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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第九章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #6編

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第16話 花子にエサをやっておいてくれ。以上だ

 ボク、メイメイ、ハルル、レイ、ウーミーの5人は引き続きドーム前でキャンプ中だ。

 日が傾きかけた頃。

 夕飯の準備が始まってしばらくして――。


「臭っ! 何この生臭さはー!」


 ガスコンロのほうからほのかに香ってくる何とも言えない臭い……。

 犯人はウーミーだ。


「ウミ……まさかあなたホントに……」


 ハルルがウーミーのかき混ぜている鍋を覗き込んでから、口元を押さえて戻ってくる。


「ハルル……。もう言わなくてもわかったよ……」


 ちょっとボクが話をつけてくるから、ハルルはメイメイのジンギスカンの準備を手伝っていて……。



「あのさ、ウーミー……。夜は普通の白米にしようって……」


 ウーミーがかき混ぜている料理は……グレーリング飯だ。

 だいたいどこで手に入れたのよ、その魚。日本には生息してないんだし、手に入らないでしょ?


「ええ……。わたくしはやめましょうと……。ですが、零さんが無理やり……」


 ウーミーが泣き崩れる。

 ちなみに鼻を大きな洗濯バサミでつまんだ状態だ。

 

「少し前、先輩と一緒にユーコン川のDVDを見て盛り上がりました。その時に先輩は『わたくしもユーコンのような大自然の中で料理をしてみたいですわ~』とおっしゃったんです」


 レイさん、さすがウーミーのモノマネうまい。

 もうボイスチェンジャーこと『脳波信号・音声変換くんType-A』はいらないですね。モノマネした時の声がそっくりだよ。


「ですから昼間、ムース汁を作りましたわ……」


「いいえ、それだけでは不十分です。ユーコンといえばグレーリング飯。これがなくてはわたしたちのピートが悲しみます」


 いや、たぶんピートはグレーリング飯を作ったほうが悲しむと思うよ……。むしろ食事で遊ぶなって怒るかもね。


「わたくし……こんな料理作りたくありませんでしたわ……」


「先輩。このグレーリング飯はとても良い出来だと思います。この生臭さをよく再現してくださいましたね。合格です」


「こんなことで合格したくありませんでしたわ~」


 鼻声(洗濯バサミ付き)のウーミーが涙をこぼしながら走り去っていく。

 ああっ、不憫すぎる……。しかし、ウーミーはいったい何のコンテストに合格したんだ……?

 

「レイ……再現するのは良いんだけどさ。これだと生臭くて食べられないんじゃ……」


 せっかく作ってもらって悪いんだけど、明日定期公演だから、みんながお腹壊したら困るし、処分ってことでいいかな?


「いけません。生ごみをだしたりしたら、野生動物が……クマが寄ってきてしまいます!」


 いや、ここは日本だからね。

 ユーコン川みたいな……え、マジ?


「マジです。もちろんユーコン川のようなグリズリーはいませんが、日本の本州にはツキノワグマが生息しています」


「ツキノワグマ! ヤバいじゃん! えっと……ボクたちこんな山の中でキャンプしていて平気なの?」


 ここは一応本州なのはわかってるんだけど、具体的にどこの県の山なのかやっぱりよくわかってないんだけど……。


「テントの中に甘いものを持ち込まなければおそらく平気です」


 おそらくって言った!

 クマはいないって言わないんだ⁉ ホントにクマが出るんだね⁉


「申し訳ございません。今までみなさんには隠していましたが、師匠から言伝があります」


 うわー、この流れで絶対聞きたくないやつ!


「『花子にエサをやっておいてくれ。以上だ』です」


「ん? 花子? エサ? このドームでペットでも飼ってるの?」


 普段は無人のドームじゃなかったのかな。

 それにしても麻里さんがペットね。ちょっと意外だわ。


「こちらがはなこさんです」


「黒くて小っちゃい……。子犬?」


「ツキノワグマの子どもです」


「クマおるやん! しかも飼ってるぅ!」


 なんかレイにめっちゃ懐いてるし。


「どうやら親クマからはぐれてしまっていたらしく、師匠が保護してこちらの施設で世話をしているとのことです」


「な、なるほどね……。ええーでも、親クマが取り返しに来たりしないのかなあ。ちょっと怖い……」


 いや、ちょっと待って? ここで飼ってるって言った?

 麻里さんはここに通ってるってこと?


「普段はわたしが世話をしています」


 あー、はい……。

 レイは2人までってルールは、こうしてなし崩し的に破られていくんですね。


「特別任務ですから」


 でもまあ、毎日世話をしているなら、これだけ懐いているのも頷けるわ。


「ちょっとボクも撫でてみていい? 噛んだりしない?」


「大丈夫です。毎日かえでくんの大切さ、尊さを教え込んでいますから」


 子グマに何してくれてんのさ……。

 あれ? なんかモジモジしてる。人見知りかな? かわいい。


「はなこさん。これが本物のかえでくんですよ。今日だけは甘えるのを許します」


 レイが小さく頷いて見せると、クマの花子がゆっくりとボクに近寄ってくる。ボクもしゃがんでお出迎えしてみる。


「おお! おとなしい! かわいいー」


 めっちゃ撫でさせてくれるじゃん! お腹見せて寝ころんで。犬みたいだなあ。すっごい毛深いけど。


「芸も仕込んでいます。見ますか?」


「お、うん。どんな芸かな? お手とか?」


 クマって犬とか猿みたいになんか芸ができるんだ?


「はなこさん。いつものをお願いします」


 ワクワク。


「チピチピチャパチャパ~ドゥビドゥビダバダバ~」


 猫ミーム!

 クマが猫ミーム!


「ストップストップ! 何やらせてるのさ⁉」


「はなこさんはこの曲が好きなので、いつも一緒に踊っています」


「そうなの? お前、チピチピチャパチャパ好きなんだ?」


 うれしそう……。変なクマ……。


「でも、あんまり変なことは教えないようにね……。いつか野生に返す時に困るから……」


 うれしそうにボクの足を登ってくるあたりを見ると……なんかもう手遅れな気もするな……。


「あ、そうだ。グレーリング飯どうするのさ⁉ 何とか臭みを取らないと……」


「臭みはとっておきました」


「えっ? あれ……そういえば生臭くない。もう鼻がバカになっちゃったのかな……」


「違います。さくらさんに調合してもらった『魚の臭み消えるくんα~生乾きの臭いも、お父さんの加齢臭もね』を1粒投入しておきました」


「えっと……大丈夫なの、それ?」


 その取れる臭み……食べ物とそうじゃないものが混じっているけど……。


「2人とも~。ジンギスカン第2弾始めますよ~」


 メイメイのボクたちを呼ぶ声が聞こえてくる。


「はーい! 今行くー!」


 仕方ない。

 この臭みの取れたグレーリング飯も一応持って行くか……。

 あーでも、焼うどんもあるんだっけか……。


 お、花子も一緒に行くか。

 みんなに紹介しないとね。


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