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第21話 どうしてマキとレイはいつも相性が悪いの?

「赤青黄紫白の妖精さん……ハルル、メイメイ、マキで3人。まさかのボクが黄色でレイが紫……?」


「ピンポンピンポン♪ 大正解!」


 そんなバカなっ!


「我らの絆を子どもたちに見せつけるぞ~!」


「「お~!」」


 いや、メイメイもハルルも「お~」じゃないんだが。

 ダメですよ、毎回毎回マネージャーを巻き込んで。しかも今回はレイまで? レイはそういうのはNGなんですからね?


「妖精さんになれるんですね。素敵です」


 あれー? なぜだかレイが乗り気だ⁉

 どういうことだってばよ……。


「かえでくんと同じ舞台に立てるなら、わたしもがんばれそうです」


「そ、そう?」


 妖精さんかあ。レイがそういうならやってみる?


「ぜひやってみましょう」


 すっごくうれしそう。

 なかなか見られないタイプの、レイが少し興奮気味の時に見せる笑顔だ。瞳の輝きがいつにも増していて……これは貴重ですね。写真に撮っておきましょう。カシャカシャ。


「私がレッドだから、真の主役よ!」


「私はブルーです~。影の主役ですよ~」


「いや、戦隊モノじゃないんだからさ……」


 2人とも妖精を何だと思ってるのさ。ね、マキ?


「何を言っているかな? ホワイトが最も高貴で美しい主役に決まっているのさ」


 お前もか……。


「パープルはセクシーなヒロインということでよろしいでしょうか」


 レイ、その戦隊モノの感じには乗らなくていいからね?


「じゃあ、カエデはイエローだからカレーね」


 昭和か! 昨今のイエローはピンクに続いてヒロインキャラになることもあるんだぞ! イエローがカレー食べてたのはだいぶ戦隊モノの初期の話だからね。この令和の時代にそんなイエロー出てこないし。


「マジで戦隊モノではないんだよね? 脚本があるなら見たいんだけど」


 この不安な気持ちを少しでも安心させてください。


「本読みしたいです~」


「早めに役作りをしたいわね」


「パープルでセクシーということは、どこまで露出すればよいのでしょうか」


 いやいや、レイさん、気にするところが1人だけおかしいですから。

 子ども向けの劇で露出はしないで。いや、子ども向けじゃなくてもやめてね? レイの苦手な大きなお友達が集まってきちゃうよ?


「それは困ります……」


「おとなしくしててもレイのかわいさは世間に見つかっちゃうと思うから……あ、まさか今回オンライン配信とかないよね?」


「ないよ~。子ども向けだから劇場でやるだけさ。台本は6/1までに上がってくると思うのでちょっとお待ちを~。世界観の概要や衣装のラフ案なんかはあとで資料を送っておくから見ておいてね」


 まあ、マキのところはちゃんとした劇団だし、その辺りのスケジュールは抜かりないはずだよね。あれ……でもちょっと待って? なんでボクたちに主役のオファーが来てるんだろう? 普通に劇団内でキャストを決めればいいのでは? どうしても若い子が必要なら、まあ、メイメイやハルルにオファーがくるのは経験もあるからアリだとしても、ど素人のボクやレイにまで主役のオファーが?


「まさかと思うけど、劇団内で何かあった?」


「ギクリ……たいしたことないから気にしないで♡」


 あのー、今わかりやすく「ギクリ」って口で言いましたね? 普通になんかあったでしょ。


「話して。オファーを受けるからには、何か事情があるならボクたちも知っておく義務があるでしょ」


 何か問題があるなら、出演以外にも手助けできるかもしれないし?


「それがみんな聞いてよ~! 劇団内で流行り病が蔓延してしまって……ゴホッゴホッ」


 マキがその場に倒れ込む。


「流行り病ですか~⁉」


「それは大変ですね!」


「マーキーさん……それでホントの事情は?」


 流行り病だったらこの場に来てないでしょ。しかも「ゴホゴホ」されたらうつるし、プロフェッショナルを極めたマキが、ほかの演者に病気をうつすリスクがあるようなことをするわけない。


「実はさ~金銭的にちょい厳しくて、ほかの劇団に移籍する人が増えてしまったのさ……」


「おっと、そうか……それはとても大変だね……」


 わりと珍しくない話だ。

 小さい劇団は会場を借りてチケットを売るだけで良くてトントン。客の入りが悪ければ赤字。作ったグッズの在庫も抱えて火の車、なんて話はよく聞く。

 劇団を立ち上げている人たちみんなが経営に明るいわけでもなく、なんとなく雰囲気でチケット代を決めたりした日には即借金ですわ。マキみたいな看板女優がいれば絶対安泰とはいかないものですからね……。


「まあ、ボクたちのギャラなら、あってないような金額でも平気だし?」


「めんぼくない」


「メイメイもハルルもアイドルだから、関連グッズを作れば売れるし?」


「今や大人気アイドルの≪The Beginning of Summer≫のみなさま、卑しいわたくしに愛の手を!」


 どうかこの通り、とマキが両手を合わせて拝んでくる。


「ちょっと顔上げてくださいよ~」


「ししょーと私たちの仲じゃないですか~」


「そうだよ、いろいろマキにアドバイスをもらったおかげでボクたちはここまでこれた。マキにはたくさん助けてもらったんだ。ボクたちだってできる限りのことはさせてもらう!」


「かえでくんのパンツを返すなら考えます」


 レイー! 今、超良い場面だから! なんなら舞台のクライマックスシーンくらい良い場面だからね⁉


「パンツ……は返せないっ!」


 マキも立ち上がってにらみ合うんじゃない!

 何なのこの2人……。仲良くしてよー。ボクのパンツを取り合わないで!



 一触即発ムードのマキとレイ。

 2人をなだめつつ、正式なオファーを事務所側に回してもらうことで今日は解散となったわけで。


 前途多難だなあ。

 なんでこう、2人は相性が悪いんだ。


 メイメイ、ハルル。ボクたち3人だけでもがんばっていこうね⁉


 いや、でもまずは明日の定期公演#4だ。

 そっちに集中しなければ!


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