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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第29話 麻里さんとメイメイとボク

「いよいよ明日がアイドルデビューだな」


 ボクとメイメイが研究室に呼ばれていくと、麻里さんが入口まで迎えに来てくれた。なんとそんなこともあるのか。今日は暇なのかな?


「明日はデビューの告知日で正式なデビューは次のスポフェス――」


「麻里ちゃんおひさしぶりです~」


 メイメイが麻里さんに突撃してハグ。そのまま麻里さんの脇を抱えて持ち上げる。

 

「高い高いをするんじゃない! 昔はおむつを替えてやっていたのにいつからこんなに大きくなったんだ……」


 言葉は怒っているが、表情は柔らかい。

 2人とも久しぶりの再会を楽しんでいるようだった。


「麻里ちゃんまた小さくなりました?」


「ああ、ベストな体型を探して5センチ程な。早月はまた身長が伸びたんじゃないか?」


「そうですか~? ぜんぜん測ってなくてわからないです~」


 メイメイは、麻里さんを地面に下ろして、自分の頭をポンポンと叩いた。

 

「そころでボクとメイメイを呼び出したりして、今日は何のご用事ですか? デビュー前の激励とか?」


 そんなわけないか。

 おおかた、メイメイが覚醒しているか確かめるためだろう。


「半分は激励だな。かわいい娘がアイドルデビューするのに応援しない親がどこにいる?」


 麻里さんが不敵な笑みを浮かべる。

 それは応援する親の顔ではないですよ……。


「私がんばりますよ~。動画もいっぱい撮ってるし、スイーツもたくさん食べます!」


 メイメイがやる気だ。

 メイメイの最初のショート動画のコンセプトはスイーツ。とにかくしあわせそうにお腹いっぱいスイーツを食べるだけの動画を3本撮った。あとはシオの編集次第。

 まあ、ボクだったら100万回くらいは見ると思うけどね。


「アップされたら私も見せてもらうよ」


「あ、動画と言えば! なんでゼリー作りのナレーションの仕事なんて引き受けたんですか!」


 純粋な抗議!

 あれは悪ノリが過ぎる!


「何のことだったかな?」


 うわー、とぼけてくるー。


「ボクの初めてのスイーツ作りの動画に変なナレーションを入れてくれましたよね!」


「私が? そんな暇あるわけないじゃないか。どうせ栞が私のサンプルボイスを使っていたずらしたんだろうよ」


 ふむ。なるほど。それはたしかにありそう……。

 よく考えたらそりゃそうか。

 麻里さんを疑ってしまったなあ。そうだよね、あんな仕事受けるわけないよね。


「サンプルボイスが欲しいと言われて、仕方なく動画に合わせて台本を読んでおいたよ」


「それはサンプルボイスじゃなくて本物ボイス!」


 やっぱりやっているじゃないですか!

 まったくもう!


「目を輝かせながらスプーンでフルーツ切っているところはなかなかに母性本能をくすぐられたぞ」


 やかましいわい! こっちは初めてのゼリー作りで必死だったの!


「まったく。もう疲れたんで帰りますね……」


 わざと大きなため息をつきながら、部屋の出口へと向かう。


「カエくんもう帰るんですか? まだ麻里ちゃんとお話ししましょうよ~」


「そうだぞ、かわいいかわいい麻里さんとタダでお話できるなんてお金を払ってもなかなかできない貴重な体験なんだぞ」


「はいはい、ありがとうございますー。うれしいなー」


 まだ帰るなということらしいので、麻里さんと目も合わさずにソファーに深々と座る。

 さてさて、ここに呼ばれた本当の目的のお話は何でしょうかね。



「なんだ、その、あれだ。早月はほかのメンバーとは仲良くやれているのか?」


 ひさびさに会った親戚のおじさんかな? あ、おばさんか。


「はい~。みんなやさしいので仲良しですよ~」


「それは良かった。いじめられたりしていないか?」


「大丈夫ですよ~。ハルちゃんとはよく遊びますし、サクちゃんとは創作ダンス対決しますし、ナギサちゃんとは漫才コンビを組んでますし、新しく入った海先輩とはレイちゃんのお話をしていますよ~」


 ふむ? 今まったく知らない新情報があったな……。意外とメンバーそれぞれとちゃんと交流あるんだ。学校みたいに雪月の姫的に浮いてなくて良かったよ。


「そうだな、春とは……仲良くやれてるか?」


「ハルちゃんとは同じクラスなんですよ~。学校では委員長で、≪六花≫ではリーダーで頼りになりますよ~」


 そうだ。麻里さんは春のことも世話しているんだった。


「ハルルも麻里さんの娘、みたいなものなんですよね?」


「ああ、そうだな。早月とは事情が違うが、支援はしている」


「この間その話を聞きましたよ。ハルルは麻里さんにとても感謝してました」


「たいしたことはしていないさ。私にとっては当たり前のことなんだよ」


 そう言って小さく微笑んだ顔が、ボクには母親の顔に見えた。


 当たり前のこと、か。

 すごく難しいことを要求してきたと思えば、急に優しい顔を見せたりもする。やっぱり麻里さんは底が知れないな。


「早月はデビューしたらどんなアイドルになりたいんだ?」


 麻里さんはペットボトルのお茶を冷蔵庫から取り出し、ボクたちの前に置いた。


「ありがとうございます~。私はみんなの一番星になりたいです~」


「一番星か。眩しすぎる光は、周りに良い影響ばかりではないぞ。グループで活動するなら、自分だけが輝いていてはいけない」


 まあ、たしかにそうだ。

 1人だけ人気が出すぎるのはあまり健康的な状態とは言えない。人気メンバーだけだんだんとソロ活動が増えて、他のメンバーは仕事が減り、結果グループが衰退していくという結末は多い。


「みんなと仲良く武道館に行きたいです~。やっぱり一番星はやめて、みんなを照らす月になります」


 キャッチフレーズのやつね。

 メイメイは周りを押しのけて前に出るタイプではないからなあ。


「月か。良いとは思うぞ。しかしな、月は太陽の光を受けないと輝かけない衛星だ。周りに頼りすぎるのも考えものだな」


「じゃあどうすればいいんですか~。星もダメ、月もダメ、太陽になればいいですか~?」


「いろいろ言ったが、早月がやりたいことをやれば良いさ。コントロールは楓がしてくれるだろう。そうだろう?」


「え、あ、はい!」


 急に話を振られても困る……。

 何も気の利いたことが言えなかった。


「カエくん……私がやりたいことって何でしょうか?」


 それをボクに聞かれると困るなあ。


「メイメイはみんなで武道館に行きたいんだよね?」


「そうです~」


「武道館はコンサートホールじゃないから、サイズのわりに収容人数がそこまで多くないらしいよ。本当に人気があるアイドルしか武道館でライブができないのは、金銭的なハードルが非常に高いことが理由の1つみたい」


「どういうことですか?」


「ライブチケット以外にスポンサーがついたり、グッズ販売、CD・DVDの販売、その他諸々、ライブ以外でも収益を上げられないとなかなか厳しいらしい」


 そんなことを聞いたことがある、程度のオタク知識だけどね。


「つまり武道館でライブができるようになるには、少なくとも日本のアーティストとして、トップレベルの知名度と人気を集める必要があるってことなんだと思うよ」


「私、有名になれるようにがんばりますよ~」


 メイメイは飄々としていた。

 わりと難しいよ、ってことを伝えたかったんだけど、あまり伝わってないかな。


「早月、具体的にどうがんばろうと思っているのか言わないと、楓くんも早月のプロデュースに困ってしまうんじゃないか?」


 麻里さんが助け舟を出してくれた。

 そう、それなんですよ。メイメイの本音がなかなか引き出せていない。


「私は……やっぱりお母さんみたいになりたい……」

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