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第21話 トリュフキノコって最近は犬が探すらしいよ

「うんうん。まだ事務所から許可が出ないの~。ごめんね~。再開する時はすぐに告知出すから! 絶対見にきてね! え~、わかった~。カエくんにスク水ね。オッケ~」


 まったくオッケーじゃないから。

 勝手にファンの子と変な約束するのやめてね?


「はい、お疲れさま。5分休憩ね」


 栄養ドリンクにストローを差してからメイメイに手渡す。


「ありがと~。やっぱりファンの人たちと話すの楽しい~」


 メイメイは、小瓶の栄養ドリンクを一気飲みしてから、イスの背に寄り掛かるようにして大きく伸びをする。

 おっとと。そんなにのけぞってイスが倒れたら大変じゃないのさ。


「だから心配する必要ないって言ったでしょ。わざわざCDを予約してまでトーク会に参加してくれる人たちなんだからさ。みーんなメイメイのファンなんだよ。メイメイが緊張する必要なんてないんだって」


「カエくんの言う通りでした~。それにみんなゲリラ雷雨を楽しみにしてくれてる~。まだリアルタイムで聞いたことないって人もいてね~。最近私のファンになってくれたんだって!」


「それは良かったね。新しいファンの人たちのためにも配信を早く再開できるといいんだけど……」


 そのためには、きっと爆弾テロの犯人が捕まって、安全が確保されないとダメってことなんだろうね……。

 一応、花さんには「『メイメイのゲリラ雷雨』は、オンライン配信だから許可してくれー」って何度も頼んではいるけれど、「上の判断待ち」って返されたまま、ずっと進展なしなんだよね……。


 麻里さんに「自分たちで犯人を捕まえます」なんて大見得切っちゃったけど、早期解決のためにも、やっぱりお願いしたほうが良かったのかな……。いや、でも闇に葬るのはやっぱりな……。


「カエくんどうしましたか~?」


 メイメイが心配そうにボクの顔を覗き込んでくる。


「ううん、なんでもない。どうしたらゲリラ雷雨を再開できるかなーって考えてただけ」


「そうだ~! ゲリラ雷雨はもともとゲリラ配信のことだから~、無断でゲリラ配信しちゃいますか~!」


「何その『名案思いついちゃった!』みたいな顔。もちろんダメだよ? そんなことしたら、めっちゃ怒られるのボクだからね?」


「ぅ~。でもカエくんが怒られるんですか~。う~そっか~」


 それならギリセーフかな? みたいな顔するのもやめてね? メイメイもそこそこ怒られるのは間違いないですからね。

 

「おとなしく動画を撮影してアップしていこうね。双方向のやり取りがある配信じゃなければいいんだからさ」


 そう。こっちから一方的にコンテンツ提供するのはOKとされている。いまだ許可が下りないのは、オフラインの握手会。それと双方向の配信だ。

 メンバー5人が集まる公式チャンネルでの配信だけは特別に許可されている。まあ、それには理由があって、場所も本社ビル内のスタジオだし、わりと厳重に監視体制を敷いているからなんだけどね。要注意なコメントをしている人がいた場合、即マークできるし、ウタがその場でごにょごにょもしているらしい……。

 ゲリラ雷雨みたいに、メンバーが個別に配信すると、そこまで監視体制を敷けないから許可が下りないってわけなのですよ。ちなみにこのオンライン個別トーク会は、事前に大々的な告知がなされている通り、メンバーの安全を確保するためにすべて録画されています。


「あ、そうだ~。カエくんが豚さんのかっこうをして、トリュフキノコを探す動画が撮りたいです~」


「何急に? そんなの絶対嫌だよ。それにトリュフキノコって今は豚じゃなくて犬が探してるって、何かのニュースで見た気がする」


「え~、豚さんがいいです~」


「いいですって言われてもさ……。豚ってトリュフキノコを見つけても自分で食べちゃうらしいよ」


「おいしいのかな~。でも食べられちゃうと困っちゃいますね……」


「だから犬を訓練して探させてるんだってさ。犬はキノコ食べないから」


「トリュフキノコを見つけたご褒美はお肉なのかな~」


「うーん、まあ、たぶんそうなんじゃないかな?」


 せっかくなら犬だってカリカリのドックフードよりは、生っぽいお肉が食べたいんじゃないかなー。犬に詳しくないからわからないけど。


「じゃあ、カエくんも虎猫の次は柴犬ですね~」


「じゃあの意味がわからないですけど。それにチィタマは映画の役だからさ。いや、虎猫柄のビキニを着せられただけで、あれもなんていうか、ホントの猫の役ではない気がするんだけど……」


 油性のマジックなんか取り出して何……? あ、こら! やめなさいって! 太い眉毛を書こうとするんじゃない!


「ほら、もう次の枠が始まるから! バカやってないで準備する!」


「は~い。次の人はなんていうお名前でしたか~?」


 メイメイが予約枠リストを確認しだす。


「えっと、ここから再開だね。『ボンバー仮面V3』さん? んー、見覚えがない名前かな。きっとご新規さんかな。元気にアイサツしてね」


「ぅ~。初めましての人ですか~。緊張する~」


 まったくもう。

 リピートしてもらえるようにがんばって!


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