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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第八章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #5編

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第12話 親子で楽しむ演劇~雨の雫と妖精と~その5~安心安全の黒ちゃん印(終)

「みんな、『雨しりとり』を一緒にやってくれてありがとうね~!」


 舞台に上がってくれた6人の子どもたちを、それぞれ保護者のところまで送っていく。


「お姉ちゃん! 優勝したからカレーパーティー!」


「お、おう……ちゃんとパパに聞いて良いよって言ったらな……」


 さすがにまだ覚えてたか。

 困ったなあ。

 でも、さすがにパパさんも、いきなり知らない人を読んでウーバーカレーパーティーにOKは出さないでしょ。


「じゃあ、またね」


 手を振ってイエロー少年と別れる。


「パパただいま! 優勝したよ~! お姉ちゃんがね――」


 あれ? イエロー……普通に家族3人で談笑してるじゃん。イエローのパパの隣にいるのって……? ママがいないって言ってた……いつもウーバーで食事してるって……あれ? ボク今、何か見えちゃいけないものが見えてる⁉


 こわっ。

 見なかった振りをして舞台に戻ろ……。



「さてさて~、お次は~、と言いたいところだけど、しりとり盛り上がりすぎちゃって、もうお姉ちゃんたち妖精の国に帰らなきゃいけない時間だわ!」


 おっと? 競馬はなし? 予想シート配っちゃったのに? レイの力作が……。


 子どもたちから大ブーイング。

 もっと遊びたかったよね、ごめんね。


「めんごめんご~! お姉ちゃんたち、また遊びに来るからさ~!」


「ごめんね、みんな」


「私も悲しいです~。みんなとスイーツ大食い対決したかったです~」


 いや、そういうのは予定してないから。

 メイメイが余計なこと言うから、「スイーツ?」「大食い?」って会場がざわざわしちゃってるじゃん。


「出口のところでお土産を用意していますから、1人1個もらって帰ってください」


 レイさんそんなの準備してたんですか?


「競馬予想の参加賞ということで、少量ですがお菓子の詰め合わせを用意しました」


「さすが。マネージャーの鏡!」


 ぜんぜんそんなことに気が回らなかったよ。予想当たった子だけじゃなくて全員に参加賞が必要だよね。そのほうがうれしいに決まってる!


「黒ちゃんからも、みなさんにささやかなプレゼントをご用意しました。受付で受け取って帰ってください」


「おい、何を言って!」


 とうとう何か仕掛けてくるのか⁉

 まさか爆弾か⁉

 子どもたちの手に渡る前になんとか回収しなければ!


「こちら、黒ちゃん缶バッチです。どうですか? かわいいでしょう?」


 ボンバー仮面V3が自分の胸元を指さす。

 そこにはいつの間にか、大きな缶バッチがついていた。真っ黒な丸い金属に、赤い文字で「V3」とデザインされたシンプルなもの。ピカピカの金の台紙とシリアルナンバーまで入ったオリジナルグッズ、だと……。


「そんなの子どもたち渡せるわけが――」


「安心安全黒ちゃん印の缶バッチです。安全ピンではなく、クリップ式にしてあるので、小さなお子様でも安心してご利用いただけます」


 そんな心配をしているわけじゃない!

 毒が塗ってあるとか、触ったら爆発するとか!


「かえでくん、缶バッチですが、受付にある分すべて異常はなさそうです。爆発物や毒物などは検知されませんでした」


 マジで……。

 コイツはホントに何を考えているんだ……。ただのプレゼント? そんなわけないでしょ。何かたくらみがあるはずなんだ!


「特別にみなさんの分も作っておきました。これは白ちゃん――」


 それぞれの特長を表した缶バッチを1つずつ手渡していく。

 何なんだ、ホントに……。


「これは蒼ちゃんにどうぞ」


「ちょっと!」


 寸でのところで間に割って入る。

 メイメイと接触なんてさせないぞ!


「これはボクがチェックさせてもらう」


 ひったくるように蒼ちゃんバッチを奪い取る。

 どうだ? 何か仕掛けが? 発信機か?

 見た目何もない。でもまだ安心はできない。


「レイ、これは平気か確認お願いできる?」


 レイに手渡し、最終確認。


「異常ありません。ただの缶バッチのようです」


「安心安全黒ちゃん印です。はい、これは藤ちゃん、そして黄ちゃんに」


 くそ……。

 力なく缶バッチ(シリアルナンバー00001)を受け取る。


 ボンバー仮面V3がマントを翻し、観客席のほうに向きなおる。


「みなさん、今日はとても楽しかったです。黒ちゃんと、そしてここにいる5人のかわいらしい妖精のお姉さんたちと遊んでくださってありがとうございました。これからも健やかに、お父さんお母さんの言うことをよく聞いて、立派な大人に育って行ってくださいね。本日はお越しいただきありがとうございました」


 すべてのセリフを言いきり、ボンバー仮面V3がゆっくりと丁寧に頭を下げる。


 万雷の拍手。


 子どもたちはご両親とともに席を立ち、満足そうに帰っていく。

 ボクたちはそれを目で追うしかなかった。


 気づけばボンバー仮面V3はなく、舞台上にはボクたちの妖精だけが残されていた。



≪楓⁉ 楓⁉ お願いだから応答して!≫


 ウタ……。


≪やっとつながった! 何があったの、そっちの状況は⁉≫


 ヒステリックに叫ぶウタの声を聴きながら、ボクはいったい何をどう説明すればいいのかわからずにいた。


 これじゃあ、ボクたちの完全敗北じゃないか……。


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