半分だけのプレゼント
今日の朝ぴんっと思いついた話です。クリスマスなのに少し悲しいお話ですが、よかったら読んでみてください!
感想などもドシドシお待ちしています!ご指摘もありましたらビシビシとお願いしますw
クリスマスというのはなんて忌々しいモノだ。
しかし、そう思っているのは自分だけだと言われているかのように『清しこの夜』が町で流れていた。
「残念ながら、今日は曇りで星なんて見えないだろ」と空を見上げながら呟く。
《サンタさん、久しぶりにプレゼントをくれませんか。彼女か時計の針を戻す魔法とかを》
そんなことを考えながら、歩いていた。
町に溢れているのはカップルや家族が楽しんでいる声とスピーカーから聞こえるクリスマスソング。なんて楽しいそうなんだと思いながら、イヤホンを耳に装着した。しかし、音楽を聴くためではない。その楽しそうな声や音楽が聞こえないようにするためだ。
タクシーに乗ったら着くのも早かったかもしれないけれど、歩いていく。そう決意したさっきの自分を今頃、悔やんだ。
ふと、横を見るとサンタの衣装を来た人と彼の膝に座っている男の子がいた。男の子は、サンタさんの耳元で何かをささやき、サンタはそれを聞いて、その後に親指をたてていた。
たぶん、プレゼントに何が欲しいか言っていたのだろう。俺も子供の時によく、ああやってサンタの衣装の人に聴いてもらったな。と視線を元に戻し、また歩き始めた。
もうすぐ、着くな。今、何時だろうと腕時計を見る。
8時か。結構かかったな。まあ、良いか、と目的の建物の中に入った。
そこも、クリスマスの装飾で飾り付けされていた。トナカイの鼻やサンタのおしりが光っている。
手に持っている紙袋をグシャっと潰したくなったが、中身を思い出し、我慢してエレベーターに乗って、七階を押した。
すると、そこにパジャマを着た子どもが二人乗ってきた。
「お兄ちゃん!六階を押して」と笑顔でこちらに頼んできた。
「いいよ・・・」とだけ言い、六階を押す。そして閉のボタンを押した。
「ありがとう!」とまぶしい笑顔を再び見せた。
乗っていると、その二人の会話が耳に入ってきた。
「なあ、お前はサンタさんに何を頼むの?」と1人の子どもが言う。。
「んー。選べないよ。ローストチキンかな、ステーキかな」
「それ、食べ物ばっかりじゃん」とケタケタと笑っていた。
「じゃあ、そっちは何を頼むのさー」と口を尖らせて言っていた。
おもちゃか何かかと思ったが、その子の願いは全く違うモノであった。
「俺か、俺はおもちゃとかはいらないその代わり、家族と一緒に居させてと頼んだんだ」
この子はどんな境遇にいるんだ。両親はクリスマスに働きに行っているのか。一緒に過ごしてやれよとその子の両親を忌々しく思ってしまった。
「あっ!それいいね。僕もそれを頼もう」ともう1人の子どもが言う。
「真似するなよー。まあ、良いけどな」と2人は笑った。
そして、六階に着き、2人は降りていく。そして、振り返ってこっちを見てきた。「お兄ちゃん、ありがとう!メリークリスマス!」と俺に言うために。
「君たち!名前は?」と咄嗟に声が出てしまった
「僕はビリー、こいつはマックだよ」
「そっか・・・。メリークリスマス」と何も考えずに言ったため、これ以上話の輪を広げることはできなかった。
「うん!じゃあね」と2人は走っていくのを見届け、エレベーターを閉めた。
七階に着き、712号室に向かった。俺はその部屋の前で止まり、コンコンとノックをしてから入った。
そこには、マギーが寝ている。
「メリークリスマス」 と囁き、手に持っているプレゼントをマギーのそばの机に置いた。
マギーからは返事は無い。
「なあ、起きてくれよ」とマギーの体を揺すったが、死んでいるように返事をしない。
だが、生きている音がリズム良く聞こえてくる。マギーはまだ生きている。それだけはわかっている。だけど、彼女が目を開け俺を見ることはない。
マギーは彼女の体にいろいろな管とつながっている。なのに、彼女は反応すらしない。
俺はマギーの手を握った。彼女の手はとても温もりを持った手だ。ただ、握り返してはくれない。
自分の目には涙が伝わなかった。本当に涙を流したいと願うほど涙が出ないなんて、最悪だ。 今、流せないなら今後、一生泣けないだろう。
《サンタさん、彼女を起こしてよ。》と彼女の手を握りながら懇願した。
すると、彼女 が握り返してくれた。弱弱しくだが、ちゃんと握り返してくれた。
俺は彼女の顔を見た。だが、目は開いていない。
「マギー?」と声をかけると、口角をあげてくれた。
「ニック」と声を発する。
「そうだよ!俺だよ。マギー」と返すと歯を見せて笑ってくれた。
「今日、クリスマスだよね?雪降ってる?」と尋ねてきた。
「ああ、クリスマスだよ。けど、まだ雪は降ってない」
「そっかー。サンタさんは途中までしか願いを、叶えてくれなかったかー。ホワイトクリスマスにニックと過ごしたいってお願いしていたんだ。でも、ニックといるだけでも私は嬉しい」とようやく、目を開け俺の顔を見てくれた。
「そっかー。俺も願いが叶ったよ」
「そうなの?何をお願したの?」
「マギーと一緒に居させてってお願いしていたんだよ」
「そうなんだ。一緒だね」と笑ってくれた。
「だな」と笑い返した。
「あっ、雪!」とマギーが外を見ながら言ってきた。俺も振り返るとハラハラと雪が舞っていた。
「願い、全部叶ったな」
「うん!やったね!」
「それとな、プレゼントを買ってきたんだ!ちょっと待ってくれよ。今出すから」と横に置いてある紙袋からプレゼントを取りだそうと彼女から目を外す。
すると、
「これ、『清しこの夜』?」と外で聞こえる聖歌隊の歌にマギーは反応したのだ。
「ああ、そうだよ。ここに来るときも聞こえていたし」とプレゼントを取りだし、彼女を再び見る。
「とても、良い曲だよね。私、この歌すごく好き」ととても安らかな表情で聴いていた。
「ああ、そうだな。まあ、星は見えてないけどな。でもな!そうだと思ってこの曲のオルゴールをプレゼントに決めたんだ」とプレゼントを渡した。
しかし、彼女は受け取ってくれなかった。
マギーは『清しこの夜』の歌に音はずれの高音を響かせながら息を引き取ったのだった。
「マギー?マギー?」と枕元にオルゴールを置き、彼女の手を再び握る。でも、握り返してはくれなかった。
《サンタさん。全部叶えてくれないの?まだ、時計の針を戻す魔法をもらってないですよ?早く、彼女に魔法をかけなくちゃ。お願い、お願い。マギーの願いは全部叶えたのに、俺の願いは半分だけですか?ずるいよ。そんなの》と俺は彼女を見ながら言った。
そして、ナースコールを押す。
「はい?」と看護師から反応が来た。
「712号室のマギーが死にました」と涙も流さずに伝えた。いや、出なかったのだ。
「え!?今すぐに、ドクターと一緒に向かいます!」
「わかりました。ですが、1つお願いがあります。六階のビリー君とマック君の両親に、すぐに病院に来て一緒に過ごしてやれと言っといて下さい」
「わかりました。伝えておきます。では、待っていて下さい」と言い、ナースコールが切れてしまった。
《サンタさん、簡単じゃないか。願いを叶えるなんて》と笑いがこぼれた。
俺はその笑顔を作っていた時に、目からようやく涙が流れた。
お読み下さってありがとうございます!
ハッピーエンドだけが全てでない!w
また、どこかで自分の小説があったらその時にw
葛でした