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第38話 定期公演#3の後~メイメイに関する情報

『ネットワーク機器の不調のため、定期公演#3の配信は終了いたします』


 苦しいけれど配信上でそう発表して、定期公演#3は中途半端な形で終了した。ボクたちが『シュークリームが膨らまないの』を歌うことは叶わなかった。



 ボンバー仮面V3というテロリストと思しき人物の乱入。代々森体育館のネットワークを掌握され、好き放題やられてしまった。

 ボンバー仮面V3が去って、ようやく配信の権限を取り戻したボクたちだったが、もうそのまま定期公演を続けるような状況ではなくなってしまっていた……。


 あとで配信のコメント欄をチェックしたところ、最初は演出を疑っていたコメントも多かったが、ボクが派手に負傷した(ドローンカメラ主観の映像が配信されていて、ナイフで切られた瞬間に血飛沫があがるというショッキングな映像になっていた)ことが決定的なきっかけとなり、リアルな事件として認識されてしまったようだった。


 実際のところ、傷自体はホントに大したことはなくて、止血処置してからは痛みもほとんどなかったし、晩に日課の≪REJU_s≫を服用したことで傷自体もあっという間に消えてしまったくらいのものだったのだけど。

 それよりも警察による事情聴取、事務所側(主にウタのチーム)の確認を終えたのが夜中の12時を過ぎていたことのほうがよっぽど大変だったよ……。



「そんなことよりも、だ」


 ボンバー仮面V3の最後に残した言葉が良くなかった。

 ホントに良くなかった……。あれだけは何としてでも止めたかったのに……。


『18年の時を経て、私は戻ってきた。迎えに来たよ、ユエユエ』



 この言葉はあっという間にインターネット上に広まってしまった。


 ユエユエ――≪BiAG≫秋月美月について。

 往年のアイドルファンが思い出を語ったに過ぎなかった。そこから段々と派生していく過去の事件の話。それも始めは断片的な情報に過ぎなかったが、少しずつ情報が集められ、有志によって繋ぎ合わされ、やがて半日もしない間にほぼ完ぺきな形でまとめられていった。


 ≪BiAG≫秋月美月。通称ユエユエ。

 18年前のJIC――ジャパンアイドルセレブレーションで起きた≪BiAG≫のステージへの暴漢乱入・マネージャー刺傷事件について。


 そして、ユエユエとメイメイの関係性への言及。


 これまでボクたちが隠してきたメイメイに関する情報は、たった1日でほぼすべて衆目晒されてしまったのだった。



「メイメイ……どうしよう……ね」


 お母さんのこと、知られたくなかったよね……。

 

「私は……どうなんでしょう。知られたくなかったのかな~」


 首をかしげるメイメイ。

 えっ? メイメイがお母さんとの関係性を知られたくないから、こんなにみんなで隠していたんじゃないの?


「違いますよ~。麻里ちゃんが事務所の関係者以外には知られちゃダメって言ってて~」


「なんだって⁉ 麻里さんが口止めを?」


 メイメイの意思じゃなかったんだ? 何か意味があるのかな……。うーん、やっぱり麻里さんが意味のないことをするとは思えないよね。


 麻里さんは秋月美月さんとは親友の仲だったってことだけど……。もしかしてメイメイの出自に関係があることなのかもしれないな。たとえば、ずっと話に出てこないお父さんの話……。きっと触れてはいけないことなのだろうと思って聞けていないけれど……。気になる。


 メイメイの表情を盗み見てみる。

 端末を斜め上に掲げてすまし顔。一生懸命自撮りの角度を調整している様子だ。

 ううーん、事件のことは気にならないのかな……。

  

「ね~、カエく~ん」


「なに⁉」


 様子を伺っているのがバレた⁉

 まさか、ボクの心を読まれて⁉


「右の角度と左の角度、どっちがかわいいですか~?」


 なんだ自撮りの話か……。

 そんなの撮った写真を見るまでもない。


「メイメイはどの角度で撮ってもかわいいんだから、そんな一般的な女子の悩みは必要ないんだよ?」


「え~、そんなことないよ~。やっぱり右斜め45度かな~。それとも60度がいいかな~?」


 メイメイはそうつぶやきつつ、せわしなく端末を動かしながらカシャカシャと写真を撮っていく。


「そんな心配よりさー、その写真をSNSにアップしたら、ファンの人たちが天使過ぎるメイメイを見て、心臓麻痺を起こさないかのほうが心配だよ」


「これはSNS用じゃないですよ~」


「えっ、じゃあ何のために撮ってるの?」


 自撮り写真をSNSにアップする目的以外で撮影することなんてある?


「麻里ちゃんが『一番かわいい写真を送って』って言ってきたですよ~」


 むむ? また麻里さんか。なんだろう、引っかかるな。


「そういう注文はよくあることなの?」


「あんまりないですね~。でもここ数日毎日連絡がくるの。昨日は『正面の写真を真顔で』ってテーマだったし~」


 ここ数日に限って急にか……。

 やはり麻里さんはメイメイの様子を心配しているんだろうな。コミュニケーションの取り方が独特すぎるけど。でもやっぱり何かありそうな気がする……。


 よし、ボクからも麻里さんに連絡してみるか……。

 メイメイの過去、そして秋月美月さんのことをもっと深く知らないといけないだろう。



第六章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #3編 ~完~



第七章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #4編 へ続く


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ここまでお読みいただきありがとうございました。


定期公演が途中中断、そして強制終了し、第六章が終わりました。

残念ながら、サクにゃんとウーミーの『#海桜』コンビの出番は訪れませんでした。


第七章のタイトルに#4と入っていますが、定期公演#4は本当に開催できるのか。開催できるとしてもいつになるのでしょうか。そもそも#3の残りのプログラムは?


気になることが多い状態ですが、この先もボンバー仮面V3との駆け引きが続きます。

どうぞよろしくお願いいたします。


引き続きお付き合いいただけると幸いです。

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