6-ラティナの秘宝
長いよ。疲れた。
まっくらーい部屋で、一人俺は取り残されていた。
そうそう、そこでタケイがいきなり入ってきたこういうんだ。
最上級アイテムを取りに行くぞ、ついてこい。そいつを図鑑登録したら、HPが10000あがる―――だってさ。
ばかな話だなぁ。俺がそんなとこいったって、足手まといにしかならないだろ。どうせそのアイテムにはそれを守ってる最強のボス的なのがいるんだろう。そいつを倒すには俺がいたら邪魔以外の何物でもないさ。
そうそう、そういえば昨日俺はみゆきとちょっとだけ狩りにでかけたんだ。
んで、今レベル9。なかなかはやいだろ。俺の武器ソードも結構イカしてる。
うんうん、でもレベル上げってめんどくさいよなぁ・・・
休日は家でゴロゴロするもんだろ。
さっさと、IWBなんとかをぶっ倒したいもんだな。
気が付いたら、朝を迎えていた。
「おはよ、ユーヤ」
みゆきがユーヤの布団をとりながら言った。どうやらユーヤは夢を見ていたみたいだ。
「ん・・・」
みゆきが起こしてくれた。ユーヤの目が少し開いた。
「ラティナに行くよ。準備して」
いきなりの発言に、ユーヤは目を閉じた。
「おい、おきろ」
みゆきがユーヤの体をさする。
するとまたユーヤは深い深い眠りについてしまった。
夢に、みゆきが出てきた。なんだかよくわからないけど夢の中のみゆきは笑っている。
ユーヤのことだからこれからエロい展開とかになりそうだ。
と、そんなこともなくユーヤの目が覚めた。
「あ」
みゆきがいなくなっていた。
「みゆき・・・
夢の中においてきちゃった」
とてもきもいユーヤの発言に
「は?何言ってんの?」
よく見ると、後ろにみゆきがいた。
「うわっ、なんだおまえ!」
ユーヤがみゆきを二度見し、後ろにふんぞり返った。
「あほ?変なこと言ってないでさっさとラティナに行くよ」
「だからラティナってなんだよー」
「アイテムだよ、アイテム」
アイテム集めか。夢でタケイがいってたやつ?
「そのアイテムを図鑑登録したら、最大HPが10000あがるんだって!」
ああ、なるほど。正夢だ。ユーヤは確信した。てか、あれは夢じゃなかったらしい。
「あ、眠いからいい」
「黙れ」
「はい」
とまぁ、そんなかんなでユーヤはみゆきに連れ去られた。
―――一方、こちらはおっさんと店長。
彼らの目の前には、地球、いや、日本でいう東京大学のような建物がずんとそびえ立っていた。その光景におっさんは目を見張った。
「おい・・・これ・・東大・・・だよな?」
店長が首を縦に振る。
「ここが、遊星 随一の大学、遊星大学らしい。
これはまたもIWBが作った大学で、地球から俺らみたいな暇人で、かつ両親がいない奴らが毎週末ここにつれてこられる。また、ここに連れてこられる条件はもう一つあって・・・。それは、「学習偏差値75」オーバーであること。つまり、常人が連れてこられることはまずない。」
店長の情報量に、流石のおっさんもびびった。
そして、店長がこんなことを言う。
「そういや、お前の兄ちゃん、東大卒だったよな」
その言葉に対し、おっさんは、
「お、おう。そうだけど。・・・確かに偏差値は75オーバーだった。でももう就職して、土曜は仕事で忙しいから連れてこられないよな?」
言うと、店長が
「いや、東大に受かる前だよ。考えてみろ。お前の兄ちゃん、テレビ見ながら勉強して東大うかったって聞いたけど。」
どういうことだ・・・?と、おっさんが言うと、
「つまり、お前の兄ちゃん、高校時代、暇人だったんだろ。土日に消えたりしてなかったか?」
「あ」
おっさんに心当たりがあった。そういえば・・・そうだったりするかもしれない。
土日は友達と勉強会するからと、土日に限っていなくなる、高校時代はそういう兄だった。
「ここ遊星大学は、高校生でも偏差値が75超えてるやつは連れてこられる。そして、大学受験の勉強をする・・。」
店長の説明に、おっさんは、
「だったら、なんで、大学時代は俺の兄、消えなかったんだろう。」
おっさんの疑問に、店長が
「それはだな、おそらくだが、おっさんの兄ちゃんがここ遊星大学のクリア条件を満たしたからじゃないか?」
「・・・クリア条件??」
「ああ。ここのクリア条件は、なんか、「卒業試験に合格する」かつ、「土日暇じゃなくなる」らしい。」
「なんだよそれ!!」
にしても、なぜ店長はそんなにたくさんの情報が頭に入っているのだろう。あ、作者だからか。
おっと、口が滑った。
店長の言う、遊星大学の「卒業試験」はかなり難しいらしく、東大の入試問題レベルらしい。
でも、東大に受かる時点でそんなものはクリアできるに決まってあろう。
そして東大生となった時点で「土日暇じゃなくなる」はクリアー。だって、東大生だもん、土日暇じゃないよね!?
そして、店長がこんなことを言い出す。
「よし、この中に入ってみようぜ!!」
その言葉に従い、二人は目の前の建物、遊星大学の中へ。
彼らの進む先に待ち構えていたのは、どうやら遊星プレイヤーらしき男だった。
その判断の根拠となったのが、その男の右手にある<電卓>だ。これは店長が一回選択しそうになった武器であったから、店長が<電卓>を見た瞬間それだとわかった。
「あの、あなたは遊星プレイヤーですか。」
店長がその男に話しかける。
「ああ。そうだが。」
「おお、そうでしたか。」
あれ?なんで俺この人に話しかけたんだろ。
店長が後ろを振り返って逃げようとしたその時、
「それに、私はここの教授も務めている。」
「え、教授!?」
店長が首を戻してその男を見た。驚いたのも無理もない。それは例外中の例外、
遊星プレイヤー、かつ、遊星大学在中だったからだ。
「私の名前は武田六太。たけだと読んでいただいて結構。あなたたちは?いったい誰なのでしょうか。」
「吉わら大助です」
おっさんが名乗る。
「店長です」
てんちょ・・ちゃんと名乗れよ!とおっさんが頭をたたく。
「岩川ダスク・テイカーです。」
「うむ。テイカー君と、じじい君か。」
「なんで俺のあだ名しってんの!?」
「顔からわかる」
「えぇ!?」
おっさんがそのたけだとやらの察知能力の高さにビビりまくる。
と、彼らのトークもつかの間、店長とおっさんはそのたけだという人物に好かれたのか、なぜか謎の部屋へと案内された。
「ここが、遊星大学の大図書室だ。」
彼らの目の前に広がったのは、まるで名○偵コ○ンのアガサ博士の家の図書館のような、とてつもなく広く高い天井の図書室だった。かけることなくびっしりと古書が詰まっていた。
「すげぇ・・・これ全部本かよ」
店長が呟く。
「君たちに見せたい本がある・・
それがこれだ」
たけだが手に取って見せてきたのが
「「『ラティナの秘宝』?」」
店長とおっさんが口をそろえて言う。
「最近のここ遊星の、全プレイヤーが目指している秘宝だ。
最近実装された・・・図鑑システムとやらのおかげらしくてな、ラティナは大荒れなのだ。」
・・・へぇ、だから何?と2人がそんな顔でたけだを見る。
「君たちの仲間もここに向かっている。」
「「・・・!?」」
2人は察した。間違いない、ユーヤだ。
俺らの仲間といったらこの世界じゃユーヤしかいない・・・
なぜ、わかるんだ・・・!?
この人は、何者なんだ・・・?