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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第六章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #3編

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第36話 定期公演#3 その2~メイメイ天使かわいい

「メイメイ、行ける?」


 一応、壁のほうを向きつつ、声を張り上げてメイメイに呼びかける。

 誰かさんとは違って、着替え中に「覗くな!」みたいなことは言わないけれど、やっぱりなんとなく後ろを向いてしまうね……。


「はい、これで完成です」


「レイちゃんありがとう~。カエくんいけるよ~」


 レイが着替えの手伝いをして、無事にメイメイの準備が終わったみたいだ。一呼吸おいてから後ろを振り返る。


「うん、メイメイは今日も天使みたいにきれいだね」


「ありがとう~」


 今はボクだけを見つめて、ボクの天使が微笑んでくれている。

 よーし、がんばろう!


「じゃあ、行こうか」


 さあ、いよいよボクたちのソロユニット曲『シュークリームが膨らまないの』の時間だ! ほかのみんながMCでつないでくれている間にステージに上がろう!


 ボクとメイメイは手を繋ぎ、暗がりの中を小走りにステージ階段下へと向かう。



「それでロシアンシュークリームルーレットをした時の話なんだけど~」


「はい! その話、コーチから聞きました!」


「サッちゃんがいたずらで、カスタードクリームの代わりにカラシを詰めたのよ。こんなにいっぱいね」


「それはひどいですわ! 食べ物で遊ぶのはよくありませんわ」


「詰め方が雑でね~。ちょっと上からはみ出しっちゃってたのよ。だからそこに粉砂糖を振って隠して、カエデちゃんに『どうぞ』って」


 あのシュークリーム事件のことか……。あれはひどいいたずらだったよ……。


「こらー! あのカラシシュークリームのせいで、ボクは2、3日、のどの調子がおかしくなったんだからね! あれは許してないぞ!」


「みんなお待たせ~!」


 ナチュラルに会話に入りながらステージへと上がる。


「あ、カエデちゃんだ! サツキもおかえり~」


「カエちゃんかわいいシュークリームだ~。食べちゃいた~い♡」


「コーチも早月さんも衣装とてもかわいいです! うらやましいです!」


「わたくしもシュークリームになってみたいですわ~」


 カラシシュークリームの話題は終了か……まあでも仕方ない! メイメイの衣装を見ちゃったら、誰しもかわいいしか感想が出てこないくらいかわいいよね!

 ほら、もっともっとみんなで「メイメイ天使かわいい」って褒め称えていいんだよ!


「さてさてー。じゃあ今日はこのかわいいかわいい衣装みたいにふわふわのシュークリームが焼けるかなーってことで、ソロユニット曲行っちゃおうかな! メイメイは準備良い?」


「もちろんですよ~。準備できまくりです~。はりきって恋のシュークリーム膨らませちゃいますよ~」


「恋のシュークリーム! 楽しみね。サツキ、カエデちゃん、あとはお願いね~」


 ハルルたちが手を振りながら、ゆっくりとステージ脇へと移動していく。


「みんなありがとう!」


「ありがとう~。あ~、カエくんカエくん」


「ん、何? どうかした?」


 ここはタイトルコールしてポジションにつく流れのはず。

 まさかトラブル⁉


「口にカスタードクリームがついてますよ~。ほら、左側~」


「えっ⁉」


 思わず口元を触って確認してしまう。

 あれ? 何もついてない……?


「引っかかった~! ホントは右側ですよ~」


 そう言ってにやりと笑うメイメイ。これはいたずらをしている時の顔だ!


「いや、右にもついてないし! ていうか、控室でシュークリーム食べてないから、そんなのつくわけないし!」


「ちぇ~。普通のこと言うカエくんつまんな~い」


「普通って……。メイメイさー、これはゲリラ豪雨配信じゃなくて定期公演だからね? 十数万人のファンの方たちが見てくれてるんだよ。ボクだってちゃんとする時はするさー」


「う~、またゲリラ豪雨の配信やりたいです~。きっとファンの人が『見たい!』って言ってくれたら復活できるんじゃないかな~。ね~、みんな~?」


 そう言って、メイメイは観客たちを煽るように耳を澄ませる仕草をする。


 あ、まさか……この流れに持っていくためにわざとシュークリームの振りを⁉ 世論を味方につける作戦か!


【ゲリラ豪雨見たい!】

【ゲリラ豪雨再開して~!】


 AIの観客たちは、メイメイの煽りに乗っかって大声を上げている。

 会場は青いペンライト一色だ。


 この調子なら配信のほうのコメント欄も相当な反響がありそう……。

 もしかしてこれは、上層部も動く……か?


「まあね~。でもほら、いろいろとさ……やっぱり安全第一とかさ……ボクだってやりたいけど、みんながメイメイのことを考えてくれてて、大人の事情もあるんだよ……」


「私は! 子供だから! 大人の事情なんて知らないっ! ファンのみんなと楽しく、ファンのみんなの望みを届けたい!」


「わかる……けどさ……」


 そのためにウタががんばってくれているんだよ。

 爆弾テロの犯人が捕まらない限りは、みんなの安全が確保できない限りは、ね……。


「私は……私たちはテロには屈しない! 絶対に屈したりはしない!」


 メイメイの心の叫び。

 ああ、忘れているわけじゃない。


「私たちはテロには屈しない! 絶対に!」


 ああ、わかってるよ……。ボクがこんな上っ面の事情を並べ立てたって意味がないんだ。メイメイだってそんなことは百も承知なんだから。


「そうだね。ボクたちは負けちゃいけない。ファンのみんなと乗り越えて……ゲリラ豪雨配信の再開も、オフラインのライブの再開も、全部全部取り戻さなきゃ!」


 その時だった。

 ステージに設置された巨大スクリーンが突如ブラックアウトして何も映らなくなる。


 トラブルか? これからボクたちの歌が始まるのに。


 会場のざわつきをよそに、すぐにスクリーンに光が点る。

 なんだ、瞬断かあ。設備点検はちゃんと頼みますよー。歌の途中にはやめてよね?


 映像が再開したスクリーン。

 そこに映っていたのは、マッドブラックのフルフェイスヘルメット。


 ボンバー仮面V3だった。

 

 ボクらの敵――。


『こんにちは、≪The Beginning of Summer≫のみなさん、そして夏目早月さん』


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