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日本新世界紀行  作者: 魔王
序章
1/12

転移

まずこの本は、時の政府によっては、発禁と出版を繰り返していただけに、今回の出版に協力してくれた関係各所の皆様には感謝を述べたい。



201X年、突如宇宙から黒い雲のような物が、日本目がけて降って来た。

それに完全に覆われたら最後、日本そのものが別世界に転移してしまうことを、日本に住む人達は理解した。

何故そう理解できたのか。それは皆、神の声を一斉に聞いたかのようなものだったと言う。


日本に滞在する外国人旅行者はもちろん、在日米軍、さらに日本と運命を共にしたくない、金を持った一部日本人も含め、外国に我先と日本から脱出した。


日本政府も、日本亡き後、世界に残る同胞の為に、その拠り所として皇族の一部を、政府関係者と共に国外に送り出した。


そして日本全土が黒い雲に覆われる同時に、日本とそこに住む人達は、新世界へと旅立つ事になる。



新世界に来たからといって、空気が薄くなったとか、気候が目に見えて変わったとか、そんな変化は感じられなかった。

太陽も一つだし、経緯や緯度も地球に居た時とどうやら変わらない事がすぐに分かった。

ただ夜に光る星座に位置だけが変わっていた。


移転してから、衛星を打ち上げて分かった事は、この新世界は、地球とほぼ同じ惑星である事。そして日本から見て太平洋上にムー大陸がある事が分かった。


さらに、そのムー大陸も含め周辺領土には、日本と脅かすような文明レベルは存在しない事も分かった。

ただ、日本の裏側に位置する所にある、アトランティス大陸だけは、日本と同等かそれ以上の文明がある事を、すでにこの時点で分かっていた。

それを国民が知るのは、随分後になってからである。

この時点では、当時の政府のトップと関係者だけが知る、最高機密として、隠させる事になる。



さて、このような状況にあった日本当時の政権は、中道右派の連合であった。

首相は、極右政党の代表であった、石田太郎。 

本来なら、議会の多数派である保守党から出ているのが普通なのだが、この未曾有の国難に当たって、自らの政党に傷を付けたくなかったのか、少数与党の人物を持ち上げたのであった。


この石田太郎という人物、その歯に衣着せぬ発言で、国内でも人気の政治家の一人であり、悪く言う人は日本のヒトラーだと言う人も居た。

そして、それが現実になろうとは、移転前には誰も予想だに出来なかったのだが。


転移した後の日本は、様々な問題に直面していた。

特に深刻な問題だったのは、食料であった。

何せTPPのおかげで、国内の農業は多大なダメージを受けとおり、この時点での国内需給率30%しか無かったからである。

政治は内政に属するというが、内政も突き詰めれば、いかに国民を飢えさせずにするのかがカギとなる。

直ちに米などは配給制度にしたが、闇米などが蔓延し、低所得者ほど生活に困窮した。


企業も大量に人員を解雇していた。自動車などを作っても、一体誰が買うのか。

すでに移転前から、貧富の差が開き、一部の金持ちと、多くの貧しい人を作り上げていた。

その金持ちたちは、その金を持って国外に逃亡したのだからなおさらである。


資源が限られ、食料自給率も低かった日本にとって、この移転は死活問題であった。

ゆえに、国民の誰もがこの移転を恨んだのは、よく分かる。


しかし、そうでない人達も居た。

すぐには生活に困らない、政治家と高級官僚達である。

彼らは、日本の死活問題で頭を悩ませる事より、米中韓の圧力と嫌がらせに、悩まされない事の方がよっぽどうれしかったのである。

実際、米中韓の居ない世界に乾杯と、宴会を開いた程などだから。


経済もインフレになり、円の価値が暴落していた。莫大な借金がついに破裂したのである。

このような状況にあっても、政府は生活に喘ぐ人達を助けようとはしなかった。

権利より義務を優先し、自助努力を常とする、保守系の議員達には、弱者救済策などは積極的では無かったのだ。


移転から1年目も経たずにして、ついに生活に困窮した人々が暴動を起こす事になる。


日本各地に広がった暴動に対し、政府が取った策は、懐柔でもなく、強硬策であった。

しかも警察どころか、国防軍(すでに移転前から、自衛隊から名称が変わっている)ですら治安維持法によって、出動させ鎮圧させた。


デモの死者は、数百とも言われているが、実際は千人近く亡くなっている。これは老人も多く参加したことによるものだという。

このことを警察関係者が、石田首相に報告した際、「ちょうどよい人減らしになった」と言ったとされるが、それを聞き、この関係者は背筋が凍るようだったと後に証言している。


政府はこの暴動を、在日外国人による仕業と断定し、彼らを徹底的に取り締まった。

確かに、彼らも参加したかもしれないが、それは一部であり、主体では無かった。

しかし石田首相は、これを機に、前から気に入らなかった在日を消し去ろうとしていた。


政府は、在日法を作り、在日外国人を片っ端から、強制収容所送りにした。それは老若男女問わない過酷なものであった。

しかも在日外国人といっても、特定のアジア諸国の人ばかりで、人種差別以外何者でもなかった。


この政府のやり方に対し、長年在日を快く思ってなかった人達も多く居た事も又事実であり、特に保守層の中では歓喜をもって受け入れられた。

今だに、あの暴動は、在日の仕業とだったと信じて疑わない人も居るくらいだ。


しかしながら、思い出して欲しい。彼らは転移する際、この日本とともに運命を共にした事を。

いまさら彼らの祖国にもどれないとは言え、金を持って逃げた出した、生粋の日本人よりどれだけましだったか。


在日法は、ハーフの人達まで適用された。法務省高官の「半分の在日を殺す為に、半分の日本人を殺すのか」と言ったという記録が残っている。

ナチスのユダヤ狩りにも似た行動が取られ、唯一違ったのは、ガス室送りが無かっただけ、と言うのが世間の一般的な見方だが、実は違う。

封印された記録には、真剣に民族抹消が検討され、ガス室送りも候補に上がっていたのである。


これは、彼らを死に追い詰める刑務官の人達が、良心の呵責に耐え切れず、配置転換を求める者も多かったし、中には自殺する人まで出で居たからであった。

又、在日法により、血統が調べられ、自分に在日の血が流れている事を知った。ネット右翼の少年が、両親を惨殺するといった、痛ましい事件もあった。


石田首相率いる政府は、戒厳令をひき、自分に敵対するや政治家、マスコミなどの弾圧も同時に行った。

自宅軟禁や、逮捕、放映禁止などの処置も取ったのである。

保守系の政治家達ですら、やりすぎではないかと言った意見も出たが、首相はまったく意に返さなかったようだ。

とにかく邪魔する輩は、皆抵抗勢力であり、国家の敵だと言う認識しかなかった。


議会では、在日法を可決した以外では、日本の元首は天皇陛下にあるとする法案も可決。

これにより日本の正式名称を、日本国から、日本帝国に変えたのであった。


これは、明治維新を第二帝国とするなら、今回は日本の第三帝国時代の始まりでもあった。


そうなると国防軍は、帝国軍になるのが普通だが、自衛隊から国防軍になってまだ日が浅い事と、やはりなんといっても軍に対する天皇の統帥権の問題があった。

戦前、軍部独走の元になった統帥権問題を、保守系政治家と言えでも軽々しく扱えず、先送りする事になったのである。



この頃の軍部は、陸海空3軍の他に、海兵隊、戦略ミサイル軍も作っていた。

とは言っても、海兵隊は海軍の、戦略ミサイル軍は空軍の管轄下であったが、近い将来、独立する事は承知の事実であった。


海兵隊は、今更説明する必要もなく、海岸から上陸する専門の部隊であり、常に第一線に立つ兵士達である。

戦略ミサイル軍は、戦略ミサイルの運営(アメリカの傘が無い今、特に必要とされた)と防御、及び宇宙軍も含まれる。

それぞれのトップの位は、中将である。


制服組トップは、統合参謀議長であり、位は大将(元帥は名誉職でもあり、今はまだいない)

陸海空軍の司令官の位も大将である。


転移後、政府は、国防軍の戦力を自衛隊の時より倍増させていた。


これは、失業対策もあるが、自給率を少しでも上げる為に、農業などに携わる人員を増やしたかったからだ。

ゆえに、増やしたのは、ほとんど陸軍で、正式名称では無い物の、通称、屯田兵師団と呼ばれていた。

入ってきた若者も、特別国家公務員として、生活が保障されている事は良いが、まさか軍事訓練そっちのけで、本当に一日中農作業に従事するとは思っても無かったに違いない。

こんな事なら、実家の農業を継いでいた方が見入りもいいしましだったと、嘆いていた隊員もいたという(基本兵士は、3年契約)

この頃の農家は、食うに困らず、政府からも優遇処置を受けていたからである


軍内部で元からいた隊員からは、そんな増強されたまともに軍事訓練もしていない部隊の事を、2級戦部隊と言ってからかっていた。

そんな1級戦部隊である彼らも、石油や弾薬節約の為、ほとんどの訓練は中止さぜる他無く、自分たちの食い扶持を稼ぐためにも、農作業をさぜる得なかった。


空軍と海軍も、一部情報収集する部隊以外、同様であった。


しかしながら政府は、兵力増強だけではなく、装備増強策も転移後すぐに打ち出していた。

米軍の庇護が無くなった以上、日本の防衛は、文字通り国防軍が全責任を負う事になったのだ。

戦略ミサイルの開発配備。さらに海外に打って出る為の原子力空母と潜水艦の開発配備である。



空軍は、戦略ミサイル軍ばかりに予算が取られていたが、その中でも、F2だけは、航続距離の延長と対地攻撃力を向上させたF2改を作り上げた。

今後ムー大陸侵攻の為に、必要とされたのではないか推察される。

ちなみに、ムー大陸のレベルは中世期。ただし魔法と竜もどきがあると情報部では見ていた。


F35ライトニングは、結局4機以外間に合わなかった。

予算は大幅にオーバーするは、納期は間に合わないは、F4ファントムは限界を過ぎているいるわで、痺れを切らした時の政府により、F-Xで一度は落としたユーロファイターを導入することを決めた。

国内で完全ライセンス化された、F2000タイフーンと名づけられたこの戦闘機は、各種任務に活躍することが期待されていた。

又、これが技研で開発中の国産ステルス戦闘機にも良い影響を与えることも予想された。


ちなみにF35のコピー機は早々に断念された。

これは、今すぐにでも制空権を奪われる恐れが無かった事と、何より開発製造維持費が馬鹿にならなかった他ならない。

何より、どうせ開発するのなら、国産初になるステルス戦闘機心神を、優先すべきと言う判断がなされたからだった。


海軍に目を向けると、原子力空母赤城の開発によって、その艦上戦闘機を何にするかで揉めていた。

候補は、F18スーパーホーネットのコピー機と、インドから提供されたデーターで作り上げた、フランカーのコピー機である。


審査の結果、フランカーに決定した。これはただ単にカッコいいという以外にも、これなら空軍のイーグルにもタイフーンにも負けない。という海軍の優越感を満たした為と言われる。

こおして、艦上戦闘機F33フランカーJの誕生した。


原子力空母赤城は7万トン。乗せる飛行機もフランカー24機とあっては、まるで日本版の中国空母遼寧だと、影でささやかれることになる。


海軍は、まだまだ配備に時間がかかる空母赤城より先に、24DDHの3隻(出雲級)を軽空母に改造していた。

当初はF35Bを望んでいたが、それはかなわぬ夢物語であった。


そこで海軍は、米軍撤退の際、修理中で置き去りにされたハリアー2のコピー機を所望した(スーパーホーネットもそれで手に入れていた)

新設されていた海兵隊を援護する為にも、必要度は高いとし、正式名称AV8Bハリアー2は、こうして国産機としてコピー生産された。




天文学の権威達が1年間以上研究して、分かった事は、この惑星の位置は、何と銀河系から遠く離れた、アンドロメダ銀河に位置するとの事であった。

本当に神の身技なのか、あるいは宇宙人の仕業か。あるいは、超自然現象なのか。一体誰が何の為に、こんな事をしたのか、疑問は深まるばかりであった。


この発表を受けて、政治的な左右両派が打ち出した政策名が、共にパックス・ジャポニカ(日本の平和)であったことは面白い。

だが中身は丸っきり正反対の物であった。


右派は、「日本は、神より選ばれし、神の国だ。日本の生存権を世界に確立していく」というものだった。

具体的に言えば、日本を盟主とする共存共栄の新たな国際秩序を建設しようという、まさに大東亜共栄圏の夢よ再びと言った所か。

国益の為なら、他国への侵攻(文部省推薦用語)も辞さず。の姿勢だった。


対する左派は、「日本人の民度高さが神の目に留まり、貧困と紛争絶えない世界から救い出してくれたのだ。今こそ平和主義に基ずく共存共栄の世界を」というもので、平和憲法に基づく高い理想かがており、軍事行動も、今そこにある危機が無い限り、行動せず。といものだった。


パックス・ブリタニカあるいは、パックス・アメリカーナように、日本を軍事、経済面で覇権国とする国際平和と株序を求めるのか。

あるいは、戦後求めていても適わなかった理想である、覇権を目指さず、外交と経済面で、国際平和と秩序を求めるのかの違いである。


もっと簡単に突き詰めると、争ってでも、何がなんでも一番を取りにいくのか。あるいは、極力争いは避けて、二番でも駄目なのか。に近いかもしれない。

特に前者はまさに、資本主義的とも言えるだろう。



余談だが、この頃作られたアニメに、銀河系の地球に帰る為、遥々望む超時空要塞ヤマトなる作品がある。

小説の方では、銀河系を跨いでイヤン提督が活躍する、大銀河英雄伝説物語がヒットしていたのもこの時期である。



転移後、北方諸島(北海道の上あたりで、無人島だった)調べた結果、戦略物資でもっとも重要な石油資源が眠っている事を発見。

ただちに開発に着手した。


沖縄南西にあった、南西諸島にも進出したが、そこには原住民たるボア人がいた。

正確には亜人種といえるかもしれない。

詳しい情報が無いのは、時の政府が、彼らを人ではなく、害虫として認定、駆除したしまったから他ならない。

そこに派遣された、海兵隊や時の役人の証言からは、彼らはおとなしく、ただ土地を追われる事に関しは抵抗していたに過ぎず、子供や奥さんなど家庭も営んでいた。とある。

原始的亜人種であったにせよ、彼らを駆除という名の虐殺してしまったことは、決して許されることではない。

軍の正式発表には無い物の、何人もの海兵隊員が、駆除という名の虐殺命令を、拒否したと言われている。


何故このような政府決定がなされたのか。関係者達からの口も重いので、正確には分からない。

推測だが理由として上げられるのは、ただ単に邪魔だったから。ボア人抹殺後、すぐに屯田兵師団が駐屯し、農地など開発に着手したからである。


なお文部省は、検定を受ける教科書には、ボア人では無く、ボアと書くように指導している。彼らは今でも人扱いされてはいない。



転移2年目にして、食料事情も経済も、それりに安定してきた。石油も入ってきた事も大きかった。

この辺は、石田首相の手腕は評価される。

だからと言って、強権的な行為より、亡くなられた人達の事や、政敵や言論弾圧など、人権を無視した罪は決して無くならないが。



こおして、日本国内状況も落ち着きを取り戻した事により、政府は、その目をムー大陸にいよいよ向けた。

より豊かな土地と、資源と、市場を求めて。

この年になって、小説というか、物語を書くのは初めてですが、読者の皆様には、お付き合いのほどよろしくお願い致します。

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