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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第八章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #5編

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第24話 定期公演#5 その3~すき♡きらい♡すき♡きらい♡スキスキスキスキス♡♡♡

「は~い、次の曲を歌いたいと思います! サツキ、次は何だっけ?」


「えっとね~。まだどこにも発表していない新曲をやっちゃいますよ~!」


 メイメイの言葉に、異常な盛り上がりを見せる観客たち。コメント欄もありえない速度で流れていく。

 先行配信やミュージックビデオを公開せずに、ライブで新曲を初披露するのは初めてのことだからね。みんな驚いたでしょう?


「ドキドキのタイトルは~」


 5人で手を繋いで並ぶ。顔を見合わせて――。


「「「「「『すき♡きらい♡すき♡きらい♡スキスキスキスキス♡♡♡』」」」」」


 会場が暗転。

 一瞬の静寂の後、前奏が始まる。


 テクノサウンドに合わせて、5人がそれぞれ自由に踊りだす。

 緩いダンスミュージックだ。


 さあ、これを見ているみんなも立ち上がって。

 初めて聞く曲でも大丈夫。誰もがゆったりと乗れるリズムだよ。


 画面の前で座ったままでもいいよ。

 リズムに合わせて一緒に体を揺すろう。


------------------------------

今思い出してもわからないの

あなたはあの時なぜあんなことを言ったの?

雪降りしきる校庭に1人

あなたはあの時どんな気持ちだったの?


思い出すのは淋しそうなあなたの顔ばかり

あなたはあの時なぜあんなことを言ったの?

桜が舞い散る校庭に1人

あなたはあの時どんな気持ちだったの?


好きなの あなたのことが好きよ好きなの

嫌いよ あなたのことが嫌い嫌いよ

好きなの あなたのことが好きよ好きなの

嫌いよ あなたのことが嫌い嫌いよ


すき♡きらい♡ すき♡きらい♡

すき♡きらい♡ すき♡きらい♡

すき♡きらい♡ すき♡きらい♡

すき♡きらい♡ すき♡きらい♡

すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき

スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキス


ずっとすき

------------------------------


 淡い恋の歌。

 曲が進むにつれ、感情が濁流のように溢れ出てくる、激しい恋の歌。

 きっと両想いだったのに、お互いに声をかける勇気が出なくて、そのまま卒業してしまった、切ない恋の歌。


 何年か経ってからも思い出す。

 ああ、今でもあの人のことが好きなんだって。


“なにこれ……”

“せつねぇ”

“ダメだ昔を思い出しちまう”

“何お前ら恋してんのか?”

“おれは一生サクラ推し”

“ブレないお前がスキスキスキスw”

“あの子元気にしてっかな……”

“地元帰りてぇ”

“会いたい”

“ちょっと青春野郎は出て行ってくださる?”

“おい、ケンカするなよ楽しくやろうぜ”



 コメント欄、いつもと違う方向で荒れてるなあ。


 初めてこの曲のデモテープを聞いた時のことを思い出すね。

 その場にいた全員、それぞれ違う反応を示したのが、この曲の特徴なのかもしれない。


 自分の過去に重ねる人。

 まだ見ぬ誰かに想いを馳せる人。

 今を見つめている人。

 一歩引いて噛みしめる人。

 感情移入しすぎて泣きだしちゃう人。


 10年後に聞いたとしたら、それぞれきっとまた違う感情で、違う想いが込み上げてくる。

 そんな曲なのかもしれないね。


 ん、ボク?

 ボクは――。


 この曲を初めて聞いた時、頭の奥のほうがチリチリと痛んだんだ。

 なぜだかわからない。


 たぶん、もう存在しないはずの記憶――欠損してしまったボクの記憶の残滓がうずいた……のかもしれないね。正直わからない。でも、頭の深いところがチリチリと痛んだんだ。


 ボクがこの曲に抱いた印象は≪赤≫だった。 

 なぜだか赤い曲だって思った。


 ぜんぜん悪い印象はなかったよ?

 切ないなって気持ちと、どこか漠然とした焦りを感じるような……うまく表現できないや。


 そういえば≪初夏≫の5人は、みんなで話し合って、ステージ上でパフォーマンスする時は、「楽しい雰囲気」を出そうということになったみたいだね。曲の解釈は人それぞれ違うけど、パフォーマンスの時にはみんなの感情を合わせていかないといけないからね。


「好き」を楽しく表現して、爽やかな失恋ソングに仕上げようってことにしたみたい。たくさんの人に見てもらうにはそれが良さそうだってボクも思った。


 でもやっぱりこの曲は、パフォーマンスだけでは隠し切れない何かを感じてしまう。「好き」と「嫌い」の感情、それに「後悔」がぐちゃぐちゃに混じって、聞いている人の奥底にある何かを揺さぶってしまうんだ。


 あの時、ああしていれば、もしかしたら今は――。


 誰にでもあるだろう後悔。

 だけどいくら後悔したとしても、過去へは戻ってやり直すことはできない。


 じゃあボクは何なんだ?


 あの伝説の武道館ライブが成功した後、まるで消えるように消息を絶ったメイメイ。 

 

 ボクはそれを止めるためにここにいる。


 

 ボクは過去をやり直しているのか?


 やり直せているのか?

 



 わからない。




 ボクは今、何かを成せているのだろうか。


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