表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

357/375

第23話 くじ引きの結果。歓喜と絶望の乗車劇

 全員にこよりに付けられた赤色が見えるように、右手を掲げて小さく振る。


「ボクが引いたのは赤でしたー」


 さあ、早くくじを引いてグループ分けしよう! さっさと出発するよ!


 あれ……誰も動かないな。どうやら次に誰が引くかで、みんなけん制し合っているようだ……。どっちを引いても恨みっこなしじゃなかったの?


「ほら、どうしたの? みんな早く引こうよ」


「今引くと確率は50%です! サクラとみっちゃんが2人とも赤を引く確率は……」


 サクにゃん、考えすぎだよ。当たるも八卦当たらぬも八卦……は違うか。


「はい! 私、行きます!」


 ハルルがビシッと右手を上げる。

 左手で脇を隠すポーズ……昭和のアイドルかっ!


「はるさん、どうぞ。わたしは一番左のこよりが赤だと思います」


「左⁉……絶対⁉」


 またー。レイはすぐそうやっていじわるするんだからー。

 さっきまでの決意はどこへやら……。ハルルが異様なまでにキョドり始めてしまったじゃないのさ。まったくそんなことをしたらハルルがかわいそうじゃないの。


「まあ、ボクの勘だと真ん中が赤だね」


「私は一番右だと思いますよ~」


 メイメイも悪い顔をしながらのってくる。

 みんなハルルをからかうの好きですねえ。ハルルと都。赤コンビをからかうとホント潤うからなあ。


「ぐぐぐぐぐぎぎぎぎぎ……」


 ハルルの口から謎の音が響いてくる。

 長考モードに入ってしまったようだ。


「はい、もうハルルは1回休み。レイとメイメイは責任を取って、今自分で言ったやつを引いて!」


「でもこれはわたしが作ったくじですから、最後にあまったものを引きますよ」


 レイは首を振り、こよりを引こうとしない。


「まあ普通はそうだけど、これは当たりとかハズレとかないからさ。早く出発しないといけないし、もうドンドン引いていこう!」


「わかりました。では一番左を引きます」


「私も一番右を引きますよ~」


 レイとメイメイがほぼ同時にこよりを引き抜く。

 

 結果は、レイが赤。メイメイが青。


「ふ、不正よ!」


 ハルルが震える声でレイを指さす。


「いや、ボクが引けって言ったんだから不正ではないでしょ。レイは『最後に引きます』って言ってたんだから。はい次ー、サクにゃんとウーミーいってみようか」


 震えるハルルとなぜか気絶しそうなナギチを飛ばして、まだ平和そうな2人を指名する。


「みっちゃんとの絆を……」


「同じ色を引きたいですわ~」


 見つめ合う2人。

 いや、まあ、同じ色を引かせてあげたいけど、これはくじだからさ……。恨みっこなしだよ?


「はい、選んで!」


 サクにゃんとウーミーの背中を押して、レイの手にあるくじの前へ。


「神様、お願いします!」


「お願いしますわ~」


 2人が同時にくじを掴む。

 顔を見合わせ、頷き合うと、こよりを一気に引き抜いた。


 結果は、サクにゃんが赤。ウーミーも赤だった。


「やりましたわ~!」


「やりましたね!」


 2人が抱き合って喜びを分かち合う。

 何かに優勝したかのようなテンションだ。これから定期公演なんだけど大丈夫かな。


「あああああああああああああああああああああああああああああ!」


「うわああああ……あっ……」


 ハルルが叫び声を上げて膝から崩れ落ちる。

 周りのスタッフさんたちが「何事?」という目でこちらを見てくる。

 

 いや、ナギチなんて途中で泡を吹いて倒れているし……。


「一応不正していないことを明らかにするために、残りのこよりの色をお見せします」


 そう言ってから、レイが握っていた手を開いて、残り2本のこよりの色を見せてくれた。


 2本とも青。

 でもハルルもナギチももはや結果は見ていない。


 残り物に福はなかったね……。



「はい、じゃあグループ分け終わり」


 赤:ボク、レイ、サクにゃん、ウーミー。

 青:メイメイ、ハルル、ナギチ。


「よし、じゃあ急いで車に乗り込もう!」


「楓さんとご一緒できますわ~」


「はい! コーチは真ん中でお願いします!」


「かえでくんはわたしのひざの上にどうぞ」


 なんで全員後部座席に座ろうとしてるの。

 膝の上は法律的にダメでしょ……。


「いや、ボクは助手席に座ります……」


 さすがに車の中でふざけるのはダメだよ?


「冗談です。かえでくんは後部座席に座ってあげてください」


「それで大丈夫?」


「お2人の顔を見てあげてください。とてもとても期待されてますよ」


 チラリと見やると、まるで遊園地のジェットコースターの順番が次に回ってくるようなワクワク顔でボクのことを見ていた。

 いや……何をそんなに期待してるの⁉ ただ一緒に車に乗るだけだよ? 普段のバス移動の時と変わらないよ?


「カエくんどうしましょう……」


「って、メイメイどうした⁉」


 見ればメイメイがナギチの亡骸を抱きしめ、声を殺して泣いていた……。

 

「ナギサちゃんが、ナギサちゃんが~」


「ッ、ナギサ~~~~~~~~~~~~!」


 ハルルうるせー! 腹式呼吸すんな!

 スタッフさんたちがこっち見てるでしょ!


「もうさ、くじの結果は変わらないからさ、諦めて3人であっちの車に乗って?」


「ッ、ナギサ~~~~~~~~~~~~!」


 うるせー!


「もうあの人たちは放っておこうか。さ、ボクたちはこっちの車に」


「はい、コーチ!」


「地の果てまでいきますわ~!」


「わたしたちは愛の逃避行といきましょう」


 レイさん……チラッと青色のグループを見ながら煽り入れないの!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ