4 ある朝の半竜娘
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夜になって、ようやく父様が帰ってきた。もう眠い時間だったけれども、私は寝床にしているふかふかの草の山の中から顔を出し、精霊に頼んで洞窟の中に明かりをともす。暗いままだとそのまま寝てしまいそうだ。
『父様、おかえりなさいー』
眠気で間延びする声は仕方ないと思って欲しい。普段なら日が沈んで少し経ったらもう寝てしまうのだ。普通の竜は数日寝なくても平気だが、何分私は成長期。よく寝るしそれなりに物も食べる。ちなみに私の主食は果物だ。
『ただいま。寝ていてもよかったんだぞ?』
『んー…大丈夫ー』
もぞもぞと寝床から抜け出そうとするが、その前に父様がこっちに来てくれた。長い首を差し出して頬擦りしてくれる。
『ほら。いろいろと聞きたいことはあるだろうが、明日にしよう』
『んー…父様、明日もいてくれるの?』
『ああ。明日、大事な話があるから。だから今日はもう寝なさい』
『ん…お休み父様…』
大事な話、というのが気になったけど、眠気に耐え切れず寝床の中に埋もれる。その周りを父様が包むようにしてくれた。いつだって、父様と母様の傍が私の一番安心できる場所。
私はその日、夢も見ずに眠った。
* * *
寝起きの悪い私にしては珍しく、今日はすっきりと起きることが出来た。父様の姿は見えなかったけど、父様が「いる」と言った以上近くにいるはずだ。寝床から起きだして、背伸びを一つ。とりあえず朝の水浴びと朝ごはんにしようと、私は翼を出して洞窟の外へ出た。
水浴びを終えて、いくつか果物を取って食べながら住処へと帰る。今日は私の好きな木の実が熟れていてちょっと嬉しい。色が黄色で形が枇杷っぽいこの果物だが、食感と味は林檎だったりする。最初は凄く違和感があったが、最近はむしろこっちが普通だと思えてきた。
『ただいまー』
そして丁度完食。ご馳走様でした。
『おかえり』
『あ、父様帰ってたんだ。お帰りなさい』
翼をしまって住処の中へ。さて、昨日のことを聞けるかな?
『父様父様、昨日のこと聞いてもいい?』
『ああ…そうだな。先に説明しておいたほうがいいだろう』
先に? なんだか少し引っかかって、私は首をかしげる。
『後で、長老方の所に呼ばれているんだ。リスティアージェもな』
『…もしかして、昨日のこと?』
若干引き気味に言った私に、父様は笑って言った。
『あれは関係ない。青の長老も不問だと言っていただろう?』
『じゃ、何だろう?』
『まあ、悪いことではないよ。さて、それで何を聞きたいのかな?』
悪いことじゃないならいい…のかな? 今のところそれは置いておくとしよう。行けばわかるだろうし。とりあえず一番聞きたいのは…
『んと、「シュゴリュウ」って何?』
『守護竜というのはね…』
説明が結構長かったので、私なりに纏めてみた。「マゾク」とか「マジュウ」というのの説明も混ざってたから、まあ仕方ないかな。
今から五十年とちょっと前、私の母様セリセラは、ラスティーダという国で巫女というものをやっていたらしい。巫女というののお仕事は、国に結界というものを張って、魔獣というものの侵入を防ぐことだったんだって。父様と結婚した後も、母様は巫女の仕事を続けていたらしいんだけど、その時に父様が母様を手伝っていたら、いつの間にか国を守る竜、守護竜と呼ばれるようになったとか。
魔獣とか魔族というのは、「狂った精霊」というものを操る…らしんだけど、狂った精霊って何だろう? その辺りは専門家に聞いたほうがいいと言われたので、とりあえずいつか専門家を見つけて聞いてみようと思う。動物っぽい形のが魔獣で、人型してるのが魔族。私のまだ習ってなかった「四つ目の魔法」を使うらしい。
ふぅ、長かった。
『さて、行こうか』
父様に促され、私も立ち上がる。ちょっと緊張してきた…長老様は、おじい様以外にはあまり会わないからなぁ…。
そう遠い場所ではないので、頑張って自力で飛んでいくことにした。ゆっくり飛ばせてごめんね父様! 何があるのかはよくわからないけど、とりあえず行ってきます。
難産回その1、の続きです。
もしかしたら前話共々後で手直しするかもしれません。
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