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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第七章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #4編

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第27話 たどり着いた先は古びた洋館?

「ここが今日の定期公演の会場、なんだよね……?」


 いや……ホントにここはどこなの? もしかして日本じゃない? でもボクたちは一度も飛行機には乗っていないよね……。


 えーと、これまでのことを思い出そう。


 高速道路を永遠と走り続けて、たまにSAで休憩をして、また高速道路を走って……最後は下道へ降りたんだよね。あとは山奥をひたすらグルグルと回って、みんな若干車に酔い始めて口数が少なくなって……さらに1時間ほど悪路を進んだ先がここ。今日の目的地だ。


「完全に山の中なんですが……たぶん日本は出ていない、はず……」


 日差しもあまり入ってこないほど木々が生い茂る山の中。ボクたちの目の前にあるのは、まるで100年前からタイムスリップしてきたような古びた洋風な建物だった。日本の建築物ではないかもしれない。


「これはまた……趣深い洋館ね」


「殺人事件が起きそうです~」


「こんな危ないところに居られないわ! 私は先に控室に行かせてもらうわ!」


 ナギチ、それ最初に殺される被害者のセリフだよー。


「こんなところでライブができるものなのかね? セキュリティをうるさく言っているのに、まさか野音ってことはないだろうけど……」


 しかし、端的に言ってボロい建物だよ。

 おおよそライブ会場とも思えないんだけど……。


≪とにかく建物の中に入りなさい。零さんたちはすでに中よ≫


 おっと、ウタからの通信だ。

 そうだよね。こんなところに突っ立っていてもライブはできない。リハもしないといけないし、急いで準備します!


「さ、みんな。とりあえず中に入ろう。もう赤チームは先に着いているらしいよ」


「「は~い」」


 ハルルとナギチが手荷物を車から降ろすと、洋館の入り口に向かって歩き出す。


「メイメイ、どうしたの?」


 メイメイは1人返事をせず、洋館の佇まいを眺め続けていた。


「ここ、知ってるところかもしれないです~」


「そうなんだ? もしかしてボクが知らないだけで有名なライブ会場だったりするのかな?」


「う~んと、思い出せないです~」


 メイメイは両手で自分の頬を軽く叩くと、荷物を背負ってハルルとナギチを追いかけていった。



* * *


「青チームのみなさま、お疲れさまです。こちらへどうぞ」


 建物の中に入ると、レイが入り口で待っていてくれた。なんでクラシックなメイド服を着ているの? 

 レイ(メイドさん)に入り口脇にある管理人室のようなところに連れられて行く。


 全員で2畳ほどしかない管理人室に入ると、レイが内側から鍵を閉める。


「ここは?」


「少しお待ちください」


 レイはボクの質問に答えることなく、手元の何かパネルのようなものをいじりだす。

 一瞬の静寂の後、床が動いた。


「えっ、なになに⁉」


「地震ですか~?」


「落ちてる落ちてる!」


 ボクたち4人が慌てふためく中、レイだけが静かに微笑んでいた。


「まさかエレベーター⁉」


「はるさん、正解です」


 正解って、これがエレベーターってこと⁉


「この施設の本当の姿は、地下にあるそうですよ」


 レイのその言葉を、ボクたちはすぐに理解することになる。



* * *


「これはすごい……」


 100年前から急に200年後の世界へ。

 それは言い過ぎだとしても、管理人室っぽいエレベーターが下りた先に広がっている光景は、驚くべきものだった。


「大きな地下闘技場ですね~」


 メイメイ、それはたぶん違う。


「ここってドーム?」


 ボクたちは、会場のちょうど中央に用意された円形のステージに立っていた。


 見上げれば、天井は星まで届くかと思うほどに高い。半円形のドーム状になっていた。ステージを360度ぐるりと囲うように用意された観客席はざっと1万人以上、いや、4階席、5階席まであるところを見ると、5万人……もっと入るかもしれない。代々森第一体育館よりもずっと広いキャパがあるのは間違いなかった。


「こんな施設が地下にあるなんて話、聞いたことないぞ……」


 アイドルのライブはおろか、アーティストのライブやスポーツ系のイベントでも、こんな会場が使われたという話は耳にしたことがなかった。


『おほん。テス、テス~』


 会場全体のスピーカーが一斉に目を覚ましたかのように震えだす。下っ腹辺りまでずっしりと響く音の力。


『≪The Beginning of Summer≫の諸君、そしてそのマネージャーたち、またその他ここにいるすべてのスタッフたち、こんにちは。天利麻里だ』


 見上げると、天井からつるされている巨大モニターに、麻里さんの顔が映っていた。これまた巨大な麻里さんだ。


「麻里ちゃんだ~。こんにちは~」


 メイメイがのんきに手を振っていた。


『こんにちは、早月。今日も元気かな?』


「元気ですよ~。定期公演がんばりますね~」


『期待しているよ。別室のモニターで見させてもらうよ』


「でも今日は私、MCコーナーもソロユニット曲もないから~、ちょっとつまらないです~」


 巨大なモニター越しに繰り広げられる私的な会話。

 ボクたちは何を聞かされているんだろう。


「あのー、麻里さん? この施設はいったいなんですか?」


 一応みんなを代表して大切な質問をしてみる。

 強引に割って入らないと麻里さんとメイメイの会話は終わりそうになかったからね。


『そうだった。その説明をするつもりでここに中継を繋いだのだったな』


「でしょうね……」


 家族の会話をするためではないのだけはわかります。


『ここは、先日発表した≪Believe in AstroloGy≫×≪The Beginning of Summer≫スペシャルコラボレーションライブを行うために用意した会場だよ』


「なるほど。≪BiAG≫をバーチャルアイドルにしてコラボするっていう例のアレですか?」


 詳細はよくわかっていないけれど、最先端っぽい何かなのはわかる。その予定会場ということは、最新鋭の設備が整っている、という理解で良さそうかな。


『定期公演#3では、みなに怖い思いをさせてしまったね。これは私たち管理側のミスだ。現場の皆様に対しては遅ればせながら謝罪をさせていただきたい。本当に申し訳なかった』


 モニター越しに麻里さんが頭を下げる様子を見て、辺りが静まり返る。それまで忙しそうに動いていたスタッフさんたちの手も止まり、誰もがモニターを注視していた。 


 到底聞き逃すことのできない重要な出来事だった。


 これまで『観察』というていを崩さなかった麻里さんが、管理側として謝罪したのだ。


 ずっとなんとなく曖昧にしてきた部分。そこに踏み込んだ瞬間だった――。


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