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半竜娘は異界の空に  作者: 名知 あやめ
王都の半竜娘
11/13

8 はじめての外出と半竜娘

 タイトルに偽りあり、出かける前で一旦切りました。区切りの問題上、今回はちょっと短めです。


※ 訂正前のを載せてしまっていたので、正しいほうに差し替えました。

「悪かった」

「わかればよろしい」

 相当痛かったのか、しばらくの間起き上がれなかったアシェン。やっと身を起こして一番の謝罪に、私はとりあえず答えておく。別に怒ったというわけではないんだけどね。

「しかしまあ、その格好は…」

 改めて私を見たアシェンは、困ったように目を逸らす。

「何とかしたほうがいいな。ちょっと、その…」

 恥ずかしい、なのか、はしたない、と続くのか。目を逸らすということはそういう意味だと予想してみる。がしかし、随分いまさらだなぁ。私、最初からこの格好なのに。

「女性としては常識はずれな格好なの?」

「傭兵ならまあ、動きやすさ重視で似たような格好している人もいるが…姫君の格好じゃないぞ」

「姫君って…誰が」

「竜の姫だろ?」

 誰だそんな恥ずかしいのを言い出したのは! そういえば父様のところに来ていた人間も姫だの何だのと言っていたな…。勘弁してほしいよ、そんな柄じゃないのに。

「姫はやめて欲しいなぁ…。それはそれとして、服はなんかこう、背中がふさがっててぞろっと長いのしかないって言われたのよ。動きにくい上に翼が出せない服なんて御免よ!」

 実際、翼が出せないと飛べないからかなり切実な問題なのである。

「いっそ布もらって自分で作ろうかな…」

「作るのか? 普通買うだろ!?」

「だって私、人間のお金持ってないもの」

 本当は布を買うのにもお金が要るだろうし、アレンジやリフォームではなくただの布から服を作るのは初めてだから自信はないけど。

「布とー、糸とー…針は借りられないかなぁ…?」

「だからちょっと…」

「あ」

 布の切り方を考えていた私だったが、一つの気配を感じてぱっと顔を上げて辺りを見回した。

「どうかしたのか?」

「父様の気配が近づいてきてる」

 通路はどう考えても通れるサイズではないため、空かと思い上を見上げる…が、それらしき影はない。父様の気配を間違えることなんてないから、近くにいると思うんだけど…

「リスティアージェ!」

「えっ!?」

 通路を通って走ってきた人が、私を呼びながら中庭に飛び込んできた。

 金色の瞳、一房金髪の混じった銀の髪。簡素な服に身を包んだ男性なんだけど…何故その人から父様の気配!?

「よかった、姿が見えなくなったと聞いて心配したよ」

「父様、なの…?」

 気配は間違いなく父様のものなのだが、いかんせん外見が違いすぎる。

「ああ、変身魔法というものだよ。この姿は窮屈なのだが、人の建物の中を移動するときはこの方が都合がいいからね。リスティアージェが翼をしまっているのと同じ魔法だよ」

「翼…私無意識でしまってたよ」

「ふむ…それなりに難しい魔法なのだが、無意識とは。流石はリスティアージェだ」

 まあ確かに、無意識とか反射とかで魔法を発動させちゃうことはあるけどね。ただあれはどちらかというと未熟者の証明みたいなのだから、褒められるものではないと思うんだけど。

「ところで、部屋からいなくなったと女官が騒いでいたのだが…」

 父様の目が鋭く細められ、アシェンを捉える。

「あ、あのね! 服がね…」

 流石にとばっちりを食わせるわけにはいかない。恥ずかしながらも手早く事情を説明すると、父様は唸って考え込んだ。

「ふむ、人は服装に何らかの規則があるとは聞いていたが、難しいものだな」

「私としては、翼が出せない服はちょっと不安なの」

「なるほど。しかし人間の服か…」

「あの…」

 と、これまで口を閉ざしていたアシェンが口を開いた。

「俺…じゃなくて私が、城下の服屋まで案内しましょうか?」

 父様が再びふむ、と唸る。が、お金がない以上どうしろというのだろうか?

「何度も言うけど、お金持ってないのよ」

「かね、というのはこれのことか?」

 前触れなく父様が差し出した手の中には、金色の貨幣らしきものが数枚。それを目にした何故かアシェンが目を見開いたが、私は気にせずその手の中の金貨を眺める。

「以前セリセラがこれと物を交換していたのだが、違うのか?」

「い、いえ…問題ありません」

 なるほど、これがこの世界のお金か。

「では、少し城下へ行くとするか」

 話をつけてくる、と言って父様は再び建物の中へ。あっけに取られるアシェンを横に、私は弾む心のままににこにこしていた。

 こうして、私たちは城下町へ買い物へ行くこととなった。わーい、父様とお出かけだー!



 ちなみに父様の出した金貨はこの世界の最高額貨幣で、これが二、三枚で一家族が一ヶ月食べていけるくらいの価値があるものだったらしい。


 お気に入りに入れてくださった方、感想くださった方、そして読んでくださる全ての方々へ、本当にありがとうございます。

 誤字報告等、本当にありがたいです。


 今回出てきた金貨は、大体一枚一万円くらいとしております。物価は全体的に日本より安いですが、ラスティーダ国は基本常に魔獣と戦っており、農耕地が少ないため、武器防具と食品を中心として若干高めの物価となっています。

 貨幣は5段階、小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、金貨とあり、それぞれ一円、十円、百円、千円、一万円くらいの価値です。 

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