3 守護竜な父と半竜娘
すごい勢いで増えるPV、そしてお気に入りに入れてくださった方、本当にありがとうございます!
「ここ、は…」
ゆっくりと頭を振り、彼は辺りをきょろきょろと見回す。多分未だに慌ててる私と、父様が見えたんじゃないかな…って、いいんだろうか父様。人間が竜を見たときの一般的な対応ってどうなるんだろう?
『ええと、起きちゃったけど、どうしたら…』
「守護竜様!」
思わず父様に相談する私を遮って、彼が声を上げた。って、あれ? ちょっと待って、今彼なんて言いました?
「お探しいたしました、守護竜様! どうか、どうか一刻も早くラスティーダにご帰還ください!」
『えーと…父様?』
「シュゴリュウ」とは何なんだ一体。父様をじっと見上げていると、何となく嫌そうに目を歪めながら、父様は彼に話しかけた。
「静まれ。我は約定に従い我が里へと帰還したまで。何ゆえに約定を違えてまで我を求めるか?」
おお、人間の言葉だ。懐かしいなぁ、母様が亡くなって以来話してないし聞いてないよ。しかし、内容は聞き取れるんだけど、意味がわからないです父様。
「無礼であることは重々承知しております。しかしながら、どうか…! 守護竜様が御発ちになられて以来、魔獣共が勢いを増し、最近では魔族どもの出現も確認されております。このままではわが国は…ッ」
うーむ…「マジュウ」に「マゾク」ねぇ。なんか前にそれっぽい言葉を見たことある気がする。ファンタジー系の言葉で。よくはわからないけど、父様はこの人間と知り合いで、人間は父様を探していたということか。もしかして、父様があまり帰ってこれないのってこのせいなのかな?
しかし、私は一体どうしたらいいんだろう、この状況は。
『父様…?』
「ああ、すまない。人の子よ、しばし待て」
「守護竜様!? そちらの娘が、何か」
あう! あの人こっち睨んでるよ。目線の高さからして私睨まれてるよ! 結構綺麗な顔してるだけに怖いよ!!
『と、父様…』
『すまない、先に帰ろう。長老たちには私から言っておいてやるから、外に出たことに関して何か言われはしないだろう』
いえそれよりもあの人の視線が怖いです、刺さってます。かなり精神的に痛いです! と、目を潤ませていたら、父様も彼の視線に気付いたみたいだ。さりげなく私を翼で隠してくれながら、不機嫌な声で言う。
「我が娘に何用か」
「娘!? え、いや、なんで人間…」
失礼な! ああ、でも、翼出してないと私はほとんど人間にしか見えないから仕方がないのかな。何にしろ、このままじゃ時間がかかりそうだ。はやく谷に帰りたいのに…。手っ取り早く自己紹介しましょうか。ついでにもう私を人間だなんて言わないようにしてもらわないとね!
私は父様の翼の影から出て、彼の前で翼を広げて見せた。
「!?」
おお、目が丸い。
「私、は、銀竜アルフェンストラウドの娘、リスティアージェ…一応、竜でス」
うわ…人間の言葉忘れてる。これは時々話す練習しないといつか話せなくなりそうだ。よし、谷に帰ったら毎日少しずつ人間の言葉を話す時間も作ろう! 忘れるなんてもったいない!
『リスティアージェ!』
『あ…名乗っちゃダメだった? 忘却の魔法とか使ったほうがいい?』
そういえば、竜は名前を大事にするから、だめだったかも。でも谷の皆は結構気軽に名前教えてくれるんだけどなぁ…おかげですっかり忘れていたよ。あ、でも愛称はダメ。あれは家族とか特別な相手じゃないと呼ばないし呼ばせない。私も愛称で呼ぶのはエル兄様だけだもの。
『いや…まあいい』
なんか悪いことしちゃったのかなぁ?
「な、ならばその、そちらの…娘様を心配しておられるならば、どうか共に…」
『はい?』
『恐らく言い出すとは思っていたが…やはりか』
そろそろ私訳がわからなくなってきたよ。誰でもいいから説明して欲しい、かなり切実に。そしてはやく帰りたい。いくら父様が言い訳してくれるといっても、外に出ている状況で見つかったら非常に困る…この辺り竜の通り道なんだよね。
『そこで何をしておるか』
! 案の定見つかっちゃったよ!
上を見ると、鮮やかな青い鱗を煌かせた竜が1匹舞い降りてくる。あれは…
『青の長老。貴方こそ何故このようなところに』
父様も気付いて呼びかける。やっぱりあの綺麗な青色は、青の長老セヴィルローディオ様だったか。
『東に少しな。お前はどうした、アルフェンストラウド。そして何故リスティアージェがここにおる?』
やっぱり見逃してはもらえなかったか。この方は規則とか掟とかに詳しい、厳しい方だからな…私どうしよう…。
びくびくしながら父様に視線をやると、父様は青の長老様を見て話し始めた。
『そこな人の子が、谷から見えたので。ラスティーダの者であったようなので捨て置くこともできず。掟は重々承知しておりますが、谷で治療魔法を使えるのはリスティアージェのみ。此度のみはお許しを』
長老様はそこで初めて人間の存在に気がついたようだ。しばし考え込むと、重々しい声で告げた。
『…そなたの役目から考えれば、それは仕方なきこと、であるな。此度のみは許そう。帰るぞ』
こ…怖かった…。やっぱり百歳まで外は出ないほうがいいね、うん。
長老様が浮き上がると同時に私も翼を出すが、父様は何故か動く気配がない。
『父様? 帰りましょう』
『ああ…いや、すぐに追いつく。先に帰っていてくれ』
『…? うん、先に行くね』
翼を羽ばたかせて谷へ向かう。相変わらずのゆっくり飛行をしながら見れば、父様はあの人間と話している様子。
結局彼は一体何だったんだろう? 意味のわからないことばかり増えてしまったけど、後で父様に聞いたら教えてくれるかな?
ようやく見えてきたいつもの岩の塔を目指して飛びながら、私は父様とさっきの人間に思いを馳せた。
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早くも第一回難産回だったので、少し文章が乱れていますが、ご了承ください。