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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第25話 ウーミーの悩み

「あら、楓さん。ごきげんよう」


「ウーミー先輩、ごきげんようです」


 クリーニング室の受け取り口で、ウーミーとばったりと出くわした。

 なんか話題話題……。


「えーと、ウーミー先輩も寮生なんでしたっけ?」


「そうですわ。両親が遠方に居りますの……」


 少し淋しそうな表情を浮かべる。

 あれ、そうだったっけか。それはかなしい。


「そうだったんですね。確か……千葉?」


「フランスですわ」


「えっ⁉」


「両親はパリに居りますのよ」


 あれ? ウーミーって千葉の夢の国の近くの出身じゃなかったっけか……。記憶違いかな。

 金髪だし、たしかに見た目はパリっぽいけれども。


「ウーミー先輩はパリ出身だったんですね。そこはかとなく漂う高貴な香りはおフランスのせい!」


「わたくし生まれは日本ですのよ。両親は今パリに居りますの」


「あー生まれてすぐにフランスにわたって生活をされたんですね」


「いいえ、わたくしはずっと日本で生活しておりますわ」


 どういうことだ……。

 日本産まれ日本育ちでパリ出身とは……何かのなぞなぞかな?

 うーん、わからない!


「……降参です。答えを教えてください」


 ボクは「参りました」と首を垂れた。


「まだまだですわね。わたくしは両親がパリにいるとしか申しておりませんのよ。両親はここ1カ月ほど海外旅行に出かけておりまして、今はちょうどパリに滞在中なのですわ」


 なんと! 勝手に出身の話だと思ってしまった……。

 とんち合戦に負けた、のか……。


「参りました……」


「思い込みをすると、自ら真実を遠ざけてしまうので気をつけるのですわ」


「はい、ご指導いただきありがとうございます」


「日々精進あるのみですわ」


 ウーミーがポンポンとボクの肩を叩く。

 はて? これ、何の指導なんだっけ?


「そうですわ。こんな茶番よりも大切な用事がありましたの」


 ウーミーは思い出したように、ポンと手のひらを叩いた。

 そうですよね。とんち合戦は茶番……ですよね……。


「先日のデート映像楽しく見させていただきましたわ」


「うっ……どれを見ましたか?」


 うわー、見られたくなかった!

 何を見たんだろう。裏かゲスか……。楽しく見た……ということは、ウーミーも凌辱派閥なのだろうか……。なんかハードそうで怖いからそれは勘弁してください!


「どれ、とおっしゃいますと? 楽しそうに春さんのお洋服を選んでいらっしゃったものですわ」


 セーフ!

 これは表エピソード1の話だ!

 ピュアなウーミー先輩のままでいてください!


「楽しんでもらえて良かったです! ハルルが自信なくしていたので、自分の良いところをみつけて、元気になってほしいなって思って、デート形式でやってみました」


「素敵ですわ。……そうですわ……わたくしも今落ち込んでおりますの」


 そうなの⁉ 毎日元気いっぱい、成長著しくて、日々充実しているのかと思っていたよ。


「あ~毎日がつらいですわ。誰かとデートして自信を取り戻したいですわ……」


 チラチラこっちを見てくる。

 え、そういう感じなの? ボクとデートしたいってこと⁉

 やれやれ、まいったな。


「それは大変だ! デートしてぜひ自信を取り戻してもらわないと、デビュー日も近いし、何か悩みごとが?」


「ええ……。どうしても気になることがありますのよ……」


 ウーミーが大きなため息をついた。

 これは深刻そうだ。何を気にしているんだろう。

 途中参加ならではの何かだろうか。それとも違うことだろうか。


「とりあえず……デートしますか?」


 悩みごともその解決策もわからないけれど、ウーミーがそれを望んでいるなら叶えなければ!


「良いんですの? 本人に確認せずに安請け合いなどしてしまって」


「……本人?」


 ん? なんのことだろう。

 ボクのことじゃないな……。また何か話が食い違っていそう。


「零さんですわ」


「というと?」


「零さんがわたくしのことを避けていらっしゃるようなので、お話をして誤解を解きたいと思ってますの」


 ウーミーが苦しそうな表情を見せる。

 はいはい、なるほどね。完全に理解しました!

 って、もー! ボクとデートしたいわけじゃなかったのね……はずかしっ!


「ももももちろん、セッティングさせていただきます!」


「ありがとうございますですわ~」


 一転、安堵の表情に変わった。

 レイのこと、真剣に悩んでいたんだなあ。ずっとコンビを組もうと誘っていたのにも深い理由があったのだろう。おそらくそのあたりの話をしたいということだと思う。


「きっとレイもウーミー先輩と話すきっかけがほしいと思っていると思います。先輩のほうが勇気を出して声をかけてくれた、それだけで前に進めると思いますよ」


 話せばわかりあえる。2人とも前向きな人だから、通じるものがあるはずなんだ。


「しつこく誘ったので嫌われてしまっているのではないかと……」


「そんなことはないって、この間聞いたときは言っていたと思いますよ」


 苦手そうではあったけれど、嫌いではないと言っていたと思う。レイの場合は人との距離感は重要な問題だと思うし、ウーミーはわりと踏み込んできていたんじゃないかなあ。

 まあ話せば何とかなりそうなのはたぶん間違っていない。


「それだと良いのですが……」


「ルームメイトのボクにお任せください!」



* * *


「というわけなんだけど――」


 安請け合いしてきてしまった話を恐る恐る話題に出して、レイの顔色を伺う。


「うみ先輩のことは苦手でもないですし、嫌ってもいないので大丈夫です」


 やはり表情が硬い。


「じゃあデートしてくれる?」


「……はい」


 うーん。嫌そう。


「無理には……ボクのほうでちゃんと断っておくし」


「大丈夫ですわ~」


 うーん。ですわー。


「本当にですわ?」


「ですわ~」


 うーん?

 いいのかなあ。


「そのかわり」


「そのかわり?」


「かえでくんの手作りスイーツが食べたいですわ~」


 なんですと?


「手作りスイーツとは?」


「クッキーでも、タルトでも、プリンでも、ウェディングケーキでもなんでも」


「最後のだけあきらかにおかしい……」


「じょうだんです。なんでもいいですよぅ」


 なんでもかあ。

 料理って全然したことないかも……。メイメイ教えてくれたりするかな。

 それで2人が仲直りできるならがんばってみようかな。


「料理なんてぜんぜんしたことないから期待しないでよね?」


「かえでくんの手作りならブタのエサでもおいしく食べられますよぅ」


 ニコニコ顔のレイさん。

 でも、ブタのエサを食べているレイは見たくないんですが……。


「何とか食べられるものが作れるように努力してみるよ……」


 ピーラーでじゃがいもの皮むきくらいしか自信ないなあ。


「うみ先輩とのデートも楽しくできそうです」


 そうですか……それは良かったです……。

 笑顔のプレッシャーが半端ないです!

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