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8 私の「おなか」

 今は数学の時間。なのに授業に全く集中できない。きっと、後ろから視線を感じるせい。いや、視線を感じてるわけじゃない、きっと私のうしろ姿をじっと見られているっていうだけの、自意識過剰なだけ。


 つい20分ほど前、授業の最初の時間を使って席替えがあった。西尾君は左端の一番後ろ、私はその斜め前。西尾君が黒板を見るには、どうやっても私が視界に入る。たったそれだけなのに、ずっと見られてると思うと恥ずかしくて。


「では、今日はここまで。宿題、ちゃんとやってきてくださいね」


 数学担当で、担任でもある寺田先生はすでに道具をまとめていた。

 いつのまに!? まだ、ノートに日付しか書いてないのに。宿題ってなに?


「どうやらお困りのようね、葉子」

「の、望? どうしてこんなところに?」

「どうしてってあんたの後ろの席でしょうが。あれあれ? 斜め後ろの人ばっかり気にして気づかなかったのかな?」

 図星なので何にもいえない。望は勝ち誇ったような顔でにやりと笑った。


「ふふふ、今日はノート、たくさん書いたな~、宿題も大変そうだし」

「お願いします! なんでもしますからノートを見せてください!」

「なんでも? これで2回目だね」

「あ、そんな……」


 また望にはめられてしまった。ほんとに意地悪なんだから。


「なにがいいかな~ それより、もう1週間になるのにどうしてそんなに緊張してるわけ?」

「なんというか、ずっと見られてるって思うと急に恥ずかしくなって」

「どんだけなのよ。まあいいわ、あかねもいい感じの席にしてくれたみたいだし。2人きりじゃなくて両方に付き添いをつけるとはなかなか考えたわね」

「えっ、どういうこと?」

「そこまで鈍感だったの? 葉子と私、西尾君、それに西尾君の前には佐々木君。この4人が1箇所に固まるなんて、普通はありえないでしょ。席替えのとき先生と一緒にあかねが前に出てることを見てなにかあるな、ってくらい気づきなさいよ」

「新橋さん、そこまで私たちのことを考えててくれたんだ。あとでお礼言わなきゃ」

「やめときなさい、あの人はただ面白くなれとしか思ってないから。このまま1ヶ月たっても何にも面白くないでしょ」

「そ、そうなのか、納得納得」

「ほんとに分かってないんだから……。ほら、見て。佐々木君と西尾君仲いいでしょ。西尾君にとっては唯一の友達みたいだからね。まずは私が佐々木君と話を盛り上げるから、それでたまに話をふったりするからね。佐々木君は話しやすそうだし」


 2人でトイレにでも行ってたのだろうか、楽しそうに話しながら教室に入ってきた。確かに仲がよさそうだ。いつかはあんなふうに、いやそれ以上になれるのだろうか。


 こっち来るよ、どうしよう。って、席があそこなんだから当たり前か。

 落ち着け、私。深呼吸と。


 そのまま2人は席に座った。こういうときは何か話しかけたほうがいいかな。

 そんなことを考えてると、代わりに望が話してくれた。


「西尾君、佐々木君、よろしくね。私は霧島望で、こっちの顔が赤くなってる人が倉橋葉子ね」

 ちょっと、なによその紹介! 余計に赤くなったじゃない。


「よろしくー。俺が佐々木茂に、同じく顔の赤いのが西尾卓也ね」


 西尾君も赤いんだ。ちゃんと意識してくれてるんだね。

 ってそんなことより、早く私もしゃべらないと。


「倉橋葉子、あと2週間で17歳で、趣味は読書、特技は体が柔らかいことです!」


 よし、いいきったよ。これで完璧。

 あれ、どうしてみんな静かになっちゃったの? 教室中から冷たい目で見られてる気がするんだけど……。


「葉子ちゃん、そんなキャラだったの?」

「葉子、あんたってどこまで天然なのよ。普通は……」


 望の話をさえぎるように、西尾君が席を勢いよく立った。


「西尾卓也、あと1ヶ月で17歳。趣味はゲームで特技はタイピングです!」


 西尾君、言っちゃ悪いけど恥ずかしいよ。そんな立ってまでいわなくても。

 あれ、そういえば私もいつの間にか立ってる。まさか、さっきの私ってこんな感じだったの?


「卓也、よくやった。見直したぞ」

「西尾君、なかなかやるね。さすが、葉子のほれた男だね」


 2人とも大笑いだ。何がそんなに面白いの。

 西尾君はゆっくり座った。私も席に着く。


「よくわからないけど、ありがとね」

「いや、葉子さんの誕生日も聞けたし、こっちこそありがと」


 そうだよ、誕生日。私もメモしとかなきゃ。


「いいわね~、2人とも。見てるこっちが甘酸っぱい気分になるわ」

「ほんとにラブラブだねー」


 大笑いしていた2人が、今度は生暖かい目でこっちを見ている。そういえば西尾君とこんなに話したの、告白のとき以来。

 私は耐え切れなくなって、目線をそらした。どうやら西尾君も同じみたい。


「せっかくいい感じだったのにね。それより、早くお弁当食べよ、昼休み終わっちゃう」

「そうだよ、俺腹へって死にそう」


 なんだか、望と佐々木君って妙に息が合ってるよね。うらやましいくらい。

 そういえば、おなかすいた。今日のお弁当はなにかなと、机を探っていたそのときだった。


 ぎゅる、ぐるぐる、ぎゅるるる~。


 私のおなかのおとに本日2度目の沈黙。それを破ったのは2人の笑い声。


「なに、そのおなかの音。どんだけ大きい音なのよ」

「なんか葉子ちゃんのイメージ変わったな~」


 やばいよね、さすがに。いつも多めに朝ごはん食べてならないようにしてたのに、こんな日に限ってなるんだから。絶対嫌われたよ……。

 西尾君はすごくけわしい顔だ。


 ぎゅる。


 あれ、今度は私じゃないよ。ってことはまさか。


「卓也、けわしい顔をしてると思ったら、そんなことを。もう最高!」

「葉子、そんなにもたもたしてると私がうばっちゃうからね」


 2人ともさっき以上の大笑い、やっぱり西尾君だったのか。自分で意識して鳴らせるなんてすごいな。

 西尾君は真っ赤な顔でお弁当をかきこんでいる。


 告白してよかった。私、今すごく楽しいよ。心からそう思うのであった。

結構頑張って書いたんですが、この長さが限界でした。

次は3000字を目指します!

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