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永遠の桜  作者: ふがし
第1章 生誕編
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第0話 楽園の喪失

 主人公がただひたすらロリババアを愛し続ける話です。あまりシリアス要素はありません。ハーレム・ロリババア・美少年といった語に拒否感を覚える方にはお勧めできません。

 作者の始めての作品です。



 さて、ロリババアの話をしよう。


 ロリババア。広く知られる言葉ではない。いわば、好みの対象。巨乳、貧乳、和服、ツンデレ、それら数多ある嗜好の一つ。属性。

 

 明確な定義はない。だが僕が決定した定義は、以下の三条件を満たしていることである。


 1.身長・体型が小中学生の平均値から大きく外れないこと。

 2.意識を有した状態での年齢が65歳以上であること。

 3.性別が肉体的・精神的に女性であること。


 即ち、子供の体に大人の精神。ロリにしてババア。僕はそれを、ロリババアと呼んだ。


 5歳の時、ロリババアという言葉を知った。きっかけは、よく覚えていない。何故だか僕は、その言葉に強く惹かれていた。


 10歳の時、ロリババアが出てくる小説を読んだ。児童向けの本だった。彼女はメインヒロインではなかった。主人公を愛し、守り、命まで捧げた大樹の神霊だった。彼女が微笑むたび僕は嬉しくなり、彼女が泣くたび僕の心は締め付けられた。小説の終章近くで彼女が死んだとき、僕は世界が終わるほどの衝撃を受けた。僕は彼女を愛していた。僕はロリババアを愛していた。


 13歳の時、妄想していた。ロリババアに恋をし、愛し、結ばれることを。妄想の中で、僕は生意気だけれど甘えたがりな少年だった。僕が無茶をやらかす度、彼女は僕を叱った。僕がごめんなさい、というと、彼女は一転して小さな身体で優しく抱きとめてくれた。僕は、ロリババアを、愛していた。


 15歳の時、現実を知った。現代日本に、いやそれどころかこの世界のどこを探しても、ロリババアは存在しない。巨乳ならいくらでもいる。貧乳など腐るほどいる。和服は言わずもがな。ツンデレも、まあ多分いるだろう。けれど、ロリババアはいない。僕はロリババアと結ばれない。会うことすらできない。僕は絶望した。その日、僕はあれほど愛していたロリババアが登場する本を捨てた。本とともに、僕の思いも捨て去った。僕の心は軋むような悲鳴を上げていたけれど、僕にはどうしようもなかった。


 17歳の時、病気になった。今思い返せばただの風邪だったのだろうが、どうしようもなく苦しかった。喉は焼け付くように熱く、時たま嚥下する唾液すら喉を引き裂くようだった。猛烈な頭痛は眠りを妨げ、僕は悶えるように枕に頭を押し付けることで痛みを抑えようとした。夏のむせ返るような湿気を含んだ夜気が、汗だくの僕の頬を陰鬱に撫でた。


 ふわり、と風が香った。唐突に、痛みが和らいだような気がした。僕は崩れ落ちるようにベッドに四肢を広げた。火照った身体が涼を求めて転がる。ひやり、と、小さな手が僕の額に置かれた。大丈夫、という声が聞こえた。鈴を転がしたような、高い、それでいて落ち着いた少女の声。僕はひどく安らいだ心地で、目を閉じた。


 彼女は一体何だったのだろう。僕の母は早くに死んだ。僕に姉妹はいない。男手一つで僕を育てた父は寡黙で、女と縁が薄かった。彼女は僕の譫妄が産んだ幻覚だったのだろうか。ただ一つ確かなことは、僕の記憶に残る彼女の声音、香り、手の感触、その全てが、かつて僕が愛し、頭の中でだけ思い描いていたロリババアそのものだったということだ。僕はその日以来、僕は再びロリババアを愛し始めた。


 18歳の時、僕は決意していた。ロリババアはいない。ならば、僕が作り出す。

 僕は生物学の研究を始めた。ロリババアの定義を自分なりに考察しだしたのもこのころだった。ロリババアを作り出すにはどうすればいいか。

 

 第一案は現存の老人を若返らせるというものだった。だが、これは技術的に非常に困難だった。


 ある種のクラゲは老いた自分の身体を再構成することで若返るという。だがそれは原始的な生物だからできることであって、脳という複雑な構造を抱えた人間の身体を一から構築し直すことなど不可能に近い。僕はこのアプローチを断念した。   


 第二案として、老化に極度の耐性を持つ人間の変異体を作ることを考えた。旧型のテレビを新品同様にするのは困難だが、新しく劣化しにくいテレビを作り出すことは比較的容易である。そういうことだ。勿論、人間と言う複雑系でそれを実現するのだ、容易などとは口が裂けてもいえないが。


 技術的側面を抜きにしても、第二案には致命的欠点があった。新しく作られた変異体が成長し、まさしくロリババアとなったとして、その時僕は彼女より年上なのだ。ロリババアの定義は前に示したとおりだが、その定義に加えて、僕はロリババアより年下のままで彼女に愛されたいのだ。ロリババアに愛される僕は、決して彼女より格上の存在であってはならない。僕はそこそこ優秀であったとしても、時に過ちを犯し、彼女に「まだまだ未熟じゃのう」「ひよっこめ、ワシがおらんと満足に仕事もできんのか」などと呆れと慈愛を含んだ瞳で見られ、優しく頭を撫でられる、そういう愛され方をしたいのだ。我ながら難儀と言うほかない。


 この問題点に関して、コールドスリープにより僕だけ年を取らない状態を保つといった方法を考えていたが、それはロリババアの作成案よりかは漠然としたものであったと言わざるを得ない。まずは、ロリババアを作る。それが成し遂げられなければ、何の意味もない。


 24歳の時、博士課程で人間の寿命と老化研究に関して僕が挙げた成果を、ある科学誌の評論家はこう評した。


「この研究成果は我々に無限ともいえる視野を授けてくれるだろう……実用まで長いときを待つだろうが、それは引き伸ばされる我々の寿命と言う観点から言えば、ごく短い時間と言える……結果は非常にクリアで、リーズナブルであり、導き出される考察は熟練の研究者のものだが、一方で大胆な手法は若々しい情熱さえ感じさせる……」


 悪くはなかったが、僕の目標には程遠い。僕は持てる時間の全てを研究に費やした。マウスの死骸を重ねた分だけ、研究者は前に進める。ケージの中で異様に軽快に動く老マウスを見つめながら、僕の心は激しい恋慕の情に燃えていた。

 

 27歳の時、僕は死んだ。大学のエレベーターに乗り込もうとしたときだった。突然、何かが千切れるような音がした後、僕の腹と背に強い衝撃を感じた。大きく咳き込むと、血反吐がリノリウムの床にぶちまけられた。強烈な苦痛の中、僕は、エレベーターが落下し僕の身体が挟まれてしまったことを悟った。薄れる意識の中、僕が思い描いたのは彼女の姿で、僕が呟いたのは彼女の名前で、僕の指先が血を引きずって描いていたのは夢にまで見た彼女の微笑む顔だった。僕は生涯を掛けて彼女を愛したし、たとえ何度生まれ変わろうと、どこに生まれ変わろうと、変わらず彼女を、ロリババアを、愛し続けるだろう。


「以上の理由から」


 そこまで語り終えると、僕は目の前の人物──カミサマ、と名乗った人を見つめた。


「僕が転生するとしたら、ロリババアが存在し、かつ僕がロリババアと結ばれることが可能な世界がいいです」


 **********


 僕が死んだ後。気付いたらここにいた。何もない世界。自分の身体を見下ろすと、手足も胴体もなく、ぼんやりとした燐光だけが見えた。そして、眼前には光輝く人型が佇んでいた。


「私はカミサマです」

「カミサマ? 何教の神様ですか?」

「神は数多いますが、カミサマは唯一です」

「僕は死んだのですか?」

「不幸にして。嘆くのは当然です。けれど安心してください。死亡と消滅は同義ではありません」

「どういうことですか?」

「転生するからです」

「転生? 天国と地獄はないのですか?」

「魂は流転するだけです。終着はありません。自ら望んで消えうせること、留まることならできますが」

「僕は来世で何になるのですか?」

「何にでも。塵より軽い羽虫として浮世を漂うもよし、叡智高き竜王として孤高を抱いて吼えるもよし」

「竜がいるのですか?」

「いる世界にはいます。あなたはどんな世界を望みますか?」

「僕は……」


 **********


 そして現在。ロリババアを愛している、ロリババアが実在する世界に行きたい。そんな僕の熱情を振り絞った言葉にカミサマは偉く感銘を受けたようで、カミサマから放たれる光が淡く明滅し出した。ロリババアと結ばれることが可能な世界──それこそ天国としか言いようがないではないか!


「……。そ、そうですか」


 カミサマはどこか半笑いを思わせる明滅をした後で、搾り出すようにそう言った。きっとロリババアという存在の素晴らしさを認識したことで言葉もないのだろう。


「えー、あー……。それでしたら、こちらの剣と魔法の世界はどうでしょう?」

「ロリババアはいますか?」

「私の認識では。高等魔女、吸血鬼、神霊、古竜、妖精、純血の魔族、爬虫人種。外見を幼く保ったまま、何十何百の齢を重ねたものは珍しくありません。ただ、あなたの感性に合致するかどうかまでは判断しかねます」

「僕の定義を満たしているのなら、それで構いません。その世界でお願いします」

 

 受け答えしながら、僕の心は沸き立っていた。ロリババア! 夢にまで見たロリババア! この胸を占める感情は歓喜でなくしてなんであろう。


「なるほど。では細かい条件を詰めましょうか」

「条件?」

「ええ。まず転生先の種」

「人間で」

「即決ですか。では年齢」

「年齢? 赤子からやり直すわけではないのですか?」

「いえ。自由ですよ。ただ、赤子からやり直すと家柄を選択できます。逆に年齢を指定すると必ず流浪の民となります。更に言えば、赤子からやり直した場合前世の記憶を殆ど捨て去れるという利点があります」

「利点? それは利点でしょうか?」

「場合によっては。誰しもが本願果たして大往生できるわけではありません。むしろそんなものはごく少数でしょう。負け犬のように地面を這ずったもの、精神や肉体に強い辱めを受けたもの、癒されない悲しみを背負ったもの。そういったものの多くは、前世を捨てて一からやり直すことを望みます。あなたも……あれほどの事故で苦しみながら死んだのですから、赤子からやり直すかと思ったんですけど、ねぇ……」


 明滅を繰り返す人型を横目に、僕は少し考え、


「では、10歳で」

「はいはい。性別」

「男」

「はい。基本事項はこれで決定です。次は能力と技能ですね」

「能力と技能?」

「今風に言うとステータスとスキルですね。前世の貴方の最終数値はこんなもんです」


能力

筋力 20

耐久 21

敏捷 22

器用 53

知能 63

魔力 1

信仰 11

意志 115

魅力 51


技能

生物学 ランク2 Lv51

化学  ランク1 Lv9

語学  ランク1 Lv8

教育  ランク1 Lv3


「能力は50で凡人、80で一流、130で超人、200で下級神級です。目安として。技能はランク1~3まであり、1で教養程度、2で専門並、3で人外です。技能を鍛えるとレベルが上がり、レベルが上がるとランクが上がります」 

「なるほど」

「ゲームが存在する世界は説明しやすくていいですね。与えられたボーナスポイント、BPを自由に割り振ってください」

「ボーナスポイント?」

「前世の行いによって与えられる数値と考えてください。善悪よりも世に与えた影響によって評価されます。あなたの場合、特定分野の研究で業績をあげました。これにより550点差し上げます」

「多いほうですか?」

「ええ。中の上くらいですね。スキル表も渡しましょう」


 言うと、僕の頭の中に表が浮かんできた。これがスキル表という奴か。暫く、悩む。

 そして、決定した。


能力

筋力 1

耐久 1

敏捷 1

器用 1

知能 40

魔力 1

信仰 1

意志 94

魅力 200


技能

創造主の指先 ランク3 Lv200

調査     ランク1 Lv1


 能力値は最低値1で固定され、1点増加させるごとにBP1点分、技能は獲得にBP10点、Lv1上げるごとにBP1点必要。技能はLv50でランク2、Lv200でランク3に昇格するらしい。


「これは、また……極振りですね。一応忠告しておきますが、この数値ではまともな生活を送ることすら困難を伴いますよ。よろしいのですか?」

「はい」

「……更に言うと、創造主の指先という技能。これは……クセが……。いや、いや。野暮でしょうか。あなたは全てを理解してなお、それを望むのですね?」

「はい」


 力強く頷く僕に、カミサマは微笑んだ、ような気がした。


「ならば最早何も言いますまい。異形ながら強き魂に祝福を」

「あ、待ってください、1つだけ」

「? はい?」


 首を傾げる人型に、僕は出会ってからずっと気になっていたことを尋ねた。


「あなたは、ロリババアですか?」


 僅かな沈黙の後、苦笑するように人型は揺らいだ。


「……ご想像にお任せします」


 その言葉を最後に、僕の意識は薄れていった……。


 **********


 固有特性『異形の魂』を有しています。

 持ち物袋に旅行セットが追加されました。


 ……???の祝福を受けました。意志に+36のボーナスがつきます。


 まああれですな、お約束な序章でした。

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