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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第一章 オーディション 編

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第34話 オーディション前日~雪月の姫~

 対バンの日から1週間が過ぎた。

 

 ≪六花≫のみんなは見違えるような成長を遂げ……ることはなかった。

 そりゃ1週間だからね。

 でも確実に意識は変わってきている、と思うよ。


「カエくんどうしようよ~。明日はオーディションの本番なのに、私ぜんぜんアピールできてないよ~」


 メイメイは平常運転からちょっぴり心の出力が上がっている、そんな感じだ。


「メイメイはかわいいから大丈夫だよ」


「ありがとう~。でも、もっとちゃんと足りないところを教えてほしいです~」


 両手を合わせて上目遣いにお願いポーズ。

 

 うわー天使!

 心のシャッターを――。


 カシャカシャ、カシャカシャ。


「メイカエ尊い! ばっちりいただきました!」


 カメラに目覚めたサクにゃんがいた。いや、目覚めたのはカメラだけじゃないかも。


「サクにゃん、そんなことやってて大丈夫?」


「もちろんですよ! コーチの教えを守って練習しているのでバッチリです!」


 サクにゃんが堂々と胸を張ってそう答える。

 うーん、ボクの精神論よりも、ちゃんとプロの振付師の方の教えを守ってほしいんだけどな。


「ふぇ~ん、サクちゃ~ん、明日私もネコミミ着けていい~?」


 メイメイがサクにゃんのネコミミをの動きに合わせて触っていた。


「え、早月さんがネコミミを⁉ うん、ありですねっ!」


 うーん、ありかな!

 でも5人のうち2人がネコミミって、もう全員つけてそういうコンセプトのグループにしたほうがしっくりくるまであるね。

 だけどそれ、人の真似だし、アピールの方向性が間違ってるからね!


「ところでそのネコミミってどうやって動いてるの?」


 ボクもつい、サクにゃんの真っ白なネコミミをさわさわしちゃう。

 動きがなめらかすぎて実はずっと気になっていた。


「これは脳波を測定して感情に合わせて動くおもちゃをちょっと改造したものなんです!」


 へ、へぇ。改造……。サクにゃんは、実は手先が器用な人なのかな?


「どんなふうに改造を?」


「えっと、詳しくはちょっと……とある研究の内容なので契約の問題で明かせないのですが、サクラが招待されている大学の研究チームで、医療用のアルゴリズムを開発していまして、その技術を一部転用して――」


「え、大学の研究チーム⁉……サクにゃんってもしかして天才の人なの⁉」


 サクにゃん、さらっととんでもないことを言ってない? 最近百合に目覚めつつあるネコミミ少女じゃないの⁉


「サクちゃんすごいです~。白衣にネコミミは最強ですよ~」

 

 メイメイ……そうだね。白衣にネコミミはかなり強いね。でもそういうことじゃなくて……。


「あれ? お2人は違うんですか?」


「違う、とは?」


 明らかに会話がかみ合っていない。何だろう、この違和感。


「え~っと、同じチームに所属しているのは都さんと渚さんだけですけど、栞さんと詩さんは隣のチームですから、まあ、たまに顔を合わせますね。コーチと早月さんはどちらのチームの所属なのかなと?」


「どういうことなの……」


 どういうことなの……。


「私は高校生なので大学にはいってないです~。ハルちゃんとレイちゃんは同じクラスですよ~」


「えっ、そうなの⁉ 全然知らなかった!」


 そういえば、みんなが普段何してるとか全然聞いたことなかったなあ。

 普通の高校生がメイメイとレイとハルルの3人で、他の人たちは大学の研究者だったのか。


「あ、でもレイさんは、よく教授のところに出入りしてますから、知らない仲ではないですね」


「精神科医のちびっこ師匠さんかな?」


「ちびっこ! そう、その人です。ふふふっ、白衣ブカブカのちびっこ先生」


 笑いのツボに入ったのか、サクにゃんがお腹を抱えて笑っている。

 ボクは実際にまだ師匠さんを見たことないんだけどね。


「師匠の話をしてましたか?」


「うわ、レイ! いつの間に⁉」


 音もなくレイが近くにいるのはわりといつものことなんだけど……ボクはいつの間に頭をなでなでされているんだろう。


「師匠の話をする時は、まず最初に、『師匠が日本を支えているといっても過言ではありませんね。よっ、師匠! 日本一!』と言ってからにしないと……その、消されますよ?」


 こわっ。師匠さんこわっ。

 師匠! 日本一!


「かえでくん、いけません。師匠は脳波研究の第一人者です。頭にアルミホイルを巻かないと読み取られますよ」


 それUFOのやつじゃなかったっけ?

 そもそも脳波を読み取っているのはレイですよね?


「いいえ、わたしが読み取っているのは脳波ではないですよ。心、ですかね?」


「心は脳波より読み取っちゃダメ! プライバシー侵害!」


「それですよ、コーチ。脳波研究の一部を転用してこのネコミミの中身は作られているんです!」


 ああ、そこにつながる話だったのね。

 しかしまあ、みんな脳の研究をするエリートたちだったのか。


 あれ? もしかして「あいつ高校すら不登校のクセに、大学の研究所で働いている自分たちに精神論で説教してきた」とか思われてるのかも⁉

 ああ、しにたい。


「かえでくん、≪六花≫のみんなはそんなこと考える人たちじゃないですよぅ。みんなを見てください。あの対バンの後から意識と行動が変わっているのがはっきりわかるでしょう? わたしたちの伝えたかったことはしっかり伝わったんだと思いますよ」


「うん……ありがとう。ギリしなずにすんだわ……けど、勝手に心は読まないでね?」


「よしよし、大丈夫ですよぅ」と、レイに抱きしめられて頭を撫でられる。

 すっごいうれしいけれど、傷つけられて慰められるマッチポンプ感が否めない。

 あと、サクにゃん、恥ずかしい写真撮るのやめて……。


「さつきさんは、とても明るくなりましたね。学園にもさぼらずに登校するようになりました。全部かえでくんのおかげでしょうか」


「なぬ? その話詳しく!」


 うわ、メイメイの学校生活めっちゃ気になる!


「が、学園のことは良いじゃないですか~。アイドル活動には無関係です~」


 明らかに動揺しているメイメイ。

 これはなにかありますね?


「無関係なんですか?『≪雪月の姫≫の万年雪を溶かしたのは誰か?』という話題で、学園内の話題は持ち切りですが」


 え、なにそれ、めっちゃ気になる!


「雪月の姫?」


「おそろしく美人なのに、笑わないししゃべらないから、高嶺の花みたいな扱いで、下級生たちのあこがれの存在なんです」


「うそうそ! そうやってみんな私のこといじめてくるんです~。緊張してうまくしゃべれないだけなのに……」


 メイメイが悲しそうな目で遠くを見つめている。

 ああ、なるほど。状況を少し察しました。


「メイメイは気配り屋さんだけど緊張しいだからね……。それが最近はしゃべれるようになってきたんだ?」


「姫が恋をしたんじゃないかともっぱらの噂です。もうそれはそれは、大きなニュースとして取り扱われてますね。新聞部が号外出してましたから」


 レイが自分の端末を見せてくる。

 おお、週刊誌風の見出しが『雪月の姫が恋をした~お相手の王子様大解剖⁉~』だ。

 この写真のメイメイの表情いいわー。これは明らかに恋してますね。めっちゃ読みたい。この雑誌どこで買えますか⁉


「かえでくん、『大解剖⁉』となっているので、実際には相手もわかっていないし、探しているから情報求むという内容なんですよ。残念ですね」


「なんだーだまされたわー。お金返して?」


「そんな雑誌売ってないですし、カエくんも買わないでください~。みんなおもしろおかしく話してキライキライ!」


 メイメイがへそを曲げてしまった。いたずらしすぎたか……。


「ちょっとその記事見せてもらってもいいですか?……なるほど、『確度の高い情報には情報料をお支払いします』と……連絡先はっと――」


 サクにゃんがまじめにメモを取り始めた。


「サクにゃん? まさかと思うけど、仲間を売ったりなんてことは……」


「やだ~コーチ。半分冗談ですよ~。ちょっとこの写真を送ってお小遣い稼ぎしようなんて思ってないですってば~」


 オホホホ、じゃありませんよ?

 ネコミミがぐるんぐるん回ってるし……ウソついてますね?


「かえでくん、そういうわけでさつきさんは学校でもアイドル的な存在なんです。いつまでも王子様してると命が危ないので、ここらへんで、ね?」


「なにが、ね? なのさ。メイメイはかわいいから、すでに世間でも見つかっちゃってるよねー。うんうん、早くデビューして世界のメイメイになってもらわないとね」


「本気で言ってますね……鈍感なかえでくん」


 レイがわざとらしくため息をついた。

 え、なに? 何か間違ってた?


「コーチ~。サクラもかわいい? サクラも世界のサクラになれますか?」


「もちろんサクにゃんもかわいいよー。センターはサクにゃんだから、このグループの顔はサクにゃんだよ!」


「わ、私もセンターになりたいですっ!」


 メイメイが大きな声でそう宣言する。


「いいね! センターは固定化するものでもないし、奪い合うものでもあるからね!」


 センターを目指す。

 以前のメイメイでは考えられない発言だ。「自分を見てほしい」その気持ちがしっかりと心に刻まれているのがわかって本当にうれしい。


「サクラだって負けませんからね!」


 もしかしたら≪六花≫は≪初夏≫を超えるんじゃないか。そんな予感さえしてくる。


 まずは明日のオーディションだ。

 倍率は高いかもしれないけれど、絶対に合格するって信じてる。


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