第9話 新垣春生誕祭2024 その1~腕によりをかけて8段のケーキを作ったわよ~
「みなさん、おひさしぶりです、こんにちは~!≪The Beginning of Summer≫です!」
今日もハルルのアイサツから始まる生配信。
全員ちゃんと席に着いていてえらいぞ!
配信の時の席順はいつも通り、前列に左からハルルとサクにゃん。後列にナギチ、ウーミー、メイメイだ。
「せ~の~!」
「「「「新垣春生誕祭2024」」」」
ハルル以外の4人がきれいに声を合わせて、生誕祭のタイトルコールをする。
今日はド派手にクラッカーと爆竹を……煙の出ないやつね!
誕生日おめでとう、ハルル!
“うるせー!”
“春節かよ!”
“ゴールデンウイークバンザイ”
“寝て起きたら明日もゴールデンウイークなんだ……”
“明日もハルルの誕生日を祝うんだ……”
“起きたらオレは小学生で友だちと虫取りに……”
“現実逃避草w”
”もうとっくに5月半ばなんだが”
“五月病のやつ多すぎないかw”
“いいからお前ら誕生日祝えよwww”
「ハルちゃんお誕生日おめでとう~。ケーキ食べましょう~」
「ハルにゃんは10万何歳になったの?」
「リーダーの生誕祭、気合が入ります!」
「3カ月連続の生誕祭の締めくくりですわ~」
それぞれのメンバーがハルルに対して祝福の言葉を述べる。言うほど祝福の言葉かな……?
「みんなありがとうね~。私の誕生日は5/1なんだけどね……諸事情によって生誕祭の配信がずいぶん遅くなってしまったわね」
おいおい、ハルルさんや。いきなり暗い感じにしないでおくれよ?
「でも~、そのおかげでプライベートと配信と、ハルちゃんの誕生日を2回お祝いできるから、ナギサちゃんのケーキが2回も食べられますよ~」
「まったくもう。サツキったらそればっかりなんだから」
ハルルが苦笑する。
「今回も腕によりをかけて8段のケーキを作ったわよ~! ホントはハルにゃんの年齢に合わせて18段にしようと思ったんだけど、ちょっとスタジオにはいらなそうだったからゆるしてニャン♪」
ナギチがかわいらしくウィンクを決める。
“18段って……”
“そんなの作ったらギネス記録じゃね?w”
“ギネス記録でケーキの段数はないかもな”
“大きい・重い・長い、その辺りならギネス記録があるらしい”
“カップケーキ並べたギネス記録があるらしいぞ”
“おまえらギネス好きすぎだろw”
“8段でもヤバいだろw早く見せてくれw”
だよね、8段でも十分すごいよ……。
5/1にみんなでお祝いした時にも立派なケーキを作ってくれたけど、ウェディングケーキでもあんなに立派なのは見たことないかもしれない。見た目だけじゃなくて味もおいしいし、ナギチはやっぱりすごいなって思います。
「さっそくナギサが作ってくれたんだし、ケーキをお披露目しちゃう?」
今回の配信は8段のケーキを食べながら、みんなが出会ってからの1年くらいを振り返りトークなどする、ゆったり配信の予定となっております。
トークに詰まった時用に、質問ボックスを用意しておいたよ。去年は何度か配信で使った懐かしの金色の箱ね。
「ちょっと待ったー!」
「待ったですわ~!」
なんだなんだ? #海桜がなんかカメラ前に出てきたぞ?
「ケーキを食べながらまったりトークなんて許しませんわ~」
「許しません! フンフン!」
なんだなんだ? ウーミーもサクにゃんもなんか荒ぶっているぞ?
「2人ともどうしたのよ? ケーキ食べながら私を存分に讃えてくれていいのよ?」
ハルルが間に入って2人の肩に手を置く。
「今回の生配信は、定期公演#3以来なんです!」
「定期公演#3以来ですわ~」
「そうね?」
「この生配信は、定期公演#3幻のMCコーナー『#海桜』が乗っ取りました!」
「乗っ取りましたですわ~!」
何だって⁉
「2人とも、話が見えない……。つまりどういうことかしら?」
『説明しよう♪』
ん、スピーカーを通してシオの声が。いや、すぐカメラ脇のスイッチャーのところで喋ってるんかーい。
『説明しよう!「#海桜」は、定期公演#3で初のダブルメインMCとして抜擢されていたんや。しかしなんと、不幸な配信機材トラブルにより、MCコーナーがお蔵入りになってしまったんやな~。かなしいかなしいヨヨヨヨ』
「悲しいですわ~」
「サクラ、悲しいです!」
『そこで「#海桜」は考えたんや。せっかくのMCコーナーを幻に終わらしてはファンのためにならん! せや、新垣春生誕祭を乗っ取ったろ、ってな♪』
「てな♪」
「てな、ですわ♪」
“おいおい、最低かw”
“生誕祭乗っ取りはダメだろwww”
“てな♪”
“機材トラブルね……”
“ニュースになっても機材トラブルで通すんか”
“ハッキングされましたとは言えないし仕方ないだろ”
“まあまあでもそういう演出で誕生日を祝うんだろw”
“様子を見よう”
“てな♪”
“ボクらの海桜愛してる~”
「定期公演#3は……そうね……残念だったわ……」
ハルル、そんな神妙な顔をしないで。暗いムードになっちゃうし、あれは別にハルルのせいではないから。
「今日ここで、サクラたちは幻のMCコーナーを復活させます!」
「復活させますわ~!」
堂々の乗っ取り宣言。
まあ、ハルルが強く拒否をしていないし、いいんじゃないの?
しかしいつものことながら台本通りに進まないなあ。




