第30話 ドリンクを胸にはさんで飲んでもらうサービスは……荷が重いです
定期公演#9(コラボレーションライブ)当日を迎えた。
昨日は遅くまでリハーサルお疲れ様でしたね。
技術スタッフの皆さんは徹夜なのかな……。みんな目にクマが……。ビタミンCたっぷりのはちみつレモンを差し入れしますから飲んでください。そして、後ひと踏ん張りお願いしますね。
「かえでくん、とてもマネージャーっぽくていいです。せっかくなのでチアリーダーのかっこうをしましょう」
「えっ、なんで?」
「部活動のマネージャーといえば、チアリーダーですし」
「そんなことなくない? そもそもチアリーダーはチアリーディング部の人がやるものでは?」
レイの部活に対するイメージがおかしい……。
そもそもボクたちは部活のマネージャーではなくてアイドルのマネージャーなので……。
「衣装を用意しました。全自動お助けモード(緊急)を作動します」
「あ、ちょっと⁉」
了解を取らずに勝手に!
拒否する間もなくチアリーダーの格好にさせられてしまった……。
スカートめっちゃ短いし、足が寒い……。
こういうのって、下にタイツみたいなのを穿くものでは?
パンツ見えちゃってない?
「見せパンなので平気です」
アンスコでもなくて?
見せて良いのと見せちゃダメなものの違いがまだわからない……。
レースのかわいいやつだし、普通のパンツにしか見えないんだけど?
「自信を持ってください。とってもかわいいです」
「……そう?」
「疲れているスタッフのみなさんの癒しになること間違いなしです」
「そっかなあ。レイとかウタとか、もっと適任の人がいる気がするんだけど……」
「わたしはちょっと……。ドリンクを胸にはさんで飲んでもらうサービスは……荷が重いです」
「ボクに何させる気なのさ……」
だいたいね、ボクにそんなの挟めるわけないでしょ! 物理法則を舐めないでよね!
違う違う。そもそも論だよ。いかがわしいお店じゃないんだから、挟めるか挟めないかじゃなくて、そんなサービスするわけないでしょ。
「しおりさんのマンガでは、1勝するごとにマネージャーの胸にはさんだドリンクが飲めて、全国優勝したらさらに過激なサービスが受けられると描かれていました」
「またシオセンセのマンガか……。それはフィクションだからね? 実際にそんな部活があったら大問題になって活動停止にされるし」
シオのマンガは教育上良くないんだよなあ。
変にリアルに描くから、こうやって信じちゃう人が出てくる……。
「まあいいや。スタッフさんたちにドリンクを配ってくるね」
ちょっと恥ずかしいけれど、がんばってくれているおじさんたちにボクができることはこれくらいしかないし。
* * *
うぅ、めっちゃ恥ずかしかった……。
知らないおじさんたちかと思ったら、普通にうちの系列会社の社員さんだったわ。やたらと≪初夏≫のこと詳しいし、ボクのことも知っていたし……。
「いつも配信見てるよ」「チィタマちゃん応援してるよ」「今日の衣装もかわいいね」って、親戚のおじさんたちにちょっとエッチな格好を見られたみたいな感覚? さすがに恥ずかしすぎました……。消えたい……。
「かえでくん、とてもよかったですよぅ。かえでくんが恥ずかしがる動画はグループチャットに流しておきました」
「あ、コラ! そういうのはホントやめてって!」
恥ずかしさのデジタルタトゥーが残ってしまう!
あー、すでにめっちゃ反応が……!
みんな端末に保存するのはやめて!
「かかかかカエデちゃん!」
ハルルが息を切らして立っていた。
「こんなところで何してんのさ?」
今の時間は、第1スタジオで振りつけの確認中じゃないの?
「カエデちゃんのチアリーダー姿を見ようと思って!」
「まあそんなことだろうとは思ったけどさ。大事なリハをサボってはいけませんよ?」
あと顔が近い。
そんなに近づいたら衣装なんて見えないでしょ。
「肩出しのカエデちゃん……。プリーツスカート……」
「ちょっと! 急に捲るのやめてって!」
なんなのもう……。
「これ持って! 写真撮りたい!」
と、手渡されたのはキラキラのラメ入りのスズランテープで作られたポンポン。
「本格的にチアリーダーのやつじゃん。こんなのどこから持ってきたのさ」
「そこの売店で売ってた!」
何で売ってるのさ……。こんなの誰にも需要ないでしょ。
ポンポンなんて販売停止にして、お菓子のラインナップを見直してほしいわ。
「ちょっとポーズお願い! 視線はこっちに! もっとお尻を突き出して! 誘うように! あ~いい♡」
なんなのもう……。
レイも無言で動画を回しているし……。
ホントなんなの……。




