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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第八章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #5編

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第11話 親子で楽しむ演劇~雨の雫と妖精と~その4~白熱の雨しりとり

「じゃあ、しりとりを始めるよ~。最初の手拍子のリズムはゆっくりね。これくらいの速度で~」


 パン、パン。

 マキが手拍子でお手本のリズムを刻んでいく。


「しりとりの言葉を考えて言うのは、わたしたち妖精さんじゃなくて、舞台上のお友だちにお願いするからね~。リズムに合わせて大きな声でよろしく~! どうしても思いつかなかった時だけ、妖精さんにバトンタッチしてね」


 舞台上の子どもたちがコクコクと首を縦に振って頷く。

 自信がありそうな子、緊張してそうな子、それぞれだけど、みんながんばっていこうね。

 ボク、黄ちゃんのパートナーは、黄色いTシャツのちょっとぽっちゃり体系の男の子だ。……この子、めっちゃぼんやりしてる! 不安だ!


「おーい、キミ大丈夫? しりとりできそう?」


 小声で話しかけてみる。

 

「お腹減った……カレー食べたい」


 おい! カレー! まさかの見た目通り! お前が初代イエローなのか⁉


「カレーは……今はないかな……。あとでお母さんに作ってもらうのはどう?」


「ママはいない。パパときた」


 おう……複雑な家庭なのか。でもそんなに気にした風でもなさそう。


「そっか。じゃあご飯はいつもパパに作ってもらうの?」


「パパは仕事忙しいから、いつもウーバーイーツだよ」


 おう、つらい……。

 なんてつらいんだ……泣けてきちゃう。


「そっか……。じゃあ今日がんばってしりとり対決で勝ったら、ウーバーイーツでカレーパーティーだね」


「お姉ちゃんも一緒にカレーパーティーする?」


 期待に満ちた純粋な目で見つめられてしまった。


「えーと、お姉ちゃんは……どう、かなー。このあとお仕事があるかなーとか」


 こういう場合どう答えたら傷つけずに断れるの⁉

 誰か教えて!

 って、レイと念話がつながらない!


「ボク、がんばって優勝するから、一緒にカレーパーティーしようよ」


「えーと、そうだね……。パパがいいよって言ったら、かな?」


「わかった! 優勝してパパに頼む! がんばるぞ~! お姉ちゃんに優勝をささげるぞ~!」


 イエローが急にやる気に!

 そんなにカレーが食べたいのか! さすが初代イエロー!


「お姉ちゃん!」


「ん、何?」


「優勝したら一生僕とカレーパーティーしよう!」


「いや、それはちょっと……」


 プロポーズっぽいじゃん。

 しかも一生カレー……。


「じゃあ優勝したら結婚しよう!」


 完全にプロポーズじゃん!


「それは困る……」


 面倒な子に絡まれてしまったぞ……。誰か、助けて!

 レイに視線を送るも、まったくこっちに気づいてくれない。


「それは困りますね。黄ちゃんは私、黒ちゃんと結婚する約束をしているのですよ」


 と、黒ちゃん(ボンバー仮面V3)が話に割り込んできた。


「おい! お前何を言って!」


「おやおや、照れ隠しですか。黄ちゃんはいつも本当にかわいいですね」


「お姉ちゃん、コンヤクシャがいたの。末永くおしあわせにね!」


 あっさり身を引くイエロー。

 イエロー、それは誤解だ! あと、潔すぎるぞ! 本番のプロポーズの時はもうちょっと粘れよ!


「黒ちゃんが勝ったら、黄ちゃんと結婚しましょう」


「お前は黙ってろっ!」


「ははは。黄ちゃんは昔からずっとかわいいですね」


 なんなんだ、コイツ……。

 まさかボクを助けたつもりなのか。不快でしかないんだけど……。



* * *


「は~い、じゃあこれから本番の『雨しりとり』を始めるよ~! 今の練習の感じで、雨か水に関係する言葉を大きな声で言おうね」


 子どもたちが元気よく返事する。

 意外と言ったら失礼なのかもしれないけれど、普通のしりとりだと誰も詰まったりとちったりする子がいなくて、勝負はつかず3周目に突入したところでマキが途中終了を宣言したくらいだ。『雨しりとり』になっても、長期戦になるかもしれないね。


「おしっ、イエロー! なかなか良かったよ! この調子でがんばろう!」


「イエロー?」


「キミ、黄色いTシャツを着てるからさ。あとカレー好きなんでしょ?」


「うん! カレー大好き! お姉ちゃんもかわいいから好き!」


「お、おう……」


 ちょっとドキッとするじゃんか。

 このくらいの年齢の子って、怖がらずに好き嫌いがはっきり言えていいなあ。毎日が楽しそうだ。ボクもこれくらいの時には好きな子がいたりしたのかな……。よく思出せない。



「白ちゃんから始まる~、『雨しりとり』! 最初の言葉は『あ~め』」


 パン、パン。

 

「めだか!」


 白ちゃん(マキ)の前の子が元気よく大きな声で叫ぶ。

 パン、パン。


「かたつむり!」


 朱ちゃん(ハルル)の前の子が叫ぶ。

 パン、パン。


「り、竜宮城りゅうぐうじょう!」


 蒼ちゃん(メイメイ)の前の子。いや、難しいの言ったな!

 パン、パン。


「うみ!」


 藤ちゃん(レイ)の前の子。

 パン、パン。


 おし、イエローいけ!


「みず!」


 いいぞ、イエロー!

 パン、パン。


「ずわいがに!」


 黒ちゃん(ボンバー仮面V3)の前の子、やるな!

 『す』でもいいのに、『ず』のままできた。

 パン、パン。


「に、に、……パス!」


 白ちゃん(マキ)の前の子が悩んだ挙句、ぎりぎりにパス!

 おっと⁉


「おお⁉ わたしか!」


 完全に油断していたマキにバトンが渡る。

 パン、パン。


「に~~~~わか雨!」


 パン、パン。


「「審議! 審議!」」


 ハルルとボクが同時に手を上げる。

 審議ランプが点り、ゲームは中断だ。


「なによ! なんか文句あるのか~⁉ おおん、こらぁ⁉ カレー、こらぁ⁉」


 シンプルな恫喝。

 妖精さんがそんな態度取って良いわけ?


「『雨』ってついてるじゃん。雨は最初に言った言葉だから失格でしょ!」


「そうだそうだ~! 白ちゃん失格よ!」


 ハルルが援護のヤジを飛ばしてくる。


「雨とにわか雨は違うでしょ! ねえ、みんな?」


 会場の子どもたちに問いかけるマキ。


「おなじ~!」「雨だから一緒~」「雨!」「一緒!」と大多数の子どもたちから反対の声が上がる。


「ほらね。みんな雨とにわか雨は一緒だってさ。はい、白ちゃん失格!」


「う~。お姉ちゃん間違っちゃったみたい。ごめんね。あなたは悪くないよ」


 マキが屈んで、今にも泣き出しそうなパートナーの女の子を抱きしめる。

 おっと、やりすぎてしまったか……。ごめんごめん。


「じゃあじゃあ、2回戦やろうよ!」


 切り替えていかなきゃ。


「お~し、次は負けないぞ! 2回戦やろう! 1回戦で使った言葉はもう使っちゃダメだからね!」


 回を追うごとに難易度が上がるシステムだ。

 白熱するね。


「じゃあ最初の言葉は……『氷』からいこうかな! 白ちゃんから始まる~、『雨しりとり』! 最初の言葉は『こおり』」


 パン、パン。


「りゅうすい」


 パン、パン。



 と、まあ、意外や意外。

 白熱しまくった『雨しりとり』は、なんと10回戦まで行われたのだった。


 勝敗?

 そ、そんなのどうだっていいじゃないの……。



 白ちゃん(マキ):0勝

 朱ちゃん(ハルル):1勝

 蒼ちゃん(メイメイ):1勝

 藤ちゃん(レイ):1勝

 黄ちゃん(ボク):4勝

 黒ちゃん(ボンバー仮面V3):3勝


 おいー。イエロー! キミがんばりすぎだぞ!


 結婚はしないからな⁉


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