない。
「そうか。まぁ、そうなのか。」
ユーヤは、言葉の選択ができずにいた。
そしてみゆきがやさしい口調で言う。
「まぁ、いつかお前も遊星に連れていかれるだろうなと思っていたが、少し遅かったな。2年も執行猶予付きとは。私なんか、親がいなくなった3日後から遊星だよ。」
「お前、でも、俺と初めて会ったときは、誰お前みたいな顔してたろ。」
「それは、わざと。やっと来たんだね、って思ってたよ。だから、あんたをギルドに入れようとした。本当の理由はこれだよ。ちなみにタケイもカイトもこのことは知ってた。それで、ユーヤが来たら、ギルドに勧誘するようにって。黙っててごめん。」
やっとわかった。ユーヤの謎が。ギルド<BraveHeart>へ復讐するために当時Lv1だった俺をギルドに入れたんじゃなくて、そういうことだったから俺をギルドに入れてくれたのか・・・。まぁ、もっと違う理由があると思っていたが、かなり意外だった。
「いや、いいよ。そ、それで、用事って?」
「あ、あぁ。別に・・・ない。いや、ある。」
「えっ?どっち?」
「あるよ。」
「うん?」
みゆきがユーヤの顔色を伺っているように見えた。
そして、
「・・・私たち、同居しない?」
・・・。
「はぁ!?」
「いや、だから・・・変な意味じゃなくてさ」
「いやいや、変な意味にしか聞こえないけど!」
「だって、そのほうが家賃が安く済むじゃない。生活保護だって月4万って限りがあるし、暮らしがかなりきついんだよね。でも一部屋分の家賃を二人で分け合って出したら、一人当たり3千円!!!・・・」
直後、みゆきがユーヤのベットにふらふらと倒れこんだ。ユーヤはそれを見て、どうしようかと焦ったが、あまりに心地よさそうな寝顔だったので、気絶したのではないと確信した。ユーヤはこっそりみゆきにふとんをかぶせた。ユーヤのことだから、添い寝的な何かをし始めるのだろうか。いや、さすがに目を覚ましたら殺られる・・・。それはやめておこう。思いながらユーヤはソファの上で寝た。
それにしても、みゆきの提案はどうしようか。別に賛成しかしないけど。
こんにちわ。あとがきを書いていこうと思います。ていうか、なんなんだろうね。もう、小説中のユーヤって何者だよ。ほんと。てか、店長とおっさんの出場回数をもう少し増やそうか迷うんだけど、ユーヤとみゆきさんの仲を進めるのがすごく面白くて、全然おっさんと店長、書けないんですよ。そして、遊星大学教授兼遊星プレイヤーのたけださん。彼はね、たけいと名前似てるけど同じじゃないからね?まぁ、関連性はあるのかもしれないけど・・・って、ねぇよ!!
とまぁ、あとがきはこれくらいにしておこう。次回もお楽しみにしておいてください。