7-グリフィス事件
長らくお待たせしました。てんてん
「ラティナは治安が悪いから気を付けろ。」
ん、なんだ今の、・・・空耳か。ユーヤは気にしなかった。するとまた、
「特に、夜の徘徊者には特に気をつけな・・・
金がごっそり持っていかれるぜ」
!?・・・。また、空耳?まあ、よくあることだな、空耳なんて。
―ラティナに来た、チーム<TkD>一行。
ラティナって、RPGとかによくある洞窟の名前かな、と思っていたユーヤだったが、全然違かった。ラティナとは遊星の四大陸の一つ、シャルガフ大陸の東北部。その地方の名前をラティナと言う。ラティナの東部に位置する、ラティナ唯一の繁華街「グリフィス」の宿を、チーム<TkD>の5名は、男部屋と女部屋の2部屋を、一晩3000Tで借りた。その日の夜のことであった。
――ここは男部屋。
「そういえば、今日は日曜日だったなぁ」
と、タケイがあぐらをかいてテレビを見ながら、かつポテチを食べながら言う。
「課題やってません。助けてください。」
ユーヤが「数学の友」と筆箱を持ちながらタケイに助けを求めた。
するとギガ、本名上田カイトが、
「どれどれ?俺に見せてみろ。実は俺な、数学検定4級もってるんだよ」
「まじですか!?カイトさんが!?」
中学生2年生レベルの検定を持ってるということに驚いたユーヤに対し、カイトは一発殴った。
「このやろ、見せてみろ、解いてやるよ!」
カイトが、ユーヤが殴られた頭をさすっているうちにユーヤの課題を取り上げた。
そして課題のページをめくると・・・
「三平方の定理、発展問題3・・・
BC=CA=4、∠C=90°である△ABCにおいて、辺BC上の点PはBP=1を満たす。また、点Qは辺CAの中点である。辺AB上を点Rが動くとき、PR+RQの最小値を求めよ・・・・・・・・・・」
顔が青ざめていくカイト。そしてとうとうユーヤの課題「数学の友」をぶん投げた。
「このやろう、やってられっか!」
「ほら、言わんこっちゃない。まぁ、僕は三平方の基本くらいしかできませんけどね」
「こ、この問題やんなきゃなんないのか、今日中に」
カイトがユーヤに言及すると、
「はい。だから助けてほしいんです。わかんないから」
と、いうと、タケイがその数学の友を手に取り、鉛筆を右手に持ってスラスラと解き始めた。
ユーヤは思わずその腕の動きに見入ってしまった。そして、5分もしないうちに・・
「解けたぞ。答えは√17。少し簡単だったような気もするが、もう少しひねった問題を出してほしいな」
「え、え~~!?」
ユーヤが思わず声に出す。あのタケイが、こんなに頭が良かったなんて・・・。
と、彼らの夜はこれで終わった、と、思いきや、彼らの部屋に管理人らしき人が入ってきた、と思うのも束の間、
「なに、お客ら、お金払ってないの」
いきなり言われた言葉に、彼らは何とも答えられなかった。
「お金、払ってないんらったらでてってもらうしかねえけんど」
すると、タケイが答える。
「は?なんだよお前、きっちり3000T、払ったけど。なんなら、10000Tくらい払ってやるか、え??」
喧嘩ごしのタケイ。そういえばタケイは知らない人とよくケンカする。この前もそうだったし。
「ここの宿泊料は、100万 Tですが、なにか」
「は!?」
いきなり提示された額に、タケイは動揺を隠せなかった。
「お前、偽物だろ」
ギガ、本名上田カイトが言葉を発する。
「俺の、レベル180以上のプレイヤーにのみ支給されるHTCWBは、お前を「プレイヤー」だと示している。これは、お前がここグリフィス都市のNPCじゃないことをはっきりと、示している。」
何を言っているかわからなかったユーヤはこっそりと後ずさった。
「なるほどな、つまりお前は、俺らから金を巻き上げようとしているのか」
カイトがその謎の男に問い詰める。
「ふっ。さすがは最大ダメージ記録第2位・・・。
まぁ、そのくらいは見破れないといけないな」
その言葉の直後に、謎の男から閃光がほとばしり、カイトの胴体に直撃――。<78463>という文字が浮かび上がった。
「くそ、こんな時に戦闘態勢かよっ」
カイトのHPが4分の1減っていった。
「お前ら、伏せてろ!」
・・・・と、ここで、時間がとまった。
ユーヤがなにかを思い出した。さっきの、ほら、
――「ラティナは治安が悪いから気をつけろ」
いや、それじゃない、もう片方の・・・
――「特に、夜の徘徊者には気をつけな。
金がごっそり持っていかれるぜ。」
!!!
ユーヤが思い出した。時には、もう遅かった――
「カイト!!大丈夫か!!」
タケイがカイトに駆け寄る。見ると、カイトのHPは0になっており、謎の男の姿はもうなくなっていた。
「・・・何が、起きた・・・」
カイトが、遠くを見つめるような目をしていた。かなりの衝撃だったんだろう。
ここ遊星では、ダメージはプレイヤーに衝撃となって伝わる。ダメージが高ければ高いほど、衝撃が強い、つまり、すごく痛い。いや、190レベル台の戦いならば、痛いどころでは済まないだろう。
「何が起きたんですか、タケイさん」
「わからねぇ、ただ、一瞬でカイトが500万くらいのダメージを受けていたような気が・・・」
すると、ユーヤがあの言葉をまた思い出した。
――「金がごっそり持っていかれるぜ。」
な、なんだこれは・・・強い既視感に襲われたユーヤは、その場に座り込んでしまった。
――「金がごっそり・・・」
――「金が・・・」
――「金・・・」
・・・やめろ、やめろ、とユーヤは心の中で念じる。
WBを見ると、所持金が0Tになっているのに、タケイが気づいた。
「おい、どういうことだよ!?500万Tくらいあったはずが・・・!?」
・・・そう、ユーヤの既視感は本物だった。いったいどこで、こうなることを聞いたんだっけ・・・
まったく思い出せなかった。いや、これがもしかしたら、ユーヤに備わった「能力」なのかもしれない・・・