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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第35話 いよいよ生配信

 さて、今日は9月9日。

 待ちに待った初の生配信枠の日だ。

 デビュー告知日に生配信枠の告知もされていたし、各自のSNSでも宣伝はしている。たくさん人が集まると良いなあ。目標は100人……200人……1000人!


「初回配信は限定チャレンジ禁止なんだよね」


 ダブルウェーブ事務所の慣例で、アイドルがデビューした初回の生配信は、事前に応募フォームで募集したメンバーへの質問に答えていく形式と決まっている。

 いわゆる自己紹介回だ。


「事務所の決まりだから仕方ないわ。最初は王道。きちんと≪The Beginning of Summer≫のみんなを知ってもらってから活動をスタートしましょう」


 都が言うことはもっともだ。

 自己紹介動画を出しているとはいえ、生配信でそれぞれの口から自分を語るのとではぜんぜん重みが違う。

 質問に対してどんな間合いで、どんな息遣いで答えるのか。考えてきた答えを即答するのか、その場で悩むのか、まじめに答えるのか、ちょっとふざけるのか、アドリブは得意なのか、きちんと台本を読むのが得意なのか。ファンは加工されていない生の情報をいろいろ知りたいのだ。

 そしてちょっとしたことでも好きになるし、嫌いにもなる……。


「あと30分で配信開始だから、そろそろスタンバイしたいところだけど、≪初夏≫のみんなはどこ行った?」


「5人だけで打ち合わせをしたいそうで、別室にこもってるようです」


 レイが答える。

 5人だけで打ち合わせ? ボクたちがいたらまずい話なんてあるのかな。まあ、集中したいっていうのはわかるけれど。


「≪初夏≫って呼び方ええやんな。ちょっと流行らせたいわ~」


 シオが食いついてきた。

 自然と昔の呼び方で呼んでしまったけれど、日本語に訳しただけだからまあ別に違和感はないよね。


「≪The Beginning of Summer≫はかっこいいけれど、たしかに少し長いわね。≪初夏≫のほうがかわいらしくて私は好きよ」


 ウタがストップウォッチをカチカチさせながら言う。


「ところでさー。ボクたちって、≪初夏≫にあわせて毎回この衣装着るの?」


 周りで動くスタッフなのに、スカート短いしちょっと恥ずかしいんだよね。


「わたしはこの衣装気に入ってますよぅ。誰かに見られるわけでもないので、かわいい衣装を堂々と着られてうれしいです」


 そうね。かわいい衣装なのは認める!

 ダブルウェーブ事務所の女性アイドル部門は女性スタッフしかいないから、変にジロジロ見てくる人もいないし、そこはたしかに……じゃあ別に良いのかな。

 うーん、かわいいし、いっか!


「アイドルでもないのにこんなにかわいい衣装を支給してくれて感謝しかないわ」


「うちは資料用にいろいろと……むふふ」


 いやー、またシオセンセの悪だくみが始まっちゃったわー。



「お待たせしました!≪The Beginning of Summer≫入りますっ!」


 ハルルを先頭に≪初夏≫の5人がスタジオに入ってくる。

 肩に力が入っている様子。気合入っているなあ。


「春さん、気負いすぎよ。眉間にしわが寄ってるわ。笑顔笑顔!」


 都がニコニコしながらハルルの肩を揉む。


「そやで~。ライブやないし、半分オフくらいのつもりの顔で臨まんと、視聴者が引いてまうで~。桜さんも緊張しすぎや。耳がグルングルンなっててうち的にはおもろいけどな」


「うう~。吐きそうです……」


 サクにゃんが青い顔をしている。

 こんなに緊張しいだったっけかな?


「サクにゃんは繊細やな~。あーしは普段通り一発ギャグをかましたるで」


「渚さん、その左右の手足が同時に出ているのが一発ギャグなんですの? あまりおもしろくは……」


「ちがうわい!」


 もうすぐ本番なのにわちゃわちゃだなあ。

 まあ、これでいて何とかなるとは思うから、そこまで心配はしていないけれど。


「カエくん! 私、今日の配信で伝説を作ります!」


「メイメイは別の意味で、一度落ち着こう?」


 メイメイは気合が空回りするタイプだから、なるべく自然体でいつも通りに臨んでほしい……。


「今日の配信でフォロワー1万人を目指します!」


「うん、1万人は目指したいところだけれど、今のフォロワー2000人くらいだからね。さすがに30分枠で8000人に見てもらうのはちょっと難しい。だけどアーカイブも残るし、来週3000人くらいになるのを目指してがんばっていこう!」


 もう少しでスポフェスで曲も披露できるわけだし、焦らなくていい。地道な努力と、バズるきっかけをつかめれば一気に波には乗れるはず。≪初夏≫には波に乗れるポテンシャルはある。

 きっかけさえつかめれば……。


「う~。一気に有名になりたいです~」


「わかっているとは思うけれど、炎上だけは絶対ダメだからね?」


 炎上商法は一気に有名にはなるけれど、そのあと続くとは思えない。そしてその傷が取り返しのつかないことになりかねないのがアイドルだ……。



「10分前。そろそろ席について。メイク直すわよ」


「はい、みんなおしゃべりをやめて、集まって」


 ウタの呼びかけを受けて、都が全員を招集する。


「春さん、お願いね」


 ハルルが無言でうなずく。


「SNSで活動を開始したとはいっても、お客さんの前に出るのは今日が初めてです。ある意味今日が私たちのデビューね」


 たしかにそう言ってもいいかもしれない。

 ファンとのファーストコンタクトだ。


「覚悟はいいかしら? Call Enchant! We Can! We Can! We Can definitely do it!<私たちなら絶対にできる!>」


 ハルルの透き通った声で、いつものエンチャントがかかる。


 右手にブイサインを作り円陣の中央へ出す。ボクたちも円陣に呼び込まれて、今日は特別に10人全員が参加。みんなでブイサインを出し、ダブルスターマークが作られた。


「Are you ready? Our goal is to make lots of people smile. Let's enjoy the stage as usual today!<私たちの目標はたくさんの人を笑顔にすることよ。さあ、今日も普段通りステージを楽しもう!>」


『We are ≪The Beginning of Summer≫!!』

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