第32話 定期公演#9(≪BiAG≫コラボレーションライブ) その1~さそり座まで連れてって
本番3分前。
≪初夏≫の5人が円陣を組む。
中心にいるのは、リーダーのハルルだ。
「とうとう待ちに待った定期公演#9、≪BiAG≫とのコラボライブが始まるわ。いつもとは違う私たちを魅せる時。練習はいっぱいした。大先輩の胸を借りてこのライブを成功……違うわね。そんなの私たちらしくない!≪BiAG≫のパフォーマンスに期待している人たちをあっと言わせてやりましょう。私たちのほうが上だってね。私たちは今日ここで頂点に立つ! Call Enchant! We Can! We Can! We Can! We Can definitely do it<私たちなら絶対にできる!>」
ハルルの決意表明に全員が大きく頷いた。
右手にはブイサイン。自信に満ち溢れた五芒星が今、完成する。
「Are you ready? Our goal is to make lots of people smile. Let's enjoy the stage as usual today!<私たちの目標はたくさんの人を笑顔にすることよ。さあ、今日も普段通りステージを楽しもう!>」
『We are ≪The Beginning of Summer≫!!』
さあ、行ってこい!
みんなならできる!
絶対負けるな!
定刻。
いよいよ開演する。
だけど今回は、Overtureもメンバー紹介動画もなし。
すべてが特別。
上手側から≪初夏≫のメンバーが、下手側から≪BiAG≫のメンバーが登場し、ステージ中央に集まる。
スポットライトが点灯し、全員揃いの衣装がお目見え。
真っ白でシンプルな半袖のセーラー服。紺色のプリーツスカート。
ただし、リボンの色は≪初夏≫が水色で≪BiAG≫が赤色だ。
アイドル12人がステージ上で一堂に会した。
前奏なしに1曲目が始まる。
最初の曲は、伝説のアイドルグループ≪Believe in AstroloGy≫の代表曲『さそり座まで連れてって』。
変形のV字フォーメーション。
1列目、センターに秋月美月。
2列目に左から小宮桜、新垣春、夏目早月。
3列目、佐々木千佳、水沼渚、糸川海、越後梨美。
4列目、益田友恵、伊勢野乃花、目白沙希、比留間樹。
Aメロ。
秋月美月ソロから始まる。
センターでただ1人、不動のまま歌唱。
残りの11人が一糸乱れぬダンスで盛り上げる。
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あなたはワタシ
宇宙見上げ
星座に祈り捧げる
泥みたいな世界
抜け出せるように
ただ祈り続ける
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この出で立ち。このオーラ。この歌声。
誰がAIプログラムだなんて思うだろう。
誰が作りものだなんて思うだろう。
本物の秋月美月が現代に蘇った――。
『18年の時を経て、私は戻ってきた。迎えに来たよ、ユエユエ』
ルーナの、ボンバー仮面V3の言葉を思い出す。
今まさに、麻里さんの手によって、伝説のアイドル・秋月美月が蘇ったのだ。
音源でしか、映像でしか体験することのできなかった≪Believe in AstroloGy≫を、生で感じることができる喜び。
これが本物の音楽。
これが本物のアイドルなのだ。
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世界の終わりがやってくる
(逃げ場なんてないんだ)
ボクはただ立ち尽くすだろう
(絶望が近づいてくる)
ボクらは振り返る
タマシイ震わせて
死んでも ぶつかっていけ
(Fly to the galaxy!)
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フォーメーションが変わり、前中後3列、各4人ずつの横並び。
1列目、佐々木千佳、秋月美月、夏目早月、新垣春。
2列目、益田友恵、小宮桜、越後梨美、目白沙希。
3列目、水沼渚、伊勢野乃花、比留間樹、糸川海。
波打つようなダンス。
指先の動きまで美しく揃っている。
まるでずっと一緒に組んでいる1つのグループのように。
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さあ立ち上がれ
反撃の狼煙
目指すはさそり座 叫び続けろ
あの真っ赤なアンタレスへ
どうか届け
さあ立ち上がれ
肩寄せあって
笑顔で歌え 声の限りに
止まることないボクらの心臓
一番星のその先へ
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一切の遊びがなく、フルスロットルで踊り続ける。
あの≪BiAG≫の面々に交じっても、≪初夏≫のみんなは決して見劣りしない。
堂々と渡り合っているじゃないか。
ああ、とうとうここまできたんだな。
タマシイが震える。
もしボクにタマシイなんてものがあるのだとしたら――いいや、この体の奥の奥、芯から細胞が震えるようなこの感覚こそが、タマシイの震えなのだろう。
今この場所にいられることに、感謝の祈りを捧げずにはいられない。




