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17 僕は「早起き」

「財布に携帯と、よし大丈夫。それじゃいってきます」


 扉を開けると照りつける日差し、今日は久しぶりにいい天気。いよいよ今日は映画の日だ。



 興奮して5時には起きてしまった。なんてったって、休日に出かけるなんて何年ぶりか覚えてないくらい久しぶりのことだから。

 何を着ていくかはなかなか決められなかった。持っている服のほとんどはサイズが小さくなってしまったものばかりだったから。結局、少し暑いけど紺色のズボンと、薄い水色にイルカの絵が描いてあるTシャツにすることにした。これならそんなに目立たないし、そこまでおかしくもないだろう。

 ほこりのかぶっていたナップサックに折り畳み傘を入れて、簡単に寝癖を直すところまでやってもまだ7時過ぎだった。集合は駅前に8時、それから30分テレビを見て時間をつぶしてようやく出発した。


 もうすっかり夏の日差しで、少し歩いただけで汗ばんできた。葉子さんに臭いなんていわれたらどうしよう。消臭スプレーでも持ってきとけばよかった。

 駅まではゆっくり歩いても20分ほどでつくのだが、緊張と興奮で自然と早歩きになる。


 あと20メートルほどになって携帯を見てみると、まだ10分しかたっていなかった。小学生みたいな自分が少し恥ずかしくなる。


 誰もきてるはずないよな、一応あたりを見回してみたけどやっぱり誰もいない。僕は駅舎の影で待つことにした。


 ふと、1人の女性が目に入った。僕よりも高い身長、透き通った白い肌、肩まである黒い髪、細くて、長い手足。そしてなにより、横顔でもわかるぱっちりとした大きな瞳。まるでモデルのような美人である。

 全身に寒気がはしる。顔から血の気が引いていく。手の震えがとまらない。僕の、ちょうど2年前の記憶。絶対に思い出したくないあの記憶の中の、あの人に驚くほど似ていた。

 

 その女性はこちらを見ることもなく、早足で改札を抜けていった。


 なんで奈美がこんなところに。いや、違う。人違いに決まっている。さっきの人のことなんて忘れてしまえ。


 僕は自分自身に必死にそう言い聞かせた。そうしていないと意識を保っていることができなかった。

 額の玉のような汗を手でぬぐうと、一度大きく深呼吸。今日はせっかく葉子さんと映画を見るんだから、楽しまないと。


 携帯をみるともう55分だった。そろそろみんなの来るころだ。平常心、平常心。今日はまだ誰にもあっていない。そうだ。



「あら西尾君、早いわね」

「西尾君おはよう」


 霧島さんと葉子さんだ。2人をみると少しだけど安心した。今は自分の居場所がある、長くは続かなくても楽しい場所が。


「2人とも、おはよう」


 さっきまでのことがばれないように精一杯の笑顔を作った。僕のせいで今日1日を台無しにするわけにはいかないから。

奈美って人は相当な美人のようです。

卓也と何があったのでしょうか?

この先もお楽しみに!

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