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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第七章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #4編

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第7話 記者会見に用意されたシナリオ

「こういう形ではっきり書かれると……なるほどなとは思いつつ、やっぱりちょっと心配になる……メイメイ大丈夫?」


「はい~。でも小さい頃から麻里ちゃんに聞かされていた話の通りなので大丈夫ですよ~」


 メイメイとボクは改めて麻里さんの書いた原稿をチェックしているところだ。


 これから記者会見。

 ボクたちの様子は各テレビ局を通じて放送されるらしいし、絶対に失敗は許されない。

 

 安全に安全を考慮して、ボクたちの配信場所は本社ビルの会議室。マスコミ各社のみなさんには各テレビ局や雑誌社などからオンライン中継する形を取ることになった。

 テレビ局によっては特別番組として生放送するところもあるみたいだけど、今回の記者会見のレギュレーションとして生放送する場合は30秒のタイムラグを持ってもらっている。


 それはなぜか。


 先日の定期公演#3の事案を鑑みての措置だ。記者会見がハッキングされ、それが全国のテレビに映りこむことがないように、という対策。万が一問題が起きた場合にはその30秒の猶予の間に放送を中断させる。それを過ぎた映像からは好きに放送してもらってかまわないという契約になっている。


「まあ、今回の記者会見は堂々とこの原稿を見ながらしゃべって大丈夫だし、すでに各社から質問リストは受け取っているから、このQ&Aリストの通りに順番に質問を受けて、それにメイメイが答えればいいだけ。ボクが隣に座ることも許可されたし、2人でがんばろうね!」


「すごくつまらなそう……」


 メイメイはそうつぶやき、口を尖らせながら原稿とにらめっこしている。


「せっかく麻里さんが回答も用意してくれたんだからちゃんとしようね? 今回の記者会見はアドリブなしで頼むよ!」


 冒頭の説明とその後の話の持って行き方にはくれぐれも注意しないといけない。予定通り、事実として伝えるべきことははっきりと。


『秋月美月の娘であることを正式に公表する』


 それは言葉にすると簡単なように見えるけれど、実際は複雑な問題をはらんでいるのだ。


 なぜなら秋月美月は引退後、一度も表舞台に登場しておらず、また≪BiAG≫のメンバーもそれは同じだ。

 つまり、秋月美月が引退後どういう人生を歩んでいるのかについては、これまで世間には一切明らかにされていないということ。子どもがいる事実が明らかになるのはもちろん初めてことだ。


 結婚していたのか?

 相手の男性は誰なのか?

 今どこで何をしているのか?

 

 おそらくもっとほかにも気になることはいっぱいあるだろう。


 でもそれらには答えない。

 麻里さんが用意した最強のカードであり、これ以上動かすことのできない事実を伝えるのみ。


『秋月美月は娘・早月の出産時に亡くなっている』


 当時、本人の意向によりマスコミへは非公表とし、近親者、および事務所関係者のみで葬儀は行われた、と。

 結婚の有無や、相手の男性については引退後のプライベートなことなのでコメントを控えさせていただく。

 なお『夏目』姓は、秋月美月の母親の旧姓。これまで夏目早月は祖母と2人、北海道で暮らしていた。


 これが基本的なシナリオだ。


 まあ、これまでボクがこれまで聞かされていたこととほぼ同じ。

 はっきりと『秋月美月さんが亡くなっている』という話を聞かされたのは初めてになるけれどね。麻里さんはそのことを明言はしていなかったけれど、暗黙の了解みたいに受け入れていたことではあった……。


「メイメイ大丈夫? そろそろ会場に入ろうか」


「はい~。記者会見盛り上げるぞ~」


 原稿用紙を高々と掲げ、元気いっぱい宣言する。


「絶対盛り上げないで……。くれぐれもアドリブはなしだよ。予定通りの質問に一言一句変えることなくそのまま原稿を読むように!」


「つまらないです~。せっかくたくさんの人が見てくれるんだし、ガツンとかましてやりたいです~」


 地団駄を踏むメイメイ。

 これはちゃんと説明しておかないとダメかな……。


「ねえ、メイメイ……真面目にボクの話を聞いてね。いい?」


 メイメイの両手を取り、正面から真っすぐに見据えながら訴えかける。

 今日の記者会見は、麻里さんの言う「新しいフェーズ」を始めるにあたって非常に重要な儀式なんだ。失敗するわけにはいかないのだから。


「今日の主役はある意味お母さん――秋月美月さんでもあるんだよ」


「お母さんが主役ですか~?」


 メイメイが不思議そうな顔をする。


「そうだよ。ある意味ね? もちろん主役はメイメイなんだけど、世間の人たちはお母さんが引退後にどうしていたのか知りたがっているんだ」


「う~、たしかにそうですよね~。ずっと黙ってましたし」


「そうなんだよね。でも別に隠していたことが悪いわけではなくて、それは理由があってのことだったからね。だけど今回、中途半端な形でその事実が世間に伝わってしまった。だから今、メイメイの口から正しい形で伝える必要があるわけだよ」


「私の口からですか~?」


「そう、ほかの誰でもないメイメイの口から。秋月美月さんの情報は、秋月美月さんにもっとも近い人物から伝えられるべきなんだ」


 近親者であり、現在芸能活動をしているメイメイの口からね。


「気をつけないいけないのは、これが売名行為だと思われないこと。記者会見の目的は、憶測で広まってしまった噂に対する説明責任を果たすことだという印象を強く与えることだよ。だから淡々と事実のみを伝える。メイメイは秋月美月さんとは異なる人格で、アイドルになったきっかけは秋月美月さんに憧れたことだけれども、決して秋月美月2世ではないと伝える」


「はい、気をつけます……」


「今日の記者会見を乗り越えても、これからいろんなことを言ってくる人はいると思う。だけどボクがついてるから。≪初夏≫のみんなも。ほかのマネージャーのみんなも。事務所の人たちも。それに麻里さんもね。だからメイメイはこれまで通りでいてほしい」


 天真爛漫でキラキラしたメイメイのままで。



* * *


 そんなこんなでメイメイは無難にやり過ごし、記者会見は無事終了した。

 マスコミの人たちもルール通り行儀良かったし助かったよ。


 と思ったんだけど。


 やってくれたわ……。


 麻里さんさ、シナリオは任せておけってそういうことなんですか?

 だからサプライズはやめてって言ったじゃんか……。


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