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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第七章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #4編

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第25話 どこかのSAにて。ゾンビの断末魔を添えて

「ふぅ、ようやくSA(サービスエリア)で休憩かあ! うひー、腰がバキバキだ。いつものバス移動とは違ってるけど、レンタカー移動もなかなか楽しいねえ」


 空気が冷たくてうまい!

 えーと、ここはどこだー?


 と、腰を反ってストレッチをしていると耳元で、


「カ~エ~ちゃ~ん……」


「ひっ!」


 ゾンビの断末魔! じゃなくてナギチだった!


 朝、車に乗り込む前とはまるで別人だわ……。車酔いで何度も吐いた後みたいな顔してる……。真っ青で、しかもなんだかげっそりしている様子。


「酔ったの? 車苦手な人だっけ?」


 バス移動の時はいつも普通だったような?


「なんかもうね……自棄になって……」


 そこまで言ったところで言葉に詰まり、ナギチの目からは涙が溢れ出してしまった。ボクの袖を両手でつかみ、喉をひくつかせている。

 

「そんなに思い詰めて……。たかが車移動でしょう。一生会えないわけじゃないんだからさ……」


「サクちゃんが『エナジードリンク一気飲みしてテンション上げましょう~』って、みんなで何本も飲んだの……うっぷ」


 あ、そういうこと? ボクに会えなくてとかちょっと恥ずかしいこと考えちゃったじゃん! うわっ、ちょっとえずかないで! やめてよ? 吐くならそこのトイレに行こう⁉


「メイメイならそういうこと言いそうだけどさあ。これから定期公演で歌って踊るんだから、体調崩すようなことはしないでほしいな……」


 レンターカーチーム分けのくじ引きの結果を引き摺って泣いている精神状態もどうかと思うけどね……。


「かえでくん」


 レイがナギチの後ろに立ち、背中をさすりだす。


「この休憩の後の車ですが、チームを再編するのはどうでしょうか」


「ん、あー、たしかにね……」


 ナギチの様子を見るに見かねて、というところだろうか。

 レイの提案はナイスアイディアだと思う。

 

 要はボクが青チームのほうに入れってことだよね。まあ、ナギチがこの状態ってことは、きっとハルルも似たような姿でどこかに落ちているんだろうし……。メイメイはどこでも楽しめるだろうからどっちでもいいとしてもだ。


「サクにゃんとウーミーが良いならそうしよっか……」


 赤チームになったことをすごく喜んでいたからね。さすがに2人の気持ちを無碍にはできない。


「きっと中の売店でお土産物を見ていらっしゃると思いますので、わたしのほうから2人に話してみます」


 そう言い残し、レイはSAの店内へと消えていく。

 

「とりあえず、トイレにでも行く?」


 吐くなら全部吐いて楽になったほうが良い。


「多目的トイレでイチャイチャしてくれるの?」


「しないわっ! 苦しそうだから吐いたらってこと!」


 急に何をぶっこんできてるのさ……。

 そんな期待に満ちた目で見られても、ボクには何もしてあげられないよ⁉


「うっ、苦しい……」


「ん、大丈夫?」


 レイがしていたのと同じように、ゆっくりと背中をさすってみる。


「もっと強めに……」


「こう、かな?」


 言われるがまま、強めに、そしてスピードを上げて背中をさすってみる。これで合ってるのかな。


「ブラのホックが痛いの……はずしてもらえない?」


「えっ、ここ外だけど⁉」


 早朝とはいえ、そこそこ人の往来もあるんですが。


「そうね。ここだと人目もあるから……多目的トイレでお願い……」


 ナギチがスッと立ち上がる。

 

「うん……?」


「早くトイレへ!」


 ボクの手を引っ張るように、しっかりとした足取りで歩き出すナギチ。まあそんなことだろうとは思っていたよ……。


「元気になったみたいだし、ボクは飲み物でも買って車に戻ろうっと」


 全部が全部仮病ってわけじゃないんだろうけどね。ナギチはすぐに調子に乗るからなあ。


「なんで⁉ もっと背中さすって? 早くブラを外してめちゃくちゃにして~!」


 大声で何叫んでるのさ⁉

 何人か振り返って見てきてるじゃん!


「ナギチ……静かにしよう? ボクたちが今何をしているか覚えてる?」


「定期公演の会場に向かってるとこ……」


「そう。わざわざレンタカーに乗って、こそこそと隠れるようにしてね」


「悪者に見つからないようにしてるとこ……」


「そう。よくわかってるじゃないの。じゃあ大声出していいんだっけ?」


「ダメ……」


 ナギチはうなだれて、自分のスカートの裾をギュッと握りしめた。


「はい、えらい。ちゃんとわかってるなら、飲み物を買って静かに車のところに行こう? きっとレイがうまく話をつけてくれてるから、こんどはボクがそっちの青チームの車に乗るからさ」


「一緒に乗ってくれるの?」


 唇を噛んだまま、上目遣いに見てくる。


「うん、たぶんね」


 レイならうまくまとめてくれるでしょう。


「手、つないでくれる?」


「いいよ」


 ボクが手を差し伸べてやると、ナギチは遠慮がちに手を伸ばしてくる。


 冷たい手。

 指先が氷のように冷え切っていた。


 なんだ、ホントに体調悪いんじゃん……。


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