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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第十章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #7編

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第8話 アニメと演劇の大きな違いはなんだと思う?

「それでは本日の成績を発表する」


 1日目の終わり。

 麻里さんの締めの言葉にハッとする。


 そうだった!

 ボクの沽券にかかわる問題があったんだった!


「頼みますよ……」


 ハルルの頭の匂いを嗅いでいる映像なんて、流出させたくないよ……。

 お願いします!


「1位は……真紀だ。おめでとう!」


 あー、やっぱりかあ。

 マキも当然って顔で頷いている。


「やっぱり地力の差は覆せなかったかあ。役者歴で負けたって感じだよー」


「正直、まだまだ実力不足だったわ……」


 ハルルもがっくりと肩を落としていた。


「がぅがぅ!」


 花子がわざわざボクの頭から降りて、ハルルを慰めに行く。なんだかちょっと距離感が縮まっているね。クマとゴリラはどっちも猛獣だから通じるものがあるのかもなあ。あ、同時に睨んできた⁉ 読心術か⁉


「私が評価したのはそこではないよ」


 麻里さんが機材を片づけながら言う。


「あ、ボクも片づけ手伝います。ではどこを評価されたのか聞いても?」


 地力の差でも、役者としての経験でもないとしたらなんだ?


「もちろん役者としての引き出し、という話に帰結する問題かもしれないが、アニメと演劇の大きな違いはなんだと思う?」


「大きな違いですかあ」


 なんだろうな。


「2次元と3次元の違い、ではないですよね?」


 ハルルが機材をまとめながら尋ねる。


「もちろんそこは大きな違いだが、今の課題とは少しズレている。そうだな。ヒントを出すなら、ドラマや映画もアニメと同じカテゴリに入るかもしれないな」


 演劇とアニメの違い。

 そしてアニメとドラマと映画は同じカテゴリに属する。


「お客さんが目の前にいるかどうか?」


「おしいが少し違う」


「もしかして……生か録画の違いですか?」


「そうだ。春に10ポインツ!」


 急にポイント制になった⁉

 くっそー。お手つきした分はポイントマイナスにしてくださいよー!


「最近の演劇は、配信のみの無観客で行われる場合もあるが、基本的には生放送、または1発撮りだ。それに引き換え、アニメやドラマや映画は、細かくカット割りされていて、シーンごとに、アニメなら各セリフごとに撮り直してつなぎ合わせることもある」


 まあそう言われるとだいぶ違うものに聞こえてくる。


「わたしはどっちも経験があるけど~、やっぱり通しで演技する舞台のほうが好きかな~」


 たしかにマキの主戦場は舞台っぽいよね。

 でも映画の時もうまく入れていたし、どっちもできる女優さんってすごいなあ。


「ではその細かくカット割りされたアニメの収録の中で、重要なスキルはなんだと思う? 今の基礎トレーニングの中でそれを学んでもらったわけだが」


 ボクたちは今何を学んだ?

 腹式呼吸や発声練習は反復が必要な基礎中の基礎だし、スキルというくくりではなさそう。


「はい! 私わかりました! 声の美しさ、かわいさですよね!」


「それはもちろん大切だが、イメージに合ったキャスティングをするのは、総監督や音響監督の仕事だ。それぞれの役者は持っているものを磨き、役に備えるしかないよ」


「う~、それなら……ネームバリューですか?」


「もちろん大事だが、基礎練習とは関係ないだろう」


「あ~しまった~!」


 麻里さんとハルルのやり取りが続く。


 ボクは黙って1人考える。

 今日やったトレーニングの中で、最も差がつきそうなのは喜怒哀楽の演技レッスンになるわけだけど……。いったい何がマキと僕たちの違いだったんだ……?


 そりゃあ、もともとの基礎力が違うから、最初からどの感情を表すのもマキが1番うまいし……。待てよ? そうじゃないな。麻里さんはどの演技にも1発でOKは出していなかった。

 お題が「デートで遅刻した相手を怒る時の『怒』の感情」の時、「30分遅刻してきた相手に対して」とか「3時間遅刻してきた相手に対して」とか「待ち合わせ時間に家で寝ていた相手に対して」とか「待ち合わせに来なくて音信不通。5年後にふらりと現れた相手に対して」のように少しずつ変化を求めてきた。


  つまりそこから導き出される答えは――。


「細かい演技指示に即座に対応する能力!」


「楓に10ポインツ!」


 やったー! 正解だ! どやどやー!


「よくわかったな。その作品において、演技の正解というのは、監督や音響監督の中にあることが多い。そこにどれだけ近づけるか。もしくはそれをぶち壊して遥か上の演技を見せつけてわからせるか。OKテイクを勝ち取るには、その2つに1つしかない」


 とても厳しい世界だ……。

 どんなに準備していっても、役作りの方向性を間違っていたらまったくの無意味になってしまうということか……。


「マキが1番うまくフィットさせていた、ということですね?」


「そうだな。細かい指示に対しての補正ができていた。引き出しが多いとも言い換えられるが、それを瞬時に引き出すことができる力も持っているということだな」


「いえ~い♪ ブイブイ!」


 マキさん、ダブルピースで大喜び。でもアヘ顔ははしたないからやめなさいって!


 ボクとハルルはまだまだってことだなあ。

 引き出しの数も、引き出し方も、まったく及んでいないということ。こんなんで声優やれるのかな……。


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