第7話 糸川海生誕祭2024&1st Anniversary その4~金属製のビキニアーマーに聖剣エクスカリバーを携えて
「3回戦始めますわよ~」
え、もうウーミーがスタジオに入ってきた?
今の本部からの音声によると、ちょっと裏の控室でレイとトラブルになっていたような? なんだか切り替え早いな。
「おい! ここはどこなんだ……? 常に敵襲に備えなければ!」
周囲を警戒するように、低く腰を落としながらウーミーが入ってくる。って、この格好は!
「私の部隊はどこだ⁉ 私の優秀な部下たちはどこへ……。ま、まさかお前たちが⁉ 私のことをどうするつもりだ……衆目に晒して辱めるつもりだな⁉……くっ、殺せ!」
お、女騎士のくっころさんだ!
『ナギチをさがせ!』の時に登場したくっころさんのコスプレだ! 金属製のビキニアーマーに聖剣エクスカリバーを携えて。ウーミーめちゃくちゃ似合うなあ。やっぱりくっころさんは金髪に限るね。
“くっころ!”
“王道!”
“いいやん”
“さっきと比べて露出はそこまで高くないのに妙にエロいw”
“もう何でもよくなってるだろw”
“足が良い”
“腰が良い”
“くっころせ!”
“もっと辱めたい”
“ウーミーのコスプレいい”
“オーク似の俺歓喜”
“お、おう……がんばって生きろよ”
“応援してるぞ”
“男は顔じゃない”
“オークいけるよ!”
“心までオークになるな!”
“がんばれ”
“突然オークを励ますスレにw”
「やめろ! そんな汚い手で触るな! 汚らわしいゴブリンどもめ!」
だからさ、急に1人コント始まるのなんなの?
女騎士なら定番のオークと戦おうよ? ゴブリンって……まあそれでもいいけどさ。
「触るな! 私はかの有名な女騎士だ! どうだ、参ったか! 怯まない、だと……」
そりゃそうでしょ。魔物に言葉は通じない。しかも有名な女騎士って……誰だよ、ちゃんと名乗れよ!
「くらえ! ファイヤーボール!」
ちょーっと! 女騎士が魔法を使うんじゃない! お腰につけたその立派な剣で戦って! まったく抜く素振りもないけど、そのエクスカリバーは飾りなの⁉
「今のはメラゾーマではない……メラだ!」
ウーミーのキメ顔。
カメラ目線で3秒。そしてボクたちのほうを向いて3秒。その場で1回転してから3秒。 最後にハルルの正面に立って5秒。
「ぶっふぁっ! ウミ! それはずるいわよ!」
ハルルが堪えきれず、口から水を吹いてしまった。
えーハルルさん、またですかー?
“オレも負けたわw”
“がっつりファイヤーボール言いましたやんwww”
“もう無茶苦茶だw”
“せめて剣使えよwww”
“ウーミー意外と演技いけるな”
“真面目な顔でふざけるのずるいわ”
“お前ハルルか?w”
“ハルル降臨w”
“残念。オークでした”
“オークかよ!”
“紛らわしいwオーク消えろw”
“オーク〇ねw”
“オークゆるさねーw”
“急に始まるオークバッシングwww”
「よし、1匹メスゴブリンを倒したわ。わた……余は満足じゃ。さらばだ。……くっ、殺せ!」
ガッツポーズのくっころさん(ウーミー)がスタジオを去っていく。
またもやゲラのメスゴブリン(ハルル)を撃墜して満足そうだ……。
* * *
「おいー! ハルルー! いい加減にしなさいよ⁉」
「春さん、あれはさすがにガマンしましょう! サクラだって耐えましたよ!」
「ハルちゃんまたリーダークビになっちゃいましたね~」
「このメスゴブリンがっ! ギャラクシーメラゾーマ☆」
みんなで取り囲んで、ハルル総バッシング。
「面目ないです……」
正座して下を向くハルル。
さすがに今回はがっつり反省したほうが良いと思う!
「どうする、みんな? もう2回目だし、ハルルはこのまま卒業で良いんじゃない?」
「そんなっ!」
「しずかに。卒業メスゴブリンは黙ってて!」
「ううっ……」
涙をポロポロとこぼしながらスカートの裾をギュッと押さえている。
うむ……今日もハルルの泣き顔はかわいいな。あと3回は卒業させられる。あ、でも3回目でホントに卒業か……。
「ハルちゃんも反省してますから、みんなで助けてあげましょうよ~」
メイメイが助け舟を出す。
やさしいな。さすが天使は心が広い。
「ハルちゃんハルちゃん」
「ありがとうサツキ……。私の親友!」
抱き合う2人。
「あと1、2……3回卒業できますね~」
指を折って数えるメイメイ。
やっぱりおもしろがっているだけでした。
小悪魔天使メイメイ!
「よ~し! みんなでハルにゃんを3回卒業させるぞ~☆」
「サクラがんばります!」
七変化の主旨変わっちゃってるじゃん。
ちなみに3回だと復活できないからね? 笑うのは2回までにしておかないとホントに卒業になっちゃうからね? まあそれはそれでおもしろいから良いけどさ。
「サツキ……みんな……。こわい……」
震えあがるハルル。
でもね、生殺与奪はボクたちの手にあるわけですよ。
フハハハハハハ!
「それでは張り切って4回戦を始めます」
お、次が始まるね。
折り返しの4回戦か。
この調子でがんばるぞー!
「こんにちは。糸川海です」
音もなくゆっくりとスタジオに入ってくるウーミー。
えっと、ウーミー……?
ホントにウーミーか?
ねえ……どこからどう見ても、レイさん……ですよね?
「みなさん、驚かれた顔をされていますが、どうしましたか?」
いや、だってさ……レイでしょ?
「いいえ。わたしは糸川海です」
今さ……ボクの心の声に返事したよね?
あ、今も一瞬「しまった」みたいな顔したよね?
ちょっとレイさん、どういうことですか⁉




