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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第50話 レイの答え

「今日のステージ、もし、わたくしのわがままを聞いてくださるなら……零さんに代わりを務めていただきたいのです」


 ウーミーの懇願に、その場の誰もが一言も発することなく沈黙を保った。


 これはレイが決める問題だ。

 レイはどうしたい?


「わたしは……」


 レイが口を開く。が、続く言葉が出てこない。


 再び沈黙がその場を支配する。


 レイは今何を思っているのだろう。

 ウーミーのことか、ファンのことか、他のメンバーのことか。


 ボクだったら、正直引き受けるのは怖い。

 たしかにボクたちは10人で力を合わせて準備をしてきたけれど、スポフェスの舞台に立つための準備をしてきたのは≪初夏≫の5人であって、ボクたちマネージャーではない。

 1万人の観客の前でパフォーマンスをする。その心構えはできていないのだから。


 あと数時間後に舞台に立て。しかもデビューイベントという特別な舞台だ。ここでしくじったらこれまでの準備とこれからの未来が消えてなくなるかもしれないぞ。

 でもここで断って出なかったら――。


 ウーミーの気持ちは尊重したい。

 でも、レイはまだ人前に立つのは……。


 ここはやはりボクが行くしか……。


「レイ、ボクは――」


「かえでくん、待ってください」


 レイがボクの言葉を制止する。


「わたしは舞台に立ちたいと思います」


「レイ!」


 張りつめていた空気が、一気に弛緩するのを感じる。


 それで良いの? それしか選択肢がないから無理に引き受けて、もし満足の行くような結果を出せないとしたら、1番後悔するのはレイ自身なんだよ。


「わたしはうみ先輩の代わりに舞台に立ちます」


「零さん……本当に……ありがとうございます……ですわ」


 ウーミーのすすり泣く声が、端末のスピーカーを通してとぎれとぎれに聞こえてくる。安堵、希望、後悔、無念、様々な感情が渦巻いているのだろう。


「レイさん、ありがとう。私から、私たちからも感謝を。とてもとても無理を言っていることは重々承知している……でも、私たちにはレイさんの力が必要なの」


 ハルルがレイの手を取り、すがるように言った。


「零。本当に良いのね? 撤回するなら今だけは許されるわ。誰もあなたを責めたりはしない。でも、この後動き出してからでは遅い。だからもう一度確認させてちょうだい。本当に舞台に立つ覚悟はあるのね?」


 花さんが言う。

 この場の雰囲気に流されて安請け合いされては困る、と。

 ここで引き受けるには大きな覚悟が必要で、その後耐え難いプレッシャーを背負って行動しなければならないのだから。


 それって期待が大きすぎるよ……。


「はい、大丈夫です。ここで引き受けることの意味は理解しています。わたしがやります」


 レイの目に不安の色はなかった。

 すでに覚悟が決まっている。


 何が彼女をここまで変えたのだろうか。

 レイとウーミーの間に何があったのかは、ボクにはわからない。


「わかったわ。練習の時間を作りましょう。場所は私が何とかするのでそれまでは打ち合わせを。そろそろ桜も合流させて」


「はい、私が呼んできます!」


 都が楽屋に向かって走り出す。

 続いて花さんもどこかに電話をしながらその場を後にした。



「さて、フォーメーションの確認はあとでやるとして、個人の振りを確認しようか?」


 できるだけ明るく、これからのことに不安などないように前向きに。


「はい、振りつけの確認をお願いします。音楽もらっても良いですか?」


「あーしが。音、流すで」


 ナギチの端末からサツマイモラブが流れ出し、レイが合わせて踊りだす。

 

 振りは入っている。

 でも動きが硬いな。


 単に緊張してるだけなのか。何度か踊れば硬さはとれるのか?


「レイ、さすがだ。振りはちゃんと入っているね。大丈夫。でも、その、もう少しやわらかく踊れるほうがいいな。緊張するなっていうのは無理だとは思うけど……」


「はい、もう一度お願いします」


 そう言ってポジションを取るレイの表情は硬いまま。



 何度か通しで踊ってみたけれど、硬さが取れてくることはなかった。


 なかなか厳しい状況だ。

 サクにゃんと絡めばこの曲特有の遊びの部分が出て、硬さが取れてくるかもしれないな。

 それに賭けるしかないか……。


「わたしは少し席を外します。さくらさんが戻ってくる前に準備したいことがあります」


「準備?」


「しばらくお時間をいただけると助かります」


 レイが深々と頭を下げた。


「あ~レイちゃん! 私も一緒に行きますよ~」


 メイメイが急に大声を出した。

 何事?

 レイは心の準備とかきっとそういうのだから、まずは1人の時間を取ってあげたほうが良いから、ここはおとなしくみんなと一緒に待っていよう?


「そうですね、さつきさんも一緒にお願いします」


 え⁉

 一緒に準備するの⁉


「カエくん、大丈夫ですよ~。私がレイちゃんの準備をお手伝いしますから、カエくんはここで休憩でもしててください~」


 メイメイが自信ありげな様子で微笑んでいる。

 この状況で笑えるのか……。任せて良いのかな……。


「うん、じゃあ、ナギチの特訓でもして待ってるよ!」


「あーしの⁉ もう本番直前やで!」


「レイの足を引っ張らないでほしいからね!」


「おうおう、言うてくれますなあ。いっちょやったろうじゃないかい!」


 ナギチが腕まくりしてポジションにつく。


「ミュージックカモーン!」


 ナギチが鼻息荒く踊りだす。


「レイ、メイメイ、いってらっしゃい」


 ナギチのダンスを見つつ、2人を送り出す。

 ナギチ……うん……まあまあだね。まあ、新人だからこれからがんばれば大丈夫だよ……。


 それにしても2人でする準備っていったい……。

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