第33話 定期公演#4 その2~ナギチ、MCやるじゃん
「みなさ~ん、こんばんは~! 私たちは~」
「「「「「≪The Beginning of Summer≫で~す」」」」」
2曲目の『青春=理不尽』が終わり、1発目のMCへ。
ナギチがお当番回だよ、ボクとレイの分までがんばって!
「今日はなななななんと! 定期公演『The Beginning of Summer ~ Monthly Party 2024』の第4回目ですよ! ギャラクシー☆」
「ナギサちゃん、みんな知ってるよ~」
「いいでしょ! 私だってこういう司会っぽいことやってみたいのよ~! サッちゃんだって最初やってたじゃないの~! ギャラクシーなドームからギャラクシー☆」
会場が一斉に水色のペンライトで埋まる。
ナギチの応援一色だ!
これは壮観だなあ。
だって、このドームは5階席まであるんだよ!
見上げたら首が持って行かれそう……というのは大げさだとしても、だ。
代々森体育館とは段違いのスケール。ペンライトの光も、応援の声も、全部全部違う。1個ずつ感動しちゃうね。夢みたいだ。
“ナギサ~!”
“今日は真面目にやれよー!”
“配信乗っ取られるなよ~!”
“歯磨けよ~”
“宿題やったか”
“ドーム公演おめ!”
“ドームってマ?”
“マジマジ”
“最初に会場全体が映った時、超でかいドーム型だった”
“どこ?今って全部のドーム野球やってる時間だろ”
「ナギサ! あれ、やってみたくない?」
「ハルちゃんそれ! 私も思ってたところ! やってみたい!」
「渚さん、あれってなんですか?」
「さっちゃん、あれですわよ、あれ」
ピンと来ていないサクにゃんのために、ウーミーが観客席を指さしてぐるりと回る動作を見せる。
「あれですね! サクラもやりたいです!」
「じゃあいくわよ~! このギャラクシーナギサと一緒に~」
「せーの」
「「「「「アリーナ~~~~!」」」」」
「「「「「配信のみんな~~~~!」」」」」
「「「「「1階席~~~~!」」」」」
「「「「「2階席~~~~!」」」」」
「「「「「3階席~~~~!」」」」」
「「「「「4階席~~~~!」」」」」
「「「「「5階席~~~~!」」」」」
「「「「「もう1回、配信のみんな~~~~!」」」」」
「「「「「全部~~~~!」」」」」
フェイントで配信が2回だと!
こんなのファンのみんなが喜んじゃうやつー。
「すっごいわね!」
「すっごいです~」
「すっごいすっごい!」
「すっごいですわ~」
「すごすぎです!」
語彙!
全員おバカさんになってしまった……。
いや、でもそれだけすごいんだ……。
歓声が反響してそれが体の中を駆け回る。なんて心地よい振動なんだろう。
恍惚。
これ以外にこの感動を表現する言葉が思い浮かばないよ。
「そうそう、大事なことを忘れてました!」
「どうしたの、ナギサ?」
「私、重要なお仕事を頼まれていたのですっ!」
「なになに~? 今日もケーキ作ってきてくれたの?」
「わたしゃ、ケーキ職人か! いつもケーキ持ってくる人じゃないからね⁉」
「しゅ~ん」
「サッちゃん、しゅんとしないで! また作ってあげるから~」
「わ~い。ナギサちゃん好き~♡」
メイメイがナギチに抱きつく。
なんだ百合営業か⁉
いや、まあこの2人は……餌付けする人・される人の関係以上にはならないか。
「ほら、ナギサ。脱線しないの。ちゃんとお仕事して!」
ハルルがたしなめる。
「はい、リーダー! ナギサ、大切なお役目を果たします!」
最敬礼。
何、ナギチの中で敬礼が流行ってる?
“ひっぱるなあw”
“はよ仕事しろw”
“ケーキ以外だと滑り芸か?”
“この間の配信のコントは良かったからまた期待してる”
“ナギサちゃん、大事なことってな~に?”
“ナギサ、ナギサ!”
“メイメイはよ離れなさいw”
「みなさん気になっていると思うんですけど、ここがどこかわかりますか~?」
「どこ~?」
「どこかしらね?」
「どこでしょうか⁉」
「存じ上げませんわ~」
ナギチの質問に全員が首を傾げる。
会場もざわざわ。みんなここがどこなのかわからない。
「なんとここは、とある山奥にある洋館の~、地下に新設された私たち専用ドームなんです! 全世界初公開! どう、ギャラクシーサプラ~イズ☆ おどろいた⁉」
ドヤ顔のナギチ、仁王立ちを決める。
いや、これはドヤっていい。
ナギチがすごいわけではないけれど、とにかくドヤれ!
“専用ドーム、だと……”
“地下?”
“何を言っているんです?”
“地下闘技場?”
“とある山奥の洋館って”
“専用ドーム!”
“規模でかくない⁉”
“何万に入るの?”
“専用ドームやべー!”
驚きの声しか上がってこない。
いや、うん、ボクもまだ驚いているもの。
そんなことある? ってね。
「すごいでしょう⁉ 私たち、セキュリティ対策バッチリの専用ドームを作ってもらっちゃったんですよ! これもナギサがかわいすぎるせいかな♡」
「私がかわいいからですよ~」
「何言ってるの。私が映画に出たおかげよ」
「サクラが発明をがんばったおかげかと!」
「わ、わたくしもグラビアをがんばってますわ~」
いや、ごめんだけど、みんなのこれまでのお仕事くらいでは、とてもじゃないけれど建設費用は賄えないと思うよ……。
「それでね~。今日このドームは初披露なんですよ! まだ私たちも今日初めてここに来たばっかり!」
「すっごいきれいよね。ピカピカの新品のドーム!」
「そうだ~。今のうちの床に名前を書いておこう~」
どこからかマジックペンを取り出すメイメイ。
「サツキ! ホントに怒られるからやめて!」
慌ててマジックペンを取り上げるハルル。
「最初に名前を書いた人のものです~」
そんなマイルールが許されるわけ……。
「そう、それ! サッちゃんナイス! 名前よ!」
「それ? ナギサちゃんも名前書きたいですか~?」
「このドームはまだ名前がないのよ! さっき私たちもどんな名前にしようかな~っていろいろ考えてたんだけど、決めきれなくて困ってるの」
そこまでナギチがしゃべったところで、上空に浮かぶ巨大な立方体のモニターが下りてくる。
ここからは麻里さんの説明にお任せってことかな。
なかなかにうまい繋ぎ。
ナギチやるじゃん。
巨大モニターに文字が映し出される。
『≪The Beginning of Summer≫ファンクラブ設立記念! ファン総選挙~専用ドームの名前を決めろ~』
ふーむ。
って、ファンクラブ設立⁉
とうとう来たか!




