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2 私の「好きな人」

「葉子さんのことが好きです。俺と付き合ってください」

 目の前には頭を下げる佐々木君。


「ごめんなさい、私には他に好きな人がいるので」


 こういって断るのは何回目だろう。佐々木君は1度私の顔をじっとみたあと、走っていってしまった。

「あぁー、行っちゃった。あれが西尾君だったらなんて思ってるんでしょ?」

 霧島望がそっとささやく。こうやって人をからかうのが楽しいみたい。それでも望は私の一番の友達。私が西尾君が好きだってことを話したのも望だけ。さんざんありえないとか、気持ち悪いとか言われたけど。


「いいでしょ、そんなの私の勝手よ」

「いまからでも遅くないから、やめたほうがいいって。なんで西尾君なの?」

「なんでって言われてもね」


 自分でもなんでなのかわからない。気がついたら好きになってた、そんな感じ。


「まあ、いいけど。でもさ、西尾君って相当の女嫌いなんでしょ?」

「うん、知ってる。だけどいいの、こうやって思ってるだけで幸せだから」

 顔が赤くなるのが自分でもわかった。こんな恥ずかしいことをさらっと言えるんだ。


「やっぱり、葉子ってかわってる、そんなに美人なのにもったいないな」


 そういうと葉子は自分の席に戻った。私も席につく。

 みんなは西尾君のことを悪く言うけど、ほんとはいい人だと思うのにな。


 ぶつぶつ言っていると、教壇に新橋あかねが立った。ちなみにこのクラスの裏番長。

 今は放課後、教室にはクラスの女子全員。なんでみんな集まっているのか、すべては裏番長の呼びかけ。逆らうと大変なことになるんだって、望が言ってた。でも、なんで集められたかは謎だ。


「おーし、みんないるか?今日集まってもらったのはな……」

 女とは思えない迫力。何か黒板に書いているようだ。


「西尾に告白大作戦!?」

 クラスの何人かが声をあげる。私もその1人。


「最近、ぱっとしたことがなくてみんなつまんねーだろ。そこでだ!あの西尾に告白して付き合ったらどうなるかっていうのはおもしろくないか?いまからこのくじを引いてもらう。1本だけある赤を引いたやつが明日の放課後告白してもらうからな」


 クラスのみんながざわつく。私は何がなんだかわからなかった。

「よーし、じゃあまずわしから」

 自分をわしと呼ぶのか…… なんて考えてる余裕はなかった。西尾君が誰かと付き合う、そう思うと胸が痛む気がした。


「よし、はずれだ!みんなどんどん引いていけ」

 みんなはずれればいいんだ。そうすれば西尾君は誰のものにもならない。


「倉橋、お前のばんだ。早く引け」

 気づけば私の番になっていた。手作り感たっぷりの割り箸のたば、にやっと笑うあかね。こんなことで告白することになるわけにはいけない。私もどうにかしてはずれをひかないと。


「ふんじゃらめったらほんじゃらほーい!」

 これはうちに代々伝わるおまじない。大声で言ったからちょっと恥ずかしいけど、これで大丈夫。

 ほら、私の引いた割り箸にはなんにも書いてない


「倉橋ってそんなやつだったか? ちょっと貸して、おぉ!大当たり!」

 あかねは箸の先端を私にむけた。あれ、なんで先だけ赤いの?

「んじゃ倉橋、明日の放課後、靴箱のところで西尾に告白だぞ。あいつはわしが呼び出しておくから。ネタバラシは1ヶ月後だからそれまで絶対に言うんじゃないぞ。うひゃー、倉橋だなんて西尾も幸せもんだな」


 私が西尾君に告白、いつかはしてみたいと思ってたけど、こんな罰ゲームみたいなことでやるなんて最低だよね、私。 どうしたらいいの……


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