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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第二章 学園・大学病院 編

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第16話 自己紹介動画を撮ってみよう

「え? 自己紹介動画って、バディで自由に3分間撮っていいんですか?」


 動画であれば内容は自由。

 自撮りでもいいし、マネージャーが撮影してもいいし、自分を紹介できる内容になっていれば何をしても良いと。

 セルフプロデュースかあ。なかなかに難しい……。


「メイメイ、どうしようか?」


 とりあえず最初にメイメイの率直な意見を確認してみよう。


「わたしの自己紹介ですか~。カエくんが質問してそれに答えるとかですか?」


「まあ、それが普通だね。1つのアイディアとして持っておくとして、他にもいろいろ考えてみようか」


 インタビュー形式は無難だ。普通の内容で撮るのもいい。大崩れはしないだろうし、無難には仕上がる。

 でもそれで見た人の印象に残るのか、そこが重要なポイントだと思う。


 質問がおもしろければ良いのか?


 でもこれはデビューと同時に配信する動画なんだよね。まったくの無名、ファンが1人もいない状態でのスタートとなるわけで、この動画を見てくれた人に高確率で推してもらえるような内容にしたい。

 ファン獲得は最初の印象がすごく重要だろうから、いきなりおもしろ路線というよりは「きれいな子だけど親しみやすいですよ」路線が良いな。


 そこから考えられるとすると――。


「メイメイが好きなものを撮影するのはどうかな?」


「私の好きなものですか~?」


「ほら、食堂のスイーツ紹介とか、メイメイっぽさが出るんじゃない?」


 人が自分の「好き」を表現する時の表情ほど魅力的なものはないと思う。

 実際普段の物静かなメイメイは、姫と呼ばれるほどとてもきれいな人だけど、甘いものを食べている時、それについて語っている時は、急に幼さが出てかわいい人に変化する。どっちが良い悪いの話ではなく、そういう魅力も見せられるというのが大事なんじゃないかと思うわけで。


「自己紹介を最初に入れてから、好きなものを紹介するコーナーで好きなスイーツベスト3を食レポするのってどうかな?」


「なるほど~。おもしろそうですね。でもスイーツ紹介が3分に収まるかな~」


 悩みだすメイメイ。そんな長尺で食レポする余裕はないよ? それはなんか自分の動画チャンネルかコーナーを持った時にやろうね?


「今回はまあ、編集でなんとかしようか……」


「そうですね~。1回お試しで撮ってみましょう!」


 食レポには興味がありそう。

 アイドル×スイーツは王道だけど、メイメイのはガチだからきっとファンはつく!


「OK。じゃあボクがインタビュー内容を考えてみるから、メイメイは好きなスイーツベスト3を決めておいて」


 と言ったものの、自己紹介って何を聞けばいいんだろうな。

 名前と年齢と出身?

 わからない。ちょっと調べてみるか……。


 文明の利器(ネット検索)を利用してみる。


 あーそうかそうか。オリジナルのアイサツね。

 これは入れたいな。普通に自己紹介した後に、照れながらオリジナルアイサツする流れがかわいいかな。


 他は「なんでアイドルになろうと思ったか」か。

 でもこれはインタビュー動画のほうでも聞かれそうな質問だなあ。自己紹介っぽくないからやめとこう。


 ふーん、なるほど。「自分の長所短所を体で表現して」、か。

 これはおもしろいな。動画向きだし、入れてみようかな。


 あとは「好きなもの」を紹介するのが良いかな。いきなりスイーツの食レポじゃなくて、好きなものを3つくらい挙げて、その中のスイーツを実際に食べて紹介します、みたいな流れにしよう。


 最後にアピールとしてもう一度オリジナルアイサツをして、「私を推してね」みたいな締めでいってみよう。

 よし、流れは一旦これで。



「とりあえずボクのほうはインタビュー内容を考えてみたけど、メイメイのほうはどう?」


 メイメイはイスをリクライニングさせて天井を見上げたまま、「うんうん」うなっていた。

 うわ、めっちゃ悩んでますね。


「そんなに悩まずに、少し肩の力を抜いて気楽な気持ちで3つ選ぼう?」


「ダメですよ~。ダイヤモンド会員としての責任が~」


 気負いすぎている。

 スイーツ紹介はガチすぎてやめたほうがいいのかな……。


「じゃあそこは後で考えるとして、まずは自己紹介のところを軽くテストで撮ってみようか」


 テストと言いつつ編集をするので、ファーストテイクのナチュラルさはわりと大事だと思う。初々しさをいただきにまいりますか。


「この会議室だと味気ないから、ちょっと人通りがあるところで撮ってみたいかな。エントランスのあたりにいってみようか」


「わかりました〜」


 ボクたちは連れ立ってエレベーターに乗り1階へ。

 エントランスでも邪魔にならなそうなところに撮影場所を定める。

 自動ドア脇の観葉植物の隣にしよう。ここならいい感じに周りに人がいて、緊張せずに撮れるかも。


「よし、最初のカットは普通に自己紹介ね。名前を名乗って、年齢と出身とか。なんて呼ばれたいかの愛称も言ってみようか」


「はい~。なんとなくやってみます~」


「じゃあ撮るよ! はい、スタート。まずは自己紹介をどうぞ」


 今回の自己紹介動画撮影用に渡された、ハンディーのビデオカメラを回す。


「こんにちは~。夏目早月です。メンバーのみんなからは、早月ちゃんとかさっちゃんって呼ばれています。マネージャーさんだけはメイメイって呼んでくれます。みんなからもメイメイって呼ばれたいなって思ってま~す」


 自己紹介が終わった感じでこっちを見てくる。


「メイメイ、年齢や出身を」


「あ、年齢は16歳です。出身は東京ですけど、小さい頃からずっと北海道でおばあちゃんと暮らしていました。今年から東京に戻ってきたので人の多さにびっくりしています~。私に興味を持ってもらえるとうれしいで~す」


「はい、一旦カット。お疲れ様! ちゃんとしゃべれてるし悪くないんじゃないかな」


「良かったです~」


「もっとガチガチに緊張するのかと思ってたけれど、案外カメラ慣れしているね?」


「たくさんの人に見られるのは緊張しますけど~、カエくんが撮ってくれているので安心です~」


 ふむ、それは良かった。

 待って、顔がにやける。ファースト動画内で名指しで固定レスするのやめてね。勢いで昇天するから……。あ、大事なところでカメラぶれてなかったよね? あとでチェックしよう。


 そっとカメラの録画を再開する。


「次はオリジナルのアイサツを考えてみようのコーナー!」


「え、オリジナルのアイサツですか~。萌え萌えキュン、みたいなやつですか?」


「うん、そういうのだけど、それは人のだからやめようね」


「う~ん。どういうのが良いですかね~。むずかしいです~」


「リズムで整えたり、コール&レスポンスになっていたりが盛り上がるのかな? あとはテイストをかっこいい系、かわいい系、みたいな方向性で考えるとか?」


 しばらく無言で考え込むメイメイ。

 まあ、このまま長回ししておこう。


「は~い、東京出身北海道育ちの16歳。月のように静かにあなたを照らしたい。メイメイこと夏目早月です~」


 おお、そうきたか……。前のメイメイのアイサツにとても似ている……。

『月のように静かにあなたを照らしたい』のフレーズはまったく同じだ。ドキッとした……。


「羊の鳴き声は~(メイメイ)みんな元気~(メイメイ)メイっぱいがんばちゃうぞ。メイメイこと夏目早月です~」


 意味は分からないけれど、コール&レスポンスにはなりそう。

 レスポンスの部分も自分で小声で言っているのかわいい。

 もう羊アイドルとして売り出すか。


「私のこと好き~?(好き~)私も好き~(好き~)メイメイこと夏目早月です~」


 もっと意味がわからないけれど、なんかもうかわいい。


「北海道のほうから来ました。スイーツを食べるためにアイドルやってます。メイメイこと夏目早月です~」


 え、それはどういうことなの……。


「あら? 姫と代理ちゃん。何やってるの? 撮影?」


 カメラに映りこんできたのは、MINAさんだ。

 わかっていて覗き込んできているな……。まあ、おもしろそうだからこのままカメラを回そう。


「自己紹介用の動画で、今オリジナルのアイサツを考えてるところー」


「おもしろそうね。私も一緒に考えて良い?」


「MINAちゃんありがとう~。MINAちゃんのアイサツはどんなの~?」


 お、メイメイその振りいいね。これはそのまま使えそうな流れ! あとでMINAさんに許可取るか。


「え? 私? モデルにそういうのはないんだけど……。普通に『おはようございます。ダブルウェーブ所属MINAです。本日はよろしお願いします』かな?」


「え~普通~。もっとウォーキングしたりしないの?」


「ランウェイのウォーキングのこと? さすがに挨拶の時にポージングしたりはしないよ」


「MINAちゃん! ちょっとウォーキング見せてください! 私もやってみたいです~」


 いいね、非常に良い流れ!


「え~、しかたないな~。たしかに姫のビジュアルとスタイルなら、アイドル枠としてのモデルの仕事はきそうだし、覚えておくのはいいかもね」


 渋々感を出しながらも、MINAさんは廊下の奥の方に移動してくれる。こっちに向かって歩いてくる想定のようだ。


「何かBGMちょうだ~い!」


 そうか、ウォーキングにはBGMが必要なのか……。ここは≪ビギサマ≫がいいかな。

 ≪ビギサマ≫のインストを流す。


「そっち聞こえるー?」


「大丈夫! OK。行くよ〜」


 片手を上げてこちらに合図を送ってくる。

 しばらく手を挙げたままだったが、曲の切れ目に合わせて、静かに手を下げた。その瞬間、MINAさんの雰囲気が変わる。


 1歩目からもう何もかも違った。

 あ、もうかっこいい。

 ブレない重心。腰の動き。腕の振り。何もかもかっこいい。同じ制服姿なのに、コレクションの衣装みたいに見えてくる。これは惚れるわ……。


 ≪ビギサマ≫のハイテンポなリズムに合わせて、自信たっぷりの表情でMINAさんが歩いてくる。なるほど、BGMの曲調に歩き方や表情まで合わせてくるのか……。


 カメラの前で腰に手を当ててポージング。カメラのほうに顔を残しつつ流し目でターン。ああ、もう好きー!


 少し歩いてMINAさんは立ち止まる。くるりとこちらを向き直った姿は、いつものMINAさんだった。


「どうだった?」


「MINAちゃんすっごいすっごいかっこいいです〜! モデルさんみたいです〜」


 メイメイがダッシュでMINAさんの元へ駆け寄る。


「モデルさんみたいって……。私、これでも一応プロのモデルなんだけどね」


 MINAさんが苦笑している。

 メイメイさんそれは失礼ですよ……。


「それにしても魔法みたいだった」


「ふふふ、代理ちゃんもありがと。じゃあ、姫も練習してみようか?」


 MINAさんがメイメイの肩を軽く叩く。がんばれ、メイメイ!


「私にできるかな〜」


「最初はみんな初心者よ。練習あるのみ!」


「がんばります〜」



 メイメイのウォーキングは素人丸出しで散々だったけれど、MINAさんは良いところを褒めて、練習すべきところを教えてくれていた。


 よし、これは良い動画になりそう!

 3分には収まりそうもないけれど、がんばって編集して……あとは交渉しよう!

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