14 私「頑張る」
サブタイトルがもうめちゃくちゃです……。
「ほらほら、西尾君よ」
望に言われて窓から下を見ると、登校途中の西尾君がいた。
「はぁ……、どうしよう」
「そんなに気にするなって。卓也も自分のせいだって言ってたから」
佐々木君も励ましてくれる。でも私の心は晴れなかった。
「おそいわね、西尾君」
「そういえばそうだね、どうしたんだろう」
ここまで来るのにゆっくり歩いても5分とかからないはずなのに、もう10分以上かかっている。さすがに不安になってくる。
「西尾君、かわいいから他の子につかまってるのかもよ。それとも葉子のことが好きだった男子にぼこぼこにされてるのかも」
「えっ、うそ! そんな」
「様子を見てきたら? あぁ、西尾君は今頃……」
望は人を弄って楽しんでいるような笑顔だった。またやられたと思いながらも、私は様子を見に行くことにした。
教室の出口に立ち、扉を開けた。そこには誰かが立っている。足元に下がっていた目線を上げていく。
お腹の辺りまで目線を上げたところで、私は誰が立っているか理解した。どうしたらいいの、まず謝らなくちゃ。だけど自分の思ったように声が出ない。
西尾君の口が動く、だけど私は何を言ったのかわからなかった。
気がつくと私は教室を飛び出して走っていた。そこでやっと、西尾君のさっきの言葉が『おはよう』だったとわかった。
飛び出したのはいいけど、どこにも行く場所のなかった私は、校舎をひとまわりしてから教室の前まで戻ってきた。
西尾君は普通に接してくれたのに、私は……。やっぱりちゃんと謝らないと。
扉をそっとあけ、教室に入る。私に最初に気づいたのは望だった。
「ふふふ、西尾君らしいわね。まあ、いいわ。あ、おかえり葉子。お腹は大丈夫?」
「お腹? ひっ、はい、大丈夫です」
お腹ってなにって、一瞬思ったけど、望の視線には勝てなかった。
「西尾君ったら、昨日は血圧が上がってあんなになっちゃったんだって。そんなに愛してもらってうらやましい」
「迷惑かけてすみません」
「えっ、そうだったの。私こそ強引にやりすぎでした、ごめんなさい」
悪いのは私なのに。もっとちゃんと謝らないといけないとに。そんな気持ちを言葉にできなず、悔しい気持ちでいっぱいになった。
「卓也もわかんないのか、葉子ちゃん、きてきて」
ぼーっとしていた私は、数学の宿題をやっているということがわかるまで時間がかかった。
「えっ、私? まず、こことここをひっくり返すんだよ」
そのとき、私と西尾君の指がちょっとだけ当たった。西尾君の顔はすこしだけ赤くなると、すぐに元に戻って、少しだけ不機嫌そうな顔になった。
「さすが葉子さん、後は任せたよ」
「えっ…… うん」
やっぱり嫌われちゃったんだね。私みたいな自分のことしか考えないで行動するやつなんか、嫌われて当たり前だよね。
外を眺める西尾君が、なんだか急に遠い存在に見えた。
1時間目の数学が終わり、2時間目は男子が水泳、女子は自習となった。
自習といっても特に課題があるわけでもないので、みんな席を移動して世間話に花を咲かせている。
私は気がつくと、誰もいない西尾君の席を眺めていた。そこに、ひょいと望が座った。
「葉子、いつまで落ち込んでるのよ。そんなだと、西尾君が余計に話しかけづらくなるでしょ」
「もうだめだよ、私は嫌われちゃったんだよ。避けられてるんだよ」
「確かにあれは露骨に嫌がってたわよね。でもみたでしょ? 一瞬だけ西尾君の顔が赤くなったの」
「そういえば、そうだったね」
「本当に嫌われてるわけじゃないのよ、だけど何か何か理由があって避けてる。きっと昨日のことがあったばかりだからよ」
「ほんとに、そうなのかな」
「そうよ! 私が言うんだから間違いないわ。私に任せときなさいって言ったでしょ、いい案考えてきたから。今週の日曜、空いてるでしょ?」
「空いてるけど……」
こういう強気の望はなんだか怖いけど、今はそんなこと言ってられない。
「私、頑張るよ!」
突然立って大声を上げた私に、クラス中から生暖かい目線を感じた。