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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第八章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #5編

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第4話 安全な環境下で再実験を試みる

「誰かー! この研究室の外にいる誰か! ボクを助けてー!」


 大魔王から救ってー!


「残念。この研究室は完全防音だ。そして理論上、ミサイルが直撃しても耐えられる設計になっている。まあ、もっともそんな事態になっているとしたら、真っ先に地下シェルターへ避難しているだろうがな」


 麻里さんは小さな体を震わせながら豪快に笑う。


「笑い事じゃないんですけどね。もうそれって研究室のレベルをはるかに超えちゃってるし……。過剰防衛なんですよ……」


 誰が病院の研究室を爆撃しようとするのさ。


「以前……某国で研究をしていた時に、郵便物でC4が贈られてきたことがあってだな……」


 某国って……もう日本の話でもないしなあ。それって政府の要人クラスの狙われ方なんですよね……。まあでもそうか。麻里さんの研究内容を真に理解している人からしたら、政府の要人なんかよりもよっぽど重要な人物なのかもしれないけどね。


「わかりましたわかりました。じゃあ物騒な郵便物が贈られてこないうちにこの場は解散にしよう」


「かえでくん」


「楓」


 やめてください。

 2人とも、ものすごい力でボクの肩を掴まないでください。万力かな?


「どんなに言われても、赤ちゃんはダメ! 10歳ならまだしも……赤ちゃんの状態になると、微妙に記憶と思考が長く保てなくなるから絶対危ない!」


 絶対何か重大な不具合が起きているとしか思えないもの。

 断固拒否します!


「問題がどこにあるのか実験です。もう一度確かめてみる必要があると思いませんか?」


「思わないです……。ボクの預かり知らないところで母乳を飲ませられたりしたら敵わない……」


 2人とも妄想するのまではギリギリ良いと思うけど、実践に移してはいけないことっていうのはあるのですよ?


「楓が赤ちゃんの頃は私が毎日母乳を上げたものだよ」


 麻里さんがエア赤ちゃんを抱っこしながら、何かのダンスステップを踏んでいた。


「また適当なこと言って……。そもそもボクにそんな赤ちゃん時代はなかったでしょ。どうせボクの体は最初から今のサイズで作られていたんでしょ?」


「あるぞ」


「えっ?」


「もともとその年齢に設定して素体を作ったのはその通りだ。しかし、あらゆる年齢に設定し直して再構成するテストは行っているぞ」


 つまり≪REJU≫シリーズの薬やこの間のテントウムシが刺してきた注射の薬のようなテストを繰り返し行われていたってこと……。


「なんでそんなことを?」


「正常動作の確認だな。あらゆる状態、そしてあらゆる環境に適応した素体であることの確認をする必要があったのだよ」


 あらゆる環境って……火の中水の中? ボクの体はスーパーマンか何かのために作られたんですかね?


「あれ? それなら赤ちゃんの時にバイタルの信号がキャッチできない問題があったというのは?」


「そのような不具合はこれまで一度も確認されていないな」


 まあそうだよね。わりと致命的なセキュリティ上の問題な気もするし、そんな不具合が見つかっていたら修正しているに決まっていますよね。


「この間の定期公演#4の時のデータは見させてもらった。たしかにデータ上は詩の主張するような状態にあったことが認められる」


「手動操作でのデータ取得に失敗。緊急チャンネルによる通信にも失敗。自動オペレーション・手動オペレーションともに同様の結果が出ています。再現性があるか不明ですが、なんらかの問題が発生していたことは間違いなさそうです」


 ウタが補足説明をする。


「わたしの独自チャンネルによる通信もうまくいきませんでした」


 独自チャンネル?

 レイさんこの間は、ウタの開いたチャンネルに相乗りしているみたいな言い方をしていませんでしたっけ?


「奥の手です。うたさんに意地悪されてチャンネルをふさがれてしまった時のために、独自ルートも開拓しておきました」


「そうですか……」


 意地悪ってそんな……。

 しかしレイさん、やりたい放題ですね。

 そういうことの積み重ねが、今回のような何らかの問題につながっているのでは?


「否定はできません」


 そこは否定してほしかったな。


「どちらにしても安全な環境下で再実験をする必要があるだろう」


「そうですね」


 麻里さんとウタが静かに頷き合っている。

 研究者って実験好きだよね。


 安全な環境下って、この核シェルター、もとい、研究室のことですよねー。


「楓、大魔王からは逃げられないぞ」


 いや、もうわかってますからいいですって。

 逃げも隠れもしませんよ……。


「だけど! 母乳を飲ませる実験だけはやめてくださいよ! それは不具合チェックとは関係ないですからね!」


「……善処しよう」


 間があった! 今、間があったよね⁉


「さあ、さっそく実験を開始しよう。痛くしないからそこのソファに寝ころびなさい」


 渋々従って、ソファに横になり、硬く目を閉じる。

 不具合チェックだけですからね! 絶対ですよ!


 首筋に一瞬冷たい感覚。

 ボクはそのまま意識を手放した。



* * *


「えでくん、かえでくん、かえでくん」


 んぁ……レイ。


「大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫。ちょっと体がだるいけど……実験終わった?」


 少し体を起こして自分の手足を見る。

 大きさはいつも通り。赤ちゃんではなかった。良かった……。でも、今回は赤ちゃんになっていた時の記憶が一切残っていないな……。


「すべて確認終わりました。今回は通信障害などの不具合は発生しませんでした」


「そっか。じゃあ問題ないのかな」


「今回たまたま成功したのか、それとも定期公演#4の時にたまたま失敗しただけなのか。まだデータが足りない状態だ。引き続き、要調査案件だな」


 なんだか3人で盛り上がっているね。

 まだ調査が必要なことだけはわかりましたよ……。


「場所の問題、ということもありますから、ドームでの検証も行う必要があると考えます」


「そうだな。それも早急に行おう」


「早急って、今日じゃないですよね?」


「必ず起こる不具合ではなかった。さすがに日を改めよう。楓、今日はゆっくり体を休めろ」


 麻里さんがようやくボクのほうを見てくれる。


「はい。体もだるいので早めに帰って寝ます」


 10歳の時よりもだるさが増すなあ。

 0歳のほうが年齢差が大きいせいかな? それとも意識が保っていられないほどの脳の変化があるせいかな?


「2人とも、一応これを持って行け」


「師匠ありがとうございます」


「もう大丈夫だと思いますが、念のため受け取っておきます」


 レイとウタが麻里さんから何か小さな巾着袋を受け取っている。


「何それ?」


 ボクにはくれないの?


「こ、これは……乙女の秘密よ……」


「秘密です」


 急によそよそしい態度を見せる2人。

 ボクの目に触れないようにしようとしているのか、巾着袋を抱きしめるようにしてボクから体を背ける。


「いや、意味わからないし……。麻里さん?」


「ま、お守りみたいなものだよ。必要に応じてそれでバイタルチェックでもしてやるんだな。今日は以上だ。解散」


 含み笑いをしながら、麻里さんが自席へと戻っていってしまった。


 お守り? バイタルチェック?


「ちょっと2人とも、やっぱりそれ見せてよ」


「ダメです」


「えー、ちょっとだけだから」


 と、ウタから強引に巾着袋を奪おうとして、ウタの腕を引っ張った。


「あっ♡」


 え、何今の……声、エロッ!


「ちょっと……急に触らないでよ。今ちょっと敏感なんだから……」


 ウタの顔が赤い……。

 いや、ちょっと腕に触れただけで?


「かえでくん、今はちょっとおさわり厳禁でお願いします……」


 えー、レイもなの?

 いったい2人に何があった⁉


「いつまでもここにいると師匠の邪魔になりますから、早く失礼しましょう」


「そ、そうね。帰りましょう! もう夜だわ。お腹減ったわね、みんなで食事でもしてから帰らない?」


「そうしましょう。かえでくんは何が食べたいですか?」


「えーと、なんだろう……実験のせいなのか、ちょっと体はだるいしお腹も減ってない……むしろ満腹感がすごいんだよね……」


 悪いんだけど、ご飯はいらないかなあ。

 早めに帰って寝たい。


「ん、なんで2人とも顔が赤いの?」


「いいえ、なんでもありません」


「何でもないわよ⁉ そうなのね、お腹いっぱいなのね……それは良かったわ」


 何が良かったのか。

 ……それにしてもすごく眠い。


「かえでくんの調子が悪そうなので今日はこのまま帰りましょう」


「そ、そうね。お腹いっぱいなら仕方ないわね!」


 うーん、眠い。ゲプッ。


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