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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第九章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #6編

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第17話 ホントは背中にファスナーがついていて、中から人間が出てくるんじゃないの?

 テントで一夜を明かし、次の日の早朝。

 早く目が覚めてしまったのでみんなを起こさないように静かにテントから抜け出す。すると、子グマの花子がうれしそうに走り寄ってきた。


「がぅ!」


「やあ、花子。早起きだね。お前はその犬小屋みたいなのがおうちなの? 夏は良いだろうけど、冬は……冬は冬眠するから良いのかな」


 もう朝の5時なのに、木々がうっそうと生い茂っているせいか、なかなか朝日が昇ってこない。真夏なのに半袖では寒いくらいに気温が低いね。焚き火でもしようかな。


『マッチ1本で\コンニチワ/キャンプ素人のあなたにおすすめの焚き付け材~火事にだけは十分に気をつけてくださいね』を使って一瞬で焚き火がスタートできる喜び。サクにゃんありがとうね。


「ふぅ、暖かい。ん、花子、お腹減ってる? ラム肉食べる?」


 たぶん保冷庫に生ラム肉の残りがあるはず……。ないな。牛肉しか残っていない。これを朝食にするとは、なかなかに贅沢だね。


「ほれ、高級な牛肉だぞ。心して食えー」


 お皿に山盛りの牛肉を乗せて、地面においてやる。「なにこれ?」みたいな目でこっちを見てきたので、2回頷いてみせる。すると花子は鼻を近づけて牛肉の匂いを確認。でも手をつけようとはしない。


「あれ……牛肉は嫌い? クマは肉食動物かと思ってたけど違うのかな。いつもの木の実のほうがいいの?」


「がぅ!」


 なになに……ネットの情報によると、ツキノワグマは草食寄りの雑食? ドングリなどの堅い木の実やキイチゴなどを好む、と。ふーん、季節によって食べ物が違うのかあ。一応肉も食べるみたいだけど、花子はまだ赤ちゃんだし食べないのかも?


「じゃあいつものやつをあげるね」


 牛肉を保冷バッグに戻し、袋詰めの木の実(お徳用)を別の皿に山盛り入れておいてやる。


「がぅがぅ!」


 おおー、勢いよく食べだした。やっぱりこっちが好きなのかあ。


「ボクは肉のほうが好きだなあ。それにしても昨日のジンギスカンおいしかった……」


 昨日の夜のバーベキューでは、しっかりタレに漬け込まれたマトン肉のジンギスカンを食べたんだよ。生のラム肉とはまたぜんぜん違う料理だったなあ。こってりでジューシーで、ご飯(臭みを取ったグレーリング飯)が進む進む♪ と思ったら、メイメイが大量のうどんを投下し出してさ、みんなもうけっこうお米を食べてたから「お腹やばい!」ってなったよ。まあ、うどんの9割はメイメイが食べたけど。いや、おしかったんだよ? ホルモンうどんみたいな感じで、タレとうどんが合うんだ。でもボクたちのお腹はさ、宇宙じゃないからそんなに入らないんだよね……。


「あ、火に近づいちゃダメだよ! きれいだけどやけどしちゃう」


 ふらふらと焚き火台に近づいていく花子を抱き留める。


「お前の毛は燃えやすそうだから、近づくのはホント危ないぞ」


 抱き上げてお腹を撫でてやると、喉を鳴らして「ぐるぅ」みたいな音を出してきた。気持ちいいのかな?


「ん、お前ちょっと臭うな……。お風呂で洗おうか? あ、こら。逃げようとするんじゃない。熱いお湯はかけないからさ、ちょっと一緒に温泉行こう。朝一番風呂だ!」


 たぶんボクも臭いからさ……一緒にきれいになろうよ。昨日の夜、食べ過ぎて横になっていたら、お風呂に入れずそのまま寝ちゃったんだよね。まあ、だからこんなに早く起きているってところもあるわけだけど。


「よし、火を消してから温泉行くぞ」


 取り出したのは『いつでもどこでも瞬間消化くん~焚き火の炎もあなたの情熱も』という物騒なスプレーだ。パチパチと音を立てて燃え上がる焚き火に向かって1プッシュ吹きかける。


「すごい。消化しただけじゃなくて一瞬で火の熱も冷めてる。あとは燃えカスを火消し壺に入れて、っと。これで後片づけ終了っと」


 じゃあ花子、温泉行こうか。

 


* * *


「なんだお前。さっきまでお湯を嫌がってたのに、洗ったら気持ちいいんじゃん。ボクより先に温泉に浸かってるじゃんかよ。『がぅ』じゃないよ。頭にタオル乗せて……お前温泉初心者じゃないな? そんなの誰に習ったんだよ……」


 花子が入っているのは比較的温めの浴槽だった。お湯を揺らさないように、そっと花子の隣に座る。


「しっかし、クマっていうより人間の子どもみたいだね。ホントは背中にファスナーがついていて、中から人間が出てくるんじゃないの?」


 背中をもぞもぞ触ってファスナーを探してみる。くすぐったそうに体をよじるだけで、それらしきものは見当たらなかった。


「本物のクマかあ。不思議なやつだな……。ん、なんだ? 膝の上に座りたいの? 甘えん坊だな」


 お湯に揺られながらボクの体を登ってくるので、抱っこして膝の上に乗せて抱えてやる。


「今日は定期公演#6の本番だから、日中はそんなにかまってやれないからね。まあもう1人のレイがいてくれるのかもしれないけど、それはちょっとボクにはわからない」


 今日のお当番はサクにゃんとシオのピンクコンビか。キャンプ組じゃないし、どんな準備をしているのかわからないな。


「当日組はお昼過ぎに到着かな。まだまだ時間はあるから、それまでは一緒に遊ぶか!」


 こらこら、急に喜びの舞を踊るんじゃないって。お湯が跳ねてすごいことに。ほかのお客さんがいる時にやったらマナー違反だぞ? って、誰もいない時じゃないとクマは温泉入れないか。

 

「さあ、そろそろ出ようか。さすがに日も上がってきただろうし、みんな起きてくるでしょ。それにお前は毛が多いから、乾かすのにも時間かかりそうだ……」


 ちゃんと乾かさないと風邪ひいたら困るからね。

 しっかりドライヤーをかけてからブラッシングをしてあげるよ。


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