表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第九章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #6編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

423/441

第19話 定期公演#6 その1~頭にしがみついているのは良いのに、髪の毛はNGなんですか?

 さあ、今日も元気に定期公演#6がスタートしたぞ!


 一部のメンバーはキャンプ明けで心は充実。もしかしたら体はちょっとお疲れ……? ジンギスカンをいっぱい食べたから平気かな? 良いエアーマットを使っているとはいっても、普段のベッドで寝るのとは違いますからね……。みんなはランタンを囲んで夜中までトークが弾んでいたみたいだけど、寝不足にはなっていないかな? ボクは1人先に寝ちゃったけどさ。


 というわけで、今日の1曲目は『青春=理不尽』だ。

 サクにゃんがメインボーカルを務める片想いソングだ。しかもなんとサクにゃんの実体験をもとにして、麻里さんが作詞したらしいって言うんだからびっくり。まだ正直信じ切れていない……。あの麻里さんが……。

 初披露の時のパフォーマンスが話題を呼んでいて、ファンの間ではかなり評価が高い1曲なんだよね。音源では伝わり切らないサクにゃんの初々しさにみんな心奪われているというか。まあわかる。


「花子花子! この曲はそんなに激しくペンライトを振る曲じゃないよ。会場のお客さんと同じようにゆっくり振ってみよう。あとね、できれば色もピンクにしたほうがいいね」


 単推しで絶対に推しのメンカラーから変えたくないって人もいる。その気持ちは尊重するけれど、ボクは曲のメイン担当に合わせて変えたい派かな。メイメイ単推しではあるけど、この曲はサクにゃんの曲だからね。


「うまいうまい。お前はホント賢いなあ」


 クマの花子はボクの頭にしがみつきながらペンライトを振っている。

 たまに「がぅ」って声が漏れているし、きっとライブを楽しんでいるんだろう。これまでの定期公演の時は外の森にいただろうし、完全防音のドームだから外まで音は聞こえなかったよね。つまり花子は≪初夏≫のライブ初体験なんだ! 育ての親に任命されたし、ボクがいろいろ教えてあげるからね。


「わたしにもいろいろ教えてください」


 いや、そこで対抗していないで、レイさんも花子に教えてあげてくださいよ。


「うちにも教えてな~」


「2人とも……ふざけてないで自分の仕事してよ。な、花子」


 コクコク。


「ぎゃぅ!」


「どうした、花子⁉」


 花子が聞いたこともないような悲鳴をあげてお尻をさすって……レイさんがつねってる! 動物虐待!


「教育的指導です。必要以上にかえでくんにべたべたしないようにしてください」


「お尻つねったらかわいそうだよ……。痛かったか?」


「はなこさんがいけないんです。かえでくんの髪の毛をハムハムしていいのはわたしだけです」


 そこっ⁉ 頭にしがみついているのは良いのに、髪の毛はNGなんですか? 基準がわからない……。花子ー、なんか知らないルールを色々一緒に覚えていかなきゃね……。


 コクコク。



 1曲目の『青春=理不尽』が終わり、2曲目に突入する。


「お、いつの間にか2曲目が始まる! ぜんぜんサクにゃんの歌に集中できなかったよ……」


 2曲目は前回公演で大きな話題を呼んだ『すき♡きらい♡すき♡きらい♡スキスキスキスキス♡♡♡』だ。


「この曲は好きにペンライト振っていいからね。フリーダンスってやつさ」


 1曲目の『青春=理不尽』に続き、切ない恋の歌だ。

 しかしこの2曲には決定的な違いがある。


『青春=理不尽』が目の前の相手を想って歌う曲なのに対して、『すき♡きらい♡すき♡きらい♡スキスキスキスキス♡♡♡』は過去の片想いを歌った曲なのだ。

 激しい感情が渦巻く曲。

 過去を想い、あの時ああしていたら、もしかしたら違った今があったのかもしれないと……。今からでももしかしたらと淡い希望を持ち、やっぱりそんなことはないよねと気持ちを落とす。


「好き」と「嫌い」の感情、それに「後悔」がぐちゃぐちゃに混じって、聞いている人の奥底にある何かを揺さぶる。


 ああ、ボクは今を後悔せずに生きられているのだろうか。

 そして過去のボクは――。


「がぅ?」


 気づけば、花子が心配そうにボクの顔を覗き込んでいた。


「ん、どうした? 大丈夫だよ」


 ホントは大丈夫じゃない。

 この曲を聞くと、やっぱり心の奥がざわつくんだ。


 ボクは大切何かを忘れてしまっている。

 何かを思い出せそうで思い出せない。


「うちはこの曲好っきやな~。幼稚園にあった桜の木を思い出すわ~」


 シオがつぶやく。


「初恋?」


「せやな。たぶんやけど。むっちゃ背の高くてイケメンの先生がおったんや……」


「告白しなかったんだ? 意外だなあ」


「うちだって恥じらいの心は持ってるんやで? 先生とは年齢差があるし、迷惑かけたらあかんって……。犯罪者にしてしまうんは忍びないしな……」


「告白が成功する前提なのがシオっぽいね」


 普通に幼稚園児から告白されたら「ありがとねー。先生も好きだよー」的に流すでしょう。そんな引き摺るくらいならどんどん告白したら良かったのに。


「うちは……絶世の美少女やったからな」


 うわっ、反応に困るやつ!

 たぶんボケてるんだろうけど、顔が真面目過ぎて変に笑い飛ばしたら幼稚園児の頃のシオを傷つけてしまうかもしれない……。


「もちろんジョークやで~。何真剣に悩んでるんや」


 シオがカラカラと笑う。


「くそっ、気を遣ったボクがバカだった!」


「ちゃんと告白はしたんやで。結果はもちろん成功や。その後順調に愛を育み、結婚したのが今の旦那っちゅ~わけやな」


「それはどこの世界線の話ですか……」


「かえでくん、知らなかったんですか?」


 と、レイが会話に入ってくる。


「何を?」


「しおりさんは既婚者です」


「えっ、ウソ⁉ マジで⁉」


 知らなかった! あれ、シオって今19歳? 結婚⁉ マジ⁉


「ウソやで~」


「くそー! もうシオの話は絶対真面目に聞かないぞ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ