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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第48話 会場に5時入り!

 スポフェス当日。

 出演者の朝は早い。今は朝の5時だ。自宅組は前日から事務所ビルに泊まり込みだった。


 出番は11:50ですよね⁉

 もっとゆっくりで良いじゃん……と思いきや、我々にはやらなければいけないことがたくさんあるのです。


 会場の下見、機材チェック、リハ、そしてアイサツ回り。そしてアイサツ回り!

 新人にとって一番大切なのはアイサツ回りと言っても過言ではない(当社調べ)


 まあ、今回は同じ事務所の人しかいないから、そういう意味では気が楽。たとえ粗相をしたところで身内なら問題ない……なんてことがあるわけじゃないの! そういうところからちゃんとしないといざという時できないんだよね!

 あー緊張してきた!

 どうやってアイサツしたら失礼に当たらないんだろう。

 そもそも全員で行く? 10人って多くない? マネージャー減らす? あーわからない!


「楓、ちょっと落ち着きなさい? アライグマみたいにうろうろしないの」


 花さんが狭い楽屋の一番奥のパイプ椅子に腰を下ろして、かりんとうを食べていた。さすがベテラン社員は落ち着いてらっしゃいますなあ。


「アライグマカエデええやん」


 シオが何やら端末をシャカシャカ動かし始める。

 あーあ、次のメイプルちゃんはアライグマにさせられるんだなあ。


「アライグマは昔のアニメの影響で人気になったみたいですけど、畑を荒らしたりして実は困った子なんですよ~」


 メイメイが眉間にしわを寄せて唸り声をあげる。

 え、そんなに深刻な問題なんだ? まあそうか。農家の人からしたら畑荒らしはかわいくはない生き物なんだね。


「アライグマカエデも困った子だから同じやな」


 えっ。

 ボクも害獣と同レベルですか⁉


「うそやん。ジョークやジョーク。そんな顔しなさんなって。そや、アライグマカエデがウナギを盗んだお詫びに、どんぐりやきのこを毎日届ける話にしたろ」


「それはごんぎつねですね」


「はいはい、休憩はそろそろ終わりにして、リハいくわよ。他の出演者が集まる前じゃないと時間取れないからね」


 花さんの号令で、みんな一斉に席を立つ。

 よーし、会場はどんなもんですかねー。



* * *


「体育館とっても広いです~」


 会場に入ると、一面ピカピカのフローリングがお出迎えしてくれた。

 ホント広いね。思ったよりもずっと広い。学校の体育館の何倍あるんだろ。


 目線を上げて会場全体を見渡してみる。

 なるほど、観客のキャパが1万人かあ。この席、全部埋まるんだ。事務所の力すごいなあ。

 そして、ここでみんなは踊るのかあ。


「これから真ん中よりもちょっと東よりの、あのあたりのスペースにステージを組んでもらって、そこで前座のパフォーマンスをすることになるわ」


 花さんが指さして教えてくれる。


「他の先輩アイドルさんたちもパフォーマンスの予定がありますよね⁉」


 ハルルが本日のスケジュールをチェックしながら言う。

 やっぱり見たいのかな?


「そうね、ステージは2か所用意されるわ。東側と西側に1つずつ。運動会中は紅白の応援団が旗を振ったりする場所ね」


「あーしたちも応援団参加できたりするんやろか」


「今回のあなたたちの出演時間は前座の8分間だけよ。新人はそれが終わったら速やかに撤収」


「残って運動会を見ていったりなどは……」


「チケットが取れているならご自由に席でどうぞ」


「しょんぼり」


 わかりやすく落ち込むハルル。

 先輩たちの活躍、見たかったよね。

 ハルル、来年は運動会にも出られるようにブレイクしようぜ!


「ところで、シオとウタの姿が見えないんだけど……それとサクにゃんもいないかな?」


「楓、聞いていなかったの? 栞と詩は会場セッティングの打ち合わせに出ているわ。あの2人は今回の運動会のほうのスタッフも兼ねてるから、あいさつ回りやみんなのマネジメントは私、零、楓の3人でやるのよ!」


 マジかー。3人になると途端に淋しいなあ。


(かえでくん、がんばりましょう)


 なぜ隣にいるのに念話を?


(人が多くて緊張します)


 う、うん。ムキムキマッチョのお兄さんたちが会場セッティングしている状態は、レイには刺激がありすぎるか……。


「で、サクにゃんは?」


「お手洗いに行かれましたわ。ずいぶん青い顔をなさってましたから、車酔いでしょうか」


 ウーミーそういうことは早く言ってよー。薬が必要なら早めに飲ませてあげないと!


「ボクちょっと楽屋に戻って薬とってきます」


 とにかく急ごう。

 楽屋へ戻ろうとして出入り口のほうに向きなおると、そこにはサクにゃんが立っていた。若干フラフラしている。


「あ、コーチ。サクラなら大丈夫です……」


「全然大丈夫そうじゃないんだけど……車酔いなら今からでも」


「いいえ、ちょっと緊張で寝不足なだけで……」


 ハハハ、と乾いた笑いを浮かべるサクにゃんの目元には深い隈が刻まれていた。

 これからステージなのにその顔は大丈夫じゃないよ……。


「それならやっぱりちょっと酔い止めを飲んで、しばらく楽屋で横になったほうがいいよ」


「桜さん、無理はダメよ。楓の言う通り少しでも良いから仮眠しましょう?」


 都の援護射撃。

 このままの状態でステージに上げたら、それこそケガをしかねない。


「桜、私からもしばらく休むことを強くおすすめするわ。はい、他の4人はリハするから、仮設のステージに上がって。ちょっとだけ音も流してもらうから感じつかんでおいて」


 花さんが指示を出す。

 ムキムキマッチョメンたちの仕事は早い。もう仮設だけどステージが出来上がっていた。

 リハは他のみんなに任せて、ボクはサクにゃんの肩を抱いて、会場を後にした。



* * *


 楽屋につく。

 サクにゃんに酔い止めの薬を飲ませておいて、ボクはイスを片付けたりして寝るスペースを確保する。


「サクラ……ホントにダメですね。みんなに迷惑かけてばかりで」


 サクにゃんの頬を一筋の涙が伝っていた。


「まだ始まってもいないのに何を言ってるの? 本番で失敗しないために、今はあれこれ考えずに休もうね。酔い止め飲めば少し眠くなる成分も入ってるはずだから大丈夫だよ」


 努めて明るく、問題なんて何もないって顔をしてサクにゃんを励ます。

 まだ本番まではかなり時間がある。

 今から数時間寝られればなんてことはない笑い話に変えられるはずさ。


(かえでくん、トラブルが)


 え、今度は何⁉


(うみ先輩が足を痛めてしまったようです)


 ウーミー⁉

 昨日医務室で診てもらったときは大丈夫だったのに⁉


(ステージ上でバランスを崩してしまって、どうやらねんざのようです。今から医務室に運びます)


 お願い……。ひとまずサクにゃんには秘密にしよう。サクにゃんは休ませないと。


(わかりました。そちらはよろしくお願いします)


 OK。そっちはお願いね。


「コーチ、急に立ち止まったりしてどうかしましたか?」


「ううん、何も? 今日のステージ楽しみだなーって。サクにゃんのセンター初披露だもんね」


「コーチがそんなに楽しみにしてくださっているなんて……。サクラ、ちゃんとパフォーマンスできるように仮眠取りますね」


 サクにゃんは少し弱弱しく笑った。

 ひとまずサクにゃんには何とか復活してもらわないと……。ウーミーのケガの具合が気になる。

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