第26話 『メイメイのゲリラ雷雨』第65回目4
「カエくんが騎士団長様に一目惚れしたお姫様ですよ~」
あーなんか思い出してきたかも……。
いつぞやのバスの中でメイメイとレイが大盛り上がりしていたやつだ。マキの注文で書いたんじゃなかったっけ? そしてハルルはボクを騎士団長にしたがる逆カプだから読ませてもらえないって何か揉めてたね……。
あれ、商業誌でコミカライズするの……? マジで?
「シオちゃんが描いてくれたイラストを表紙絵にして公開していたら、『そのイラストレーターは三井栞先生ですか?』ってDMが来たんですよ~」
「あーそういうこと?」
内容というより、シオのイラストが目に留まったと。
まあそうだよねえ。
タイトルはなんだっけ?
『王国騎士団長に転生した俺。姫と駆け落ちして辺境国の国王になったが、平和すぎて体が鈍って仕方ない。準備運動ついでに軽く世界征服でもしようと思う』か。
タイトル長すぎて覚えられなくて、チャットのトーク履歴を調べちゃったよ。
さすがに内輪受け以外で流行るとも思えないし、シオのイラストメインかあ。それなら納得かな。
「え、じゃあ何? コミカライズってシオがマンガ描くの?」
「そうですよ~。『Webで不定期連載ならええで』ってシオちゃんが引き受けてくれました~」
これ以上シオに仕事を積まないであげてほしいんだけどね……。
まあシオがやれるって言ったんならやれるんでしょうけども。
「サツキ! 商業作家デビューおめでとう!」
「ありがとう~! ハルちゃんも応援してくださいね~」
すっかり機嫌を直したハルルが、メイメイの手を取って自分のことのように喜んでいる。
「応援するよ~。まずは原作を読んで予習するから私にも送って」
「それはダメです~。ハルちゃんには別の作品を送ってあげますよ~」
逆カプ断固拒否。
それほどまでに業は深いのだ……。
「なんで別作品なの⁉ 私にもカエデ姫の話を読ませてよ!」
「ダメ~」
両手をバッテンにして拒否。
これは厳しそう……。
“マンガになってから読むしかないな”
“ここまで拒否されるの笑う”
“メイメイはこだわりが強い系の作家だなw”
“隠されると読みたくなる。そういう商法かもしれない”
“読みたいな”
“Web公開されているのでは?”
“レイマキのために書いているって相当だなw”
“楓も読んでなさそう”
“カエデ姫w”
“イラストだけでも見せてくれw”
そうだよ、ボクも作品の中身は読ませてもらえていないからね。選ばれし者にしか読めないプレミアムな作品なのだ……。まあ、タイトルを検索すれば見つけられるとは思うんだけど、「読まないで」って言われているし無理にはね……。
「ここでスポンサーのルーナちゃん、華麗に再登場だよ~♡」
カメラ前に降り立つルーナ。
ドアップ。
『チーム・ホワイト』の白いワンピースが配信カメラを独占する。
「ルーナちゃん、おかえりなさい。スポンサー? この配信にお金払ってくれるの?」
「いいよ~。CDの売上をスポンサー費用に当てちゃうよ♡」
「CDの売上? ああ、5thシングルね。白組の『Friends~Loving You』はルーナちゃんが作詞作曲しているから、その分の印税はもらえるのかな?」
「みんな~。5thシングルを買って『ルーナちゃんかわいい♡』してね!」
“オトク会は再来週が最後か?”
“もうメイメイの予約枠残ってないな”
“まだ誰か残ってる?”
“全部完売だろ”
“さすがにな~”
“初夏も人気出たのを実感するな……”
“そろそろ次の地下へ……”
“再来週はそもそも追加販売枠分だし、もうさすがに増えないよな”
“ルーナちゃんかわいいしたかったのにな~w”
「さすがサツキの配信ね……。少し疎外感があるわ……」
ちょっと落ち込んだ様子のハルル。
コメント欄でハルルの枠の予約についての言及が一切ない。メイメイよりも枠を持っているハルルだけど、さすがにメイメイホームグラウンドでは旗色が悪いか。
「泣かないで~。ハルちゃんのトーク枠は私が予約してあげますよ~」
「泣いてないわよ? 私の枠は完売してるし。ただね、こんなふうにファンの方たちと楽しく話しているのがちょっとうらやましくなっただけよ?」
そうだね。
これがメイメイ独特の距離感。
ファンの人たちがたまに口にする「実家に帰ってきたような安心感」ってやつなんだと思う。
媚びたりせず自然体で。
「でもね、楓ちゃん! スポンサー費用にするCDは5thの分じゃないよ~」
「ん、どういうこと?」
ほかにCDなんて出してたっけ?
「これから出すんだよ♡」
「これから?」
「ルーナちゃんプロデュースの特別シングルの発売が決定しました~♡ みんな拍手~♪」
え、あ……パチパチパチパチ?




