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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第三章 シングル発売記念イベント・ソロユニット活動 編

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第3話 炎上しない! 正しい百合営業講座

「じゃあさっそく始めるで~」


 シオがホワイトボードにお題を書きだす。


『炎上しない! 正しい百合営業講座』


「営業か~い!」


 シオの書いたホワイドボードの文字を見て、ついツッコんでしまった。

 百合営業って! まあちゃんと仕事の話で安心したと言えばしたけれども。


「なんやの~? ファンが求めているのはガチ百合やない。きれいな百合営業や。それを正しく学んで、ほしいものを提供する。これがアイドルとしての正解やで?」


「ぐぬぬ正論! シオセンセがまともすぎて反論できない。……大変すみませんでした!」


 ボクは静かに席に座った。

 シオが自信ありげなので、ボクはおとなしくしていようかな。


 うわー、ウーミーが最前列でめちゃくちゃメモ取っている……。やる気がすごすぎますわー。


「じゃあ始めるで。まずは教科書の目次をご覧ください」


 え、教科書⁉……教科書って……これか。


『サルでもわかる! 正しい百合営業(マンガ版):三井栞 著』


 ガチで出版していらっしゃったか……。

 自費出版かなと思ったら、わりとメジャーな出版社から出てるじゃん。発行が2年前で第5版って……。わりとちゃんと売れてるやないかいっ!


 とまあ、声に出せないので脳内ツッコミはこれくらいにするとして、ちゃんと目次を見るか。


------------

第0章.はじめに

第1章.ファンが求めているのはソフト百合!

第2章.グループ内に百合営業カップルは1組までとする

第3章.最初にすることはプライベートデート

第4章.SNSでの匂わせ投稿は多すぎず少なすぎず

第5章.2人だけの空気感を認知され始めたら勝ち確

第6章.受け攻めはある程度方向を意識する程度で良い

第7章.しばらくしたらライバルの強キャラを投入しよう

第8章.まとめ

------------


 ふむ。

 目次を見る限りだと、「なんかちゃんとした自己啓発本みたいだなあ」という感想しか出てこない。


 いや、ウーミーさんよ。目次だけ見てもメモ取るところないでしょ……。


「まずは全員、『第0章.はじめに』を黙読するんや。終わったら、自分が世界で一番かわいいと思うキメ顔をして待機!」


 はあ……。キメ顔ですか。


「カエちん、なんやその反抗的な顔は! 今日は悪い生徒やな!」


「世界で一番かわいいキメ顔ってなんですか……」


 ボクは深くため息をつきながら聞いた。

 いや、これは反抗的とかではなくて、普通に意味わからなくて聞くでしょ。


「毎夜毎夜、鏡の前で練習しとるあの顔や!」


「あの顔って言われても……そんなの練習してないんですけど……」


「アイドルたるもの、準備100%、本番120%や! 練習もせんで本番でキメ顔ができるかいな」


「すみません……。でもボクはアイドルじゃないので……」


「マネージャーなら、アイドルのためにキメ顔の1つも練習せんかいっ! アドバイス求められた時どうするんや! だんまりか? 仕事なめとんのか? おおん?」


「す、すみませんでした……。今夜から練習します……」


 シオセンセ怖い。

 でもそうか。アイドルが詰まりそうなところはすべて先回りして学習しておかないとマネージャー失格かもしれない……。

 キメ顔かあ。むずかしいなあ。ボク、みんなみたいにかわいくないからなあ……。


「お、それやそれ! カエちんもかわいい顔できるやないか!」


 え、ボクなんかやっちゃいました? 素の表情をほめられると、それはそれでマジ恥ずかしいんですけど……。 


「あ、その恥じらいもええやん。カエちんかわいいやん! やればできる子やな! ええでええで~。もっと見せて~な。その表情もええな~。ほな、ちょっと1個目のボタン外して前かがみになってみようか! 大丈夫、きれいに撮ったるから任せてみ~な」


「それはエッチなカメラマンのやつだから!」


 うーん、関西人のノリは軽いなあ。


「冗談はさておきや。カエちん1人だけ遅れるで~。海さんなんてもう読み終えてキメ顔してはるで」


 シオがウーミーのほうをあごでしゃくる。


 どれどれ。

 こ、これは悪役令嬢顔!

 ウーミーはそっち方面なのかあ。てっきりセクシーポーズかと思ってたのに。


(エッチなのはソフト百合ではないのでダメだと思います)


 はい……。


(かえでくんは耳かきをした後の顔をキメ顔にしてはどうでしょうか)


 え、どんな顔だっけ? 耳かきの時そんな良い顔してる?

 意識してなさ過ぎて自分がどんな顔をしているかわからない。


(これです)


 レイからメッセで写真が送られてくる。

 

 いや、これは……人に見られちゃいけない顔してるでしょ! 早く消して!


(わたしの宝物なのでダメですよぅ。なくしたら困りますから、永久に残るように、SNSの固定投稿にしておきましょう)


 冗談でも怖いわ。

 そんなこと言うなら、レイのキメ顔はこれね。


 ボクも負けじととっておきの写真をレイに送りつける。


(いつ……こんなものを撮ったんですか……)


 ふふふ、驚いているな。

 レイが膝枕で頭を撫でてくれている時の顔。果てしないバブみを感じる……。


(かえでくんはこういうのが好きなんですね)


 好きか嫌いかで言えば、まあ、癒されるので……はい、とても好きですね。

 レイの隠し撮りコレクションはほかにもいっぱいありますけどね。


「こら~カエちん! さっさと第0章読まんかいっ!」


「あ、はい、すみません! すぐに読みます!」


 あー怒られた……。

 はいはい、0章ね。えっと、なになに?


『今から百合営業を始めようと思ってこの本を開いたあなた。百合営業に向いていないので、すぐに本を閉じてベッドに寝ころんでBLマンガでも読んでなさい』


 いきなりケンカ売ってくるなあ。

 まあ、百合営業を始めようと思って本を開いたわけじゃないから、ボクは閉じなくても良いよね?


『周りから百合認定をされてどうしたら良いか困っているあなた。事務所から売り方の方向性について圧力をかけられているあなた。そんなあなたの力になるためにこの本はあります』


 ふむ。今回の『#海桜』の流れはこれか。良いんじゃないのかな。

 しかし、事務所に圧力をかけられることなんてあるんだ? 百合営業しろって? それはそれでやばいな……。


『あなたがすでにアイドルとしてデビューしているなら2ページ目へ進む。あなたがこれからアイドルを目指しているアイドルの卵なら89ページへ進む』


 ゲームブックか!

 ページに分岐があって、指定されたページに飛んで物語が進む古の遊びだって聞いたことあるわ!

 え、これそういう本なの、これ?


 とりあえず89ページ見てみるか。


『まだアイドルになっていないあなたが百合営業について勉強するのは早いです。先にこちらの本を読んでアイドルとしてデビューしましょう』


「アイドルとしてデビューするまでにすべき100のコト(マンガ版):三井栞 著」って、他の本の宣伝かいっ!

 シオセンセ、書籍のコミック化を手がけすぎぃ。


 仕方ないから、戻って2ページ目に進むか。


『すでにアイドルとして活動をしていて、百合営業について悩んでいるあなた。そんなあなたに伝えたいことがあります。まずは目を閉じて深呼吸し、≪自分が世界で一番かわいいと思うキメ顔≫をして鏡を見てみましょう』


 え、キメ顔⁉ これ本の中に書いてあることだったの⁉

 イラストめっちゃ悪い顔してるけど、キメ顔って、もっとキャピッ☆みたいなかわいい系じゃないの?

 キメ顔……奥が深いな。

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