6 私の「帰り道」
「えへ、えへへへ……」
私、ついに告白しちゃったんだよね。しかもOKだったよね。西尾君の照れてた顔、なんかよかった。
もう、私ってば、西尾君を家の近くまで送ってからここまで、ずっとそのことばかり考えてるじゃない。調子に乗ると痛い目にあうんだから。
冷静になって周りが見えるようになると、おばさんに白い目で見られていたことに気づいた。思わず苦笑い。
周りに誰もいなくなると考えてしまうのはやっぱり西尾君のこと。さっきから同じことの繰り返し。
「葉子!」
「はい!? ってぬわっ!」
私を呼んだのは望だった。なんでこんなところに? 驚きすぎてみずたまりを踏んでしまった。そういえば西尾君も同じようなことをしてたよね。やだー、おそろいなんて。
「葉子、痛々しいよ。見てるこっちが恥ずかしいから」
なんだか心を読まれてしまったようだ。よく考えてみると、たしかに恥ずかしい。
「ごめん、でも今でもまだ夢みたいで。それより、なんで望がここにいるの?」
「それは尾行してきたからに決まってるでしょ。他の人も結構ついてきてたけど、やっぱり葉子は気づいてなかったか」
尾行してた、ってことは今までのを全部見られてたってこと?
「えぇ!なにしてるのよ。他の人はどこにいったの?」
「西尾君の家の前まで来たら帰っていったよ。みんなもいたらよかったのにね、とってもおもしろかった」
それなら少し安心。どっちかというとそれからのほうが恥ずかしいことをしていたと思う。
「そんなことより葉子、あんたどこに行こうとしてるの。家、真逆でしょ」
「あれ、そうだっけ? 考え事してたからよくわかんなくて」
「やっぱり。私がいなかったらどうするつもりだったのよ。この辺には知り合いもいないでしょ」
「うぅ……、ごめんなさい」
「はいはい、帰りますよ」
「でね、西尾君ったらみずたまりに足を突っ込んじゃってね」
夕日がまぶしい。あたりはようやく見慣れた景色になってきた。どうやら私は相当遠くまで行ってたらしい。
「葉子、うれしいのはわかるけど、もうその話4回目だから」
「てへっ」
「うぐっ……、その笑顔は反則。それにしても、西尾君の女嫌いは相当のようね。恋人になったのに手もつながないなんて」
「いや、まだ1日目だから、そんなもんなんじゃないの?」
「あんた本当にそういうことは知らないのね。もう高校生なんだからそれくらいは当たり前よ」
「えぇ!手をつなぐなんて恥ずかしいよ」
「そんなんじゃ女嫌いは直せないよ!葉子からぐいぐい行くくらいの気持ちでなきゃ」
「うぅっ… 私そんなことできないよ」
「びしっとしなさいよ!」
背中を思いっきりたたかれた。絶対あとがついてるよ。
「痛いって、わかったから、わかったから……」
だめ、こんなことで泣くような泣き虫なんて、嫌われちゃうよ。あー、そう思うと余計に涙が。
「もう、すぐに泣くんだから。応援するから頑張りなさいよ! あ、そうだ」
というと、望は携帯を取り出し、私にむけると、
「はい、チーズ」
なんていって写真を撮っている。
「ちょっと、その写真どうするのよ」
「西尾君に送るだけだけど。『西尾君のせいで泣いちゃった』とか書いて送ったらどんな反応するか、楽しみ」
望の顔が恐ろしいことになっている。薄暗くなってきたせいで余計に怖い。
「やめてー!なんでもするからそれだけはやめて!」
「なんでも、っていったわね。その言葉、覚えといてね」
望の顔がさらに怖くなる。言ってはいけないことを言ってしまったみたい。どうしよう。