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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第八章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #5編

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第15話 ちょっと思ったんだけど、その子ってサイキック使えたりする?

 とある平日の夜。

 ボクは食堂に、その子を呼びだしていた。


 宮川その子は、MINAさんの元ストーカーにして、メイメイの熱心な最古参オタ。またの名を『サイキック@メイメイ単推し』という。そしてまあ、ボクのボッチ仲間(勝手に認定)だ。

 ストーカー事件の時に話をしてから、ずいぶんとおとなしいけれど、メイメイのポストに対する反応RTAは常に上位入賞をしているのでたぶん元気にしているのだろうということで、顔を見がてら呼び出してみたわけだけど。


「お、きたきた。その子ひさしぶりじゃんかー。元気にしてた?」


 無表情のまま現れたその子に軽くアイサツをしてみる。


「ええ、まあ。おかげさまで……」


 その子は相変わらずの格好だった。襟首の伸び切ったTシャツに薄汚れたエプロン姿。The作業着スタイルだなあ。


「ちょっと思ったんだけどさあ、その子ってサイキック使えたりする?」


「……楓さん、いきなり何言ってるんですか……?」


「いや、名前が『サイキック@メイメイ単推し』だし、サイキック使えたりするのかなって?」


「ホント何言ってるんですか? 人間がそんなの使えるわけないじゃないですか」


 その子が若干バカにしたように大きなため息をつくと、そのままボクの向かいの席に座った。ボクの前と、その子が座った席には、シェフ特製のプリンアラモードが鎮座している。


「じゃあなんだよ! 使えもしないのに『サイキック』名乗ってるのかよ! キックさんに謝って!『今夜も俺のKO負け。以上、See you next fight.』って言えよ!」


「なんですかそれ……」


 底冷えしそうなほどに冷たい視線。

 

「え……あの超人気お笑い芸人のキックさんを知らないの?」


「……誰ですかそれ?」


 あ、この反応、ボケてるわけじゃなくてホントに知らないパターン?


「キックさんを知らないのに『サイキック』名乗ってたの?」


「わたし、お笑い嫌いですし」


「な、なぜ……」


「お笑い芸人の人たちって、すぐアイドルに色目使うし、それになんか汚いし……」


 そうだった。

 その子は、少し潔癖症なところがあって、基本的にはいつも綿の手袋を外さない。服飾関係の仕事柄、手をとても大切にしているという建前ではあるらしいけど。でもなあ、潔癖症なくせに、普段の服装は毛玉だらけのニットにエプロン姿で清潔感とは程遠い存在……。


「汚いって……そういう人もいるかもしれないけど……業界全体を否定するのはどうかと思うよ? 業界の人から怒られても知らないからな」


 かっこよくて清潔な芸人さんだっている、はずだからね? パッと名前出てこないけど! きっといるから! あー、お笑い芸人最高ー! ボクはお笑い芸人の人って清潔感があるからすっごい好きだなー。


「それで、今日は何の用事なんですか?」


「用事がないと呼んじゃダメなの?」


「ダメですね」


 取り付く島もないとはこのことか。

 (便利な)友人だと思っているのはボクだけか。


「メイメイのプライベートヨガ写真でも見せてあげようかと思ったんだけどなあ」


「わたしは何をしたらいいですか? 鉄骨渡りですか?」


 おい、サイキック。手のひら返しがすぎるぞ。

 鉄骨渡りって、ボクがそんなに鬼畜に見えるというのか……。


「実はですね。ファンクラブ会員No.000000036のサイキック@メイメイ単推しさんにお話をお伺いしたいなあと思いまして……」


 揉み手で下手に。

 とりあえずは、せっかく注文したプリンアラモードでも食べようじゃないの。裏メニューじゃなくて表メニューの普通サイズのやつだけど、シェフのスイーツはおいしいよ?


「わたしの会員ナンバーまで把握しているんですか……それって越権行為では?」


「変なファンがいないかチェックするのもマネージャーの仕事ですぅ。一番ヤバそうなファンの状況を肉眼で確認するのもマネージャーの仕事ですぅ」


「わたし、帰っていいですか?」


「まてまて。一番熱心なファン、の間違いだったわ。その子様の協力が必要なんだ! 頼みます! この通り!」


 ハイハイハイ、ハイ! Ready fight!


「まだキックのネタを引っ張るんですか?」


「なんだ、やっぱり知ってるんじゃん」


「今調べました」


「今っていつ⁉ 今の今までボクとずっと会話してたじゃん⁉」


 そんな隙なかったじゃん⁉

 まさかサイキックじゃなくて分身を⁉


「チラッとです。楓さんがトイレに行った隙に」


「ぜんぜんトイレ行ってないですけど⁉」


「いいじゃないですか、細かいですよ。さっさと本題に入ってくださいよ」


 ぜんぜん細かくない気がするんだけど……。



「えっとねー、実は折り入って相談があるんだ。次の定期公演の話なんだけど……あれ、その子どうした?」


 急に耳をふさいで大声出したりして。


「ネタバレはやめてくださいよ! わたし、純粋にファンとして定期公演の配信を楽しみにしてるんですから! 前日から体調を整えて、滝に打たれて精神統一をして、万全の態勢で臨んでいるんです。わたしの生きる希望を奪わないでください!」


「生きる希望って大げさな……。いや、さすがに定期公演自体の話はしないよ。それはその子相手じゃなくても、ネタバレをしたりするわけないじゃない」


 ボクは≪初夏≫のマネージャーですよ?

 しかも今回はお当番回で出演もするわけだから、超関係者ですし。


「今日相談したいのは、会場となるドームまでの移動の時の話なんだよ」


「移動の時の話、ですか?」


 その子がスプーン片手に小首をかしげる。いいよいいよ、遠慮しないでプリンアラモード食べながら聞いてね。


「前回くじ引きにしたらえらい目に合ってさ……」


 とまあ、かいつまんであの時の阿鼻叫喚、ゾンビの徘徊するSAサービスエリアの様子を伝える。


「ひどい……。みんなメイメイに迷惑をかけないで!」


「いや……まあ、メイメイは被害者側ではあるので、その反応は合ってるっちゃあ合ってるんだけど、ボクとしては全員ゾンビにならない状態で会場まで送り届けたいと思っているわけで」


「楓さんはメイメイ単推しじゃないんですか?」


「もちろん単推しだけどさ……マネージャーとしての仕事もあるというか、つらい立場なんすわ……」


 ファン活動だけでは割り切れないこともあるのですよ。

 ゴリラとかギャラクシーの体調管理もしないとね……。


「くじ引き以外の組み分けで、なんかこう、平和にみんなが楽しく移動できる方法ってないかなーって」


 レイはボクたちのお当番回の準備のためにいろいろ動いてくれているから、ほかの仕事はできるだけボクがやっておこうかなって思っているんですよ。


 知恵を貸してくれ、その子!


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