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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第九章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #6編

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第22話 定期公演#6 その4~たとえ報われなくても僕は君を愛してる

 定期公演#6の3曲目『たとえ報われなくても僕は君を愛してる』がスタートする。


 3rdシングルのカップリング曲。

 サクにゃんの言う通り、恋の歌……なんだけど、これも失恋ソングになるのかな。うーん、どうだろう。その人の人生観によって解釈が変わりそうな曲かな。


 前々回の定期公演#4で初披露されたんだけど、あの時は……のっぴきならない事情でパフォーマンスを見ることができなかったんだよね。そうだよ、赤ちゃんにされていたあの時だよ!


 なんだか最近の麻里さんは謎に干渉してくるよね。前回の定期公演#5の時も、仮眠を取っていたらいきなり小さくされているしさ。自分が運営側だって大々的に発表してから容赦ない気がするんだよねえ。気のせいかなあ。目的がわからないけどさ。なんかもう、≪初夏≫のみんなにはほとんどボクの正体はバレたようなもの……でもないか。麻里さんにいたずらされているだけって認識かも?


 ボクが本物の人間じゃないって知ったら、みんなはどんな反応を示すんだろう。


 ウーミーは、拒絶とかではなくて単純にショックを受けそうな気がする。

 ナギチは、するっと受け入れてくれそうな気がする。

 サクにゃんは、実験に付き合ってくれって言いそうな気がする。

 ハルルは……わからないな。

 メイメイはちゃんと理解しているかはわからないけれど、もうほとんど知っているようなものだよね。

 マネージャーのみんなはもう知っているわけだけど、誰もボクを差別したりはしない。


 根拠はないけど、別にバレても大丈夫なのかなあ。


「がぅ?」


 相変わらずボクの頭の上を定位置にしている子グマの花子が、肉球で器用におでこを叩いてくる。


「ん、大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけー」


「がぅがぅがぅ!」


 花子が軽く髪を引っ張ってきて、モニターを見るように促してくる。


「もう少しでサビだとおっしゃっていますね」


 レイが花子の心の声を代弁する。

 花子の声も聞こえるのか、なんとなく想像で言っているのかはわからない。


「しっかし良い曲やな~。チビにもこの曲の良さがわかるんか~? うちはこの曲めっちゃ好きやで。サビが抜群の出来やと思うわ~」


 シオが花子の頭をガシガシと撫でながら言う。

 シオセンセ、今日はなんだかとても上機嫌ですね。


「そうだねえ。一途なんだろうけど、ちょっと切ないなあとは思うよ。タイトル回収ってやつ?」


『たとえ報われなくても僕は君を愛してる』


 この曲は『僕』の視点を通して描かれているのだけれど、『君』がどんな人なのかはまったく出てこないところが特徴的な歌詞だ。

 どうやら『僕』と『君』は親しい間柄にあるのだろうという想像はつく。でも、恋人というわけでもなく、『僕』が片想いをしている関係性のように描かれている。もしかしたら『君』のほうも『僕』に対して恋心を抱いていたりするのかも、と想像はするけれど、どうやら『僕』自身はそうは思っていないみたい。

 たぶん『僕』は『君』に告白をして恋人になろう、なんて考えはまったくもっていなさそう。


『僕』みたいなちっぽけな存在が、『君』と釣り合うわけがない。でもそばずっと見守っていたい。

 そんな想いが綴られている。


------------------------------

たとえ報われなくても

君を愛している

もし泣きたいのなら

僕の肩を貸すよ


たとえ報われなくても

君を愛している

もし君が笑えるなら

僕はいなくてもいいね


たとえ報われなくても

君を愛している

もし世界がほしいなら

手に入れてみせるよ


たとえ報われなくても

君を愛している

もし君が望むのなら

この命だって捧げるよ

君がずっと笑顔になれるなら

僕は幸せ

------------------------------


「こんなに想われている『君』ってどんな人なんだろうね」


 ボクにはどうしてもこの『君』の顔が見えてこないんだ。

 『僕』という人物が、すごく大切に想っている誰かなのだということはわかる。でも、命を投げ出すほどの、自分がいなくなればその人がしあわせになれると思えるほどの『君』ってどんな人なんだろう。


「かえでくんの目にはいつも誰が映っているのでしょうか」


「ボク? 急に何?」


 レイから投げかけられた質問の意味がわからなかった。

 歌詞の話をしていたはずなのに、なぜボクのことを?


「カエちんは危ういよな~。気をつけなきゃあかんで……」


 シオまで何を?


「かえでくん……。かえでくんのことを大切に想っている人は、その人だけではないです。わたしも、しおりさんも、ほかのみなさんも、みんなみんなかえでくんのことを大切に想っています」


「う、うん。ありがとう?」


 涙ぐみながら言われても……。ボクはどう答えればいいの?


「誰かのことだけではなく、みんなのことを想ってくださいね。……わたしのことを1番にしてくれてもいいですよぅ」


 最後に消え入るような声で自己アピールが入って……ここは伝説のあのセリフの出番か……。


「ん、なんだって? 急に花子が耳をふさいできてよく聞こえなかったな。うん、みんな大切だよ。ありがとうね。みんな大好きだなあ」


 ボクには誰が1番大事かなんて決められないし、そんな資格もありはしない。もとより存在しないはずの命だからね。ボクの命は≪初夏≫のみんなが頂点に立つために、さらにその先へ進んでいくために必要なものなんだと思う。


 でもボクはこの曲の歌詞とは違って、報われているよ?

 みんなに必要としてもらえている自覚があるからね。


 ああ、ボクはしあわせだなあ。


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